2020年5月18日(月)
前項補足。
ペスト防疫のため港外で待機させられた期間が40日、日数の根拠は何か。聖書の読者ならピンとくるところである。
出エジプトの民に課せられた荒野の40年、これを踏まえたイエスの試練の40日、40は聖なる数であり神に属する数である。それゆえ、刑罰としての鞭打ちは「40に一つ足りない数」を限度とした(第二コリント 11:24)。40の鞭は人の分際を越えており、たとえ罪人にも課してはならないとされたのである。
ペストの潜伏期間は、肺ペストで2、3日、腺ペストで6~10日とある(コトバンク)。14世紀の人々がどの程度正確にこれを知っていたか。それが未知である場合に、神聖数40に拠り所を求めるのは、当時として自然なことだった。今日から見れば大きすぎる数字であるが、大が小を兼ねる結果として、40日の港外待機はそれなりの効果をもたらしたことだろう。
一方で、待機させられた船内の困難と混乱は、クルーズ船のそれを見ても想像に余りあり、それが14日ならぬ40日に及べばそれこそ「人には耐えがたい」苦痛であったに違いない。ペストではなく、船内隔離の負担によって落命した者も多かったはずである。
そういえばクルーズ船のこと。船客の窮状が詳しく書き立てられた後、実は乗組員が非常な困難に曝されていることが伝えられたきり、続報が絶えた。劣悪な環境に取り残された彼らがその後どうなったか、メディアにはそれをこそしっかり伝えてほしい。
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