プリミティヴクール

シーカヤック海洋冒険家で、アイランドストリーム代表である、平田 毅(ひらた つよし)のブログ。海、自然、旅の話満載。

ナーラの滝

2008-04-08 13:07:34 | 八重山カヤックトリップ

(八重山カヤックトリップの記事の続きです)

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 西表島の突き当たりの集落、白浜から出艇すれば島南西部の無人の自然フィールドをたっぷりとパドリングすることができます。仲良川、クイラ川といった、河口部にマングローブ樹林をたずさえた原始の香りのする川を遡っていくこともできますし、その支流に入っていって亜熱帯植物群の濃密なにおいをハートに染み込ませることもまた、非常に趣深いです。 海のほうに出れば外離(そとぱなり)島、内離(うちぱなり)島といった無人島の周辺から、さらに南西部の網取、崎山といった美しいサンゴ礁と無人のビーチが素晴らしいエリアまで、本格ツーリングすることができます。

 西表南西部は、ワールドワイドに通用する魅力を持った、屈指のカヤックフィールドといえるでしょう。分かる人は、だいたい地形を見ただけで分かります。

 ただ、ぼくが滞在した2月頭くらいというのは最も北風の強い季節で、実際、毎日毎日強風がかなり吹いていたので、「サバ崎」という岬から南西のエリアは漕ぐことができませんでした。夏場、台風さえさけることができれば、カヤックにテントを乗せて1週間くらいキャンプするのが最高でしょうね。

 ここではまず現地のツアーガイドに案内をお願いしました。一箇所だけではなく、南西部のエリア全般について色んなことをお聞きしたかったからです。また当アイランドストリームのお客様で「西表島に漕ぎに行きたいです」というリクエストがあった際、即座に紹介できる現地ガイドさんがいたらありがたいですので、そういうご挨拶も兼ねてツアー参加させていただきました。

 案内していただいたのは、西表島と石垣島両方にベースを持つツアー会社「ちゅらねしあ」の飯田さんというガイドでした。飯田さんは以前には広島でシーカヤックツアーガイドをされており、また国産シーカヤックメーカー「ウォーターフィールド」でカヤック製作に携わったご経験もある人で、西表島在住歴は長くないものの、本物のシーカヤッカーとしてすごく頼りになる人でした。今回、海況がよければ網取・崎山といった海岸線、悪ければ仲良川にしましょうということでしたが、案の定強い北風のため、結局仲良川のツアーになりました。オフシーズンということもあり、この日はぼくだけでした。

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↑ 白浜の港エリアを出てしばらく行くと仲良川の広い広い河口付近に出てきました。ここは干潮になると干潟になり、トビハゼなどがピンピン跳ね回っているゾーンでもあります。これだけ広いと風景全体の遠近感がつかみ難く、漕いでも漕いでもなかなか進んでいる気がしないものなのですが、そこはフォールディングと違ってこのカヤック・・・、ウォーターフィールド社の「マリオン」と言いまして、長さ5.4mもあり、色んな人が冒険旅行に使った実績を持つFRP製本格シーカヤックでして、あっちゅう間に進んでいきました。ちなみにマリオンは当アイランドストリームでも一押し艇として販売しています。よろしく。

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↑ 川幅の広いゾーンはたいていマングローブ樹林となっています。オヒルギ、メヒルギ、ヤエヤマヒルギがよく見かけるマングローブ植物ですが、こういう細い手がたくさん水底に伸びてるやつはヤエヤマヒルギです。  

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↑ 高速艇を使用し、同業者が2人だけで漕いでいるとさすがに、ペチャクチャしゃべりながらでもいつの間にかズンズンズンズン進んじゃっています。時折手を止め、肌身に植物の香りをしみこませるかのように、目を閉じ、深呼吸したりしました。その空気感と言うかフィーリングは、熊野灘沿岸の初夏の感じに非常に良く似てるというか、デジャヴみたいなものを覚えました。

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↑ 水際にせり出したアダンの木。ワイルドでよい。 

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↑ 日傘みたいになった植物が、ヒカゲヘゴだ。とにかく植物の密度が濃ゆいですね。

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↑ 河口から約6キロほど漕ぎあがると、このような清流域に行き着く。だんだん岩がごろごろし始め、これ以上いけなくなったところで上陸します。上陸し、ちょっとした更地の空間でお昼をいただき、その後トレッキングで幻の滝と呼ばれる「ナーラの滝」を目指します。

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↑ ここのところずーっと雨が多く、ちょっとした小川も水量が軒並み増していました。ここは本当に水の豊かな島です。黒潮の通り道、海流の中の島。湿度が高くムワーッとした空気。植生密度の濃ゆさ・・・、ますます初夏の熊野灘沿岸域と同じにおいがするなと思った。

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↑ この飛び散った鳥の羽は、イリオモテヤマネコにやられたものかもしれない、とガイドの飯田氏はおっしゃっていました。イリオモテヤマネコはもう約100頭ほどしか生息しておらず、絶滅の危機に瀕しています。

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↑ こういうシダ類の獰猛な生え方がいい。

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↑雨でどろどろになった山道を歩き、30分ほどすると滝が現れる。ここの滝の現れだし方というか、見え出し方がいいなと思いました。

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↑ とにかく雨でパドリングシューズはつるつるすべりましたが、ガイドの飯田氏は便所用ゾウリみたいなゴムゾウリでスタスタスタスタっと歩いていきます。その軽い身のこなしはまるで猿のようでした。飯田さんはツアーのない日には、イノシシ猟も手伝っているそうで、20キロものイノシシを背中に担いで山を歩きまわるそうです。その時も、そのゴムゾウリ使用だそうです。グリップ感が最高だそうで、トレッキングシューズも地下足袋も沢用シューズも全く履かないらしいです。・・・参りました。

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↑ 幻の滝という異名をとる、ナーラの滝。それほど落差があるわけではないけれど、気品があっていい滝だと思います。夏は滝つぼで泳ぐのが最高でしょうね。

 仲良川のツアー、素晴らしいです。往復約12キロと、初心者の方にはちょっと距離を漕ぐことになりますが、トライしてみる価値はあります。マングローブ、川、滝の神秘感は、西表島でも屈指といえるでしょう。


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西表島

2008-04-08 02:01:37 | 八重山カヤックトリップ

(八重山カヤックトリップの続きの記事です)

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 石垣島の次は西表島に渡りました。西表島には北部の上原港と東部の大原港の2つの定期便発着所がありますが、北よりの強風が吹くこの時期、上原ルートは欠航が多く、ぼくが渡った日も案の定、大原ルートしか便がありませんでした。

 大原港のヤマネコレンタカーでパジェロミニを借り、そのまま島外周道路を端から端までひた走りました、石垣島と西表島は海を隔ててたった30数キロしか離れていないのですが、雰囲気がぜんぜん違いました。石垣島が陽とするならば西表島が陰。山々の緑もより重く、暗く、秘めたる深み、凄み、威厳のようなものを感じました。

 西表島は、亜熱帯のジャングルです。日本というより、東南アジアです。

 西表島の4分の3は外周道路が通っていますが、残りの4分の1は道がなく、完全にウィルダネスのエリアです。で、車を終点の「白浜」集落まで走らせ、集落の一番端にある「海人の家」という町営の宿に投宿し、そのまま1週間ほどいました。白浜を基点として、あちこちに漕ぎに周っていました。上の写真は白浜の集落のものです。

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↑ 左の真ん中のちょっと上らへんが白浜。ここから無人のエリアを漕ぐのが醍醐味だ。 

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↑ これは石垣島の離島桟橋。ここを基点として、西表島や波照間島や竹富島など、八重山の各島々に船便が出ている。ここはいわば八重山のターミナル駅だ。

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↑ 西表島の最南端、南見田(はいみだ)の浜。車で行ける南の終点でもある。滞在中、ここから鹿川湾(かのかわわん)まで漕いで往復した。途中、サメの大群に出くわし、取り囲まれた。・・・と思ったらサメではなく、なんとマンタの大群だった。

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↑ 西表の山々の緑には、独特の重みがある。

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↑ 向こうに見えるのは小浜(こはま)島。その間の海峡が「ヨナラ水道」。別名「マンタウェイ」とも呼ばれている。潮が速いことでも有名。


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ナイトライフ

2008-04-07 19:30:20 | 八重山カヤックトリップ

(八重山カヤックトリップの記事の続きです)

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 フォールディングカヤックでのカヤックトリップのスタイルは主に、飛行機、バス、フェリー、レンタカー、ヒッチハイクなどで国内外のあらゆる場所を訪れ、異文化と接触し、その土地特有の自然に心震わせ、さまざまな人々と出会い、そして別れゆくというスタイルになります。よりネイチャー色の濃い「バックパッカー旅」とでも言いましょうか。

 カヤックを漕ぐ日もあれば全く漕がずただ観光したり、一日中図書館で本を読んで過ごすこともあります。一日漕ぐ距離はだいたい10キロとか15キロくらいまでで、そこがエクスペディション(カヤック遠征)というスタイルとの大きな違いです。エクスペディションでは一日50キロも60キロも漕ぎますからね。あまり漕がずとも、その土地特有の自然エッセンスをキャッチできればそれでいいんです。泊まる所も、民宿とかゲストハウスなどを利用し、テント泊はむしろ少ないです。費用は切り詰めますが、そうめちゃめちゃケチるということもしません。めちゃめちゃケチらなきゃなんないんだったら、帰ります。

 それから、エクスペディションではどちらかというと人との交流が必然的に少なくなりますが、フォールディングでのカヤットトリップでは人との交流が多くなります。特に、昼間は一人きりの方がいいくらいなのですが、逆に夜は他人と交流しないと、なんというか気持ち悪くなってきます。

 で、この八重山トリップでは毎日あちこち飲みに行くか、あるいは同じ宿の宿泊者と飲みながら色んな会話をしまくっていました。どこか飲み屋に飲みにいったらたいてい地元出身の人と交流できてよかったですね。八重山の人は地元の人もよそから移住してきた人もみなお酒好き、話好きで、実に色んな話をフレンドリーにしていただきました。先の記事「石垣新空港について」の内容も、色んな話を聞き総合的に分析した上で書いた文章でして、別にあてずっぽうの個人的感情から書いているわけではありません。

 ということですが、上の写真は、石垣島滞在中よく行ったバーのひとつです。「ココソン」という、古いジャマイカ音楽が延々かかっているバーで、泡盛やラムを飲みながらまったりするのは最高でした。

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↑ ↓ 石垣島滞在中、連泊していた宿。一泊3000円

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石垣島北東部

2008-04-07 17:50:08 | 八重山カヤックトリップ

(八重山カヤックトリップの続き記事です)

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 川平湾に続いてカヤックを漕いだのは島の北東部の半島でした。石垣島の中でも最も人の少ないエリアで、特に半島の東海岸は道が通じていないので、全くの無人の海岸線を漕ぐことになります。つまり野趣、野性味を重んじるカヤッカー的には、石垣島におけるハイライト・エリアとなるわけです。上の写真は、玉取崎の展望台から眺めたその海岸線の風景です。沖のほうに見える白い筋がリーフのラインで、例によって北風が強い雨交じりのひどいコンディションでしたが、リーフの内側は波立たず、十分漕げる状況でした。

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↑ 出艇場所。伊原間(いばるま)という地名の土地に、「船越」という場所があり、道端には駐車できるスペースがあります。で、道向かいの民宿・船越のそばからこの浜に入っていく小道が通じています。こういうバックパック型のカヤックトリップにおいて「出艇場所」というのはかなり重要な要素になってくるわけですが、だいたいはパッパっと「カン」で決めます。ここは石垣島到着初日にレンタカーでグルーっと島を一周した際に地図と照らしあわせて、「多分ここが一番いいだろうな」と目をつけておいた場所。

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↑それにしても、荒天続きでした。本当はこのエリア、もうカーンと晴れると、ありえないほど鮮やかなブルーの南国風景が展開される場所のはずなのですが、重い乱層雲が立ち込め、こういう陰鬱な感じになっていました。ですが、雨降りの海上は、ぼく的には嫌いではないんですよね。

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↑ 道が通じていない海岸線なので人はぜんぜんいないですが、放牧された牛はたくさんいます。これがいわゆる石垣牛です。あくまで個人的な意見ですが、柔らかい肉のためにビールなんかを飲ませてもらい、マッサージまでしてもらう神戸牛や松阪牛の霜降り肉なんてどこか気色悪い感じがしちゃいますが、こんな場所でおおらかに勝手に育つ牛の肉は、なんといいますか、正しい牛肉という感じがします。石垣牛の焼肉も食べましたが、非常においしかったです。石垣牛の闘牛も見ましたが、非常に感動しました。

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↑ カヤックでかなりギリギリまで近寄りました。こちらを意識して群れが動き出し、「モーモー」とうなり声を上げ始めました。ぼくも「モーモー」とうなり返すと、なんだこいつはという表情で背中を向け、「シッシ」という感じでシッポを振り、歩き去っていきました。

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↑ 山に乱層雲が垂れ込め、全くの無人の海岸線というシチュエーションもあいまって、あたりは一層の神秘的な様相を呈し始めました。こういうところを一人で漕ぐ、というのは非常にリッチな体験だと思います。ぼくは色んな人と漕ぐのも好きだけど、このシチュエーションでグループで漕いでいたとするとただただ、「天気悪いねえ~」で終わってしまいます。逆に一人で漕ぐといわゆる濃密な、「自然との対話」ってやつになるのです。

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↑ いつの間にか乱層雲が山全体を覆った。ゆっくり形を変化させてゆく霧のような雲の流れに、グレートな自然の鼓動を感じたのだった。太平洋上に浮かぶ小島としての、黒潮という巨大海流の中に浮かぶ小島としての息吹を感じた。上昇気流が雲を呼び、雨を降らせ、森を潤し、川に流れ、再び海に帰ってゆくという、水の惑星の循環を感じた。そしてそんなことを感じることができるのは、カヤックという敏感な宇宙船に乗っているからなのだった。

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↑ この雲のなびき方もいいね。非常にいい。

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↑ これも非常にいい。女性的なタッチの丸みある山の連なりと、立ち込める水蒸気、なんというか品格が感じられた。

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↑ 海岸線はずーーと砂浜海岸が続いていて、キャンプするにも素晴らしいだろうと思った。

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↑ この荒涼、寂寥とした風景、ハートにヒビが入りそうなくらいキューンときてしまいました。

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↑ 風に揺れるアダンの群落。アダンは実がパイナップルみたいな(実は食べられない)、南国風情たっぷりの植物。風に敏感に感応したような葉っぱのタッチもいい。

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↑ 石垣島北東部の海岸は、野趣、野性味に溢れていて、 よかった。 


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川平湾

2008-04-07 14:11:57 | 八重山カヤックトリップ

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 石垣島に着いて最初にカヤックを漕いだのは川平湾(かびらわん)でした。古くは帆船が風待ちをした避難港で、風波をさえぎる大きな入り江状の内湾になっています。世界初の黒真珠養殖に成功した場所としても知られ、また景観的にも素晴らしく、その美しさは全国8ヶ所しかない国指定名勝地に指定されています。ただ内湾のためサンゴ礁は大方駄目になっちゃってて、また観光ズレしていて野趣に欠けるという人も少なくないです。けれど、変な工場があったり、いかつい造船所のさびた鉄骨などが風景を威圧しているといった、よくある人工物がハバを利かせた内湾というわけではないので、一日ゆったり漕ぎエメラルドグリーンを堪能する分には悪くないと思います。観光ズレしているのもほん一部分だけで、ちょっとカヤックを漕ぎ出すと濃密な緑の山々に囲まれ、すごくいい雰囲気になります。

 しかしこの日、北風と雨が結構強烈で、ゆったりどころではなく、湾をグルーっと一周するのはかなりしんどかったです。ま、いいウォーミングアップにはなりました。天候が悪いと海の色も空の色と同じになっちゃいますが、逆に、雲がかかった山々の連なる風景には神秘性があり、よかったです。陸でただ見てる分には感じないけれど、カヤックに乗って海風に身をさらし、雨粒をダイレクトに感じることによってのみ見えてくるもの。そいつを通してオレの眼球レンズに映る、雨にけぶる八重山の山々は非常に趣深かったです。

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↑晴れたらこんな感じの鮮やかな美しさが広がる。

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↑ 川平湾の地形。一見してのんびり漕ぐのに適したフィールドだと分かる。赤い目印が出艇場所。黒真珠博物館のところの広い駐車場でカヤックを組み立て、そのすぐ目の前から出艇できる。

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↑ 天気悪かったです。北風がびゅうびゅう吹いていて、追い風になるケースではものすごく楽でしたが、逆に向かい風になるケースでは漕いでも漕いでもカタツムリのようにしか進まず、ヒイヒイ言わされました。

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↑小島が海を完全にさえぎった形の内湾なので、ちょっとやそっとの風では波が立たない。もし風に逆らって漕げず流されちゃったとしてもやがてどこかの岸に流れ着くのであまり心配ない。なので、八重山地方にフォールディングを持ってカヤックトリップしようと思われる初心者の人はまずこの川平湾で肩慣らしするのもいいかもしれない。

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↑湾の奥のほうの西側の沿岸にはマングローブ地帯が展開されている。その背後の雨にけぶった山々もいい。

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↑マングローブと言うのは塩湿地帯に生える植物の総称のことで、「ヒルギ」という植物がその代表格です。ヒルギにもたくさんの種類がありますが、八重山地方で多く見られるのはオヒルギ、メヒルギ、ヤエヤマヒルギの三種になります。で、この写真のように細い根が千手観音の手のように水底に刺さっているやつが「ヤエヤマヒルギ」です。

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↑ 川平湾の小島と陸地の間の水路を抜けると湾の外に出ます。

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↑ しかしこの水路がちょうど風の通り道になっていて、漕ぎ上っていくのが大変でした。手を止めてこのように写真を取るちょっとの間に100mほど後退させられてしまいました。

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↑ 湾を出てもしばらくはリーフ内の穏やかなゾーンが続きます。写真の左上のほうで白波が立っているところがちょうどリーフの境目で、それより沖は大荒れとなっています。

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↑湾の防波堤のような格好になった小島の湾側はこんな感じの浜になっています。天気がよければ昼寝するのにさぞよろしいことでしょう。

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↑今回の旅の片腕、アルフェック・アリュート430。

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↑ 島は亜熱帯植物の宝庫で、たくさん色々と生い茂っていた。写真は、雨に濡れてつやつや光るクワズイモ。潤いがたっぷり感じられていい。

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島の真ん中では牛が放牧されている。石垣牛だ。

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↑ゴミはどこにでも漂着している。


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石垣新空港について

2008-04-06 00:00:31 | 八重山カヤックトリップ

(八重山カヤックトリップの話の続きです)

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 ↑ サンゴ石をシンプルに並べただけの、白保集落の素朴な港。

 石垣島に着いてまず白保地区に泊まりました。ここでしばらくカヤック&シュノーケル三昧の日々を送ろうかと思っていたけれど、毎日毎日予想以上に寒く、北よりの風も強く、ほぼ雨か曇りで遊べませんでした。

 石垣島でのカヤッキングはまず川平湾をグルーっと回ってウォーミングアップし、その後、島北東部に位置する半島の東海岸エリアを漕ぎました。いずれの日も雨風が強かったけれど、新しい環境で新鮮味がありました。

 そのことはまた別の記事で書くとしまして、この記事ではここ白保エリアについて触れてみたいと思います。ぼくの泊まったのは「環礁アトル」という名の、10数年前に東京からこの白保の地が気に入って移りすんだ女将さんが一人で切り盛りする民宿でしたが、滞在中、彼女と色んな話をしました。「この白保にマブイー(魂)を落としちゃったのよ」と言ってらっしゃいましたが、それゆえ、石垣新空港の話をするときには、自分の身を削られるように、本当に辛そうでした。

 石垣新空港とはここ白保地区に建設を計画されている空港です。現在ある空港は第二次世界大戦中に軍用空港として作られたものを元にしていて、滑走路が1500mと短く、大阪、東京からの直行便が離着陸できないと言われています。また扱える貨物数も少ないらしいです。これでは観光面、産業面ともに石垣島の発展に障害をきたすということで、1979年に新空港設立の計画が立ち上がりました。当初の予定は、白保の沖合いを埋め立て、2500mの滑走路を作り、中型以上のジェット機を離着陸できるようにしようというものでした。

 しかし、この白保周辺の南北10キロのほどの海域はサンゴ礁の宝庫で、有名な世界最大のアオサンゴの一大群落があったり、巨大な塊状のハマサンゴの群落が展開されています。それも何キロも沖合いにあるのではなく、目の前の砂浜からすぐ目と鼻の先の距離に素晴らしいサンゴ礁が散りばめられた、世界的にも極めて希少性の高い場所です。またサンゴだけでなく、魚、貝、エビ、カニ、海草、水鳥、ウミガメ類などかけがえのない生き物たちの宝庫として、自然環境的に見て、あるいは観光資源的、水産資源的な見地から、埋め立てなどとんでもない話なのでした。

 当然、集落住民や自然保護団体、研究者たちが立ち上がり、反対運動が繰り広げられました。やがてマスコミや世論なども巻き込み、海上案は撤回されたけれど、紆余曲折を経て、白保より少し北の「カラ岳」という小高い小山の付近に作る陸上案が立ち上げられ、2005年12月に国土交通省の認可が下りたのでした。開港は2012年の予定です。

 その、カラ岳に建設したならば白保のサンゴ礁には影響がない、現代の最新土木工学を駆使したならばサンゴに害を及ぼす赤土の流出もないだろうと、推進側は御用学者などを使って説明しているけれど、実際は陸上案であっても同じ事で、結局白保のサンゴ礁は死ぬだろうと言われています。

 ひどい話です。美しい自然と素朴な人情が色濃く残っているのが石垣島の魅力なのに、それを殺しちゃって開発を推し進めても、逆に人を引き寄せる魅力が消え去り、誰も来なくなっちゃうのが目に見えています。計画発案は1979年で、当時は世の中全体に環境倫理も観光の多様性の価値観も全く根付いていず、ただただ旧式の経済成長観一色の時代でした。そこから世界も日本も大きく変わっています。特にこれからは国家ブランディング、地域ブランディングの時代で、どの地方もローカルの魅力を探すことに必死になっているというのに、何もせずともそこに存在してくれている、ワールドワイドな価値のある白保ブランドをぶっ壊して、一体どうしようというのでしょうか。ましてや石垣島は「観光」を機軸に経済が回っている島です。

 争点となっている、空港の離着陸に関する問題も、結局理屈をこねるための具にすぎないのです。実際は、新空港の必要性に切実さはまるでありません。そして何より、工事に携わる土建屋と政治家以外に経済的メリットがないわけです。諫早湾や長良川の例を見ても明らかなように、覆水盆に帰らずということわざ通り、複雑なメカニズムをたたえる自然を壊すのは一瞬ですが、人間の手では永遠に元通りのものを作ることはできません。しかし、(もう実はそういう時代になりつつありますが)いつか白保のサンゴ礁が絶対必要であるという時代が来るかもしれません。そうなったとき後悔してもどうすることもできません。そして、後世の子孫に、「あの時代の連中は気が狂っていた」と馬鹿にされることでしょう。

 ではなぜ、どう見てもアホな筋書きを推し進めようとするのでしょう? 答えは簡単。土木工事ほどオイシイ利権を生むものはないからです。たとえば地域ブランドを現出するには創意工夫、知恵、不断の努力などが必要とされてきますが、土木公共事業は税金を引っ張ってくるだけで、知性も教養もまるで必要とされません。

 旧態依然とした「政・官・財の鉄のトライアングル」。仕事を発注する国土交通省があり、土建屋を推薦する政治家がいて、工事を請け負う土建屋がいる。事業に絡んだ企業はその見返りとして官僚に天下り先を用意し、政治家に対しては政治献金を渡し、選挙の際には票を差し出す。そんな典型的な構造に根ざしたストーリーなのです。国民、市民、島民のことなど全く眼中になく、また石垣島の発展のためなのでもなく、すべては目先の利権のためなのです。見え透いています。

 自然の神様の、タタリとか起こんないんだろうか?

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↑緑色に見えるのは沖縄地方でアーサと呼ばれる海草(ヒトエグサ)。味噌汁やお吸い物に入れるとおいしい。で、一見なんの変哲もない単調な海岸にしか見えないが、すぐ海の中に入ると、有数のサンゴ礁が展開されているのである。

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干潮になると一面アーサ畑になる。

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白保を黙って見守るウタキ。


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鳥のように魚のように

2008-04-05 15:52:36 | 八重山カヤックトリップ

Kurosio

 ぼくは1月末から2月20日頃まで南琉球・八重山方面にフォールディングカヤックを持って、フィールドリサーチを兼ねたカヤックトリップに出かけていましたが、ここからしばらくはその報告の記事を続けたいと思います。

 ・・・・と書いてあれから、しばらく経ってしまいました。筆不精ごめんなさい。ちょっと色々バタバタしていた事柄もひとまず落ち着いたので、今度こそきちんと書いていきます。ダーッと立て続けにアップしていきますのでついてきてくださいね。よろしく~。

 えー、今回はまず石垣島の民宿までフォールディング(折りたたみ)カヤック「アリュート430」を宅急便で送り、自分の体は大阪南港発のフェリー(有村産業)で約50時間かけて石垣港まで運びました。船旅を選んだのはちょうど航路が黒潮の流れを逆走する形で、真上を突っ走ることになるからです。まあ、黒潮本流のど真ん中に身を置くということはカヤックではなかなかできないことですが、想像しただけでゾクゾクしてきます。あ、ちなみにシーカヤックであちこちの海を漕ぐという行為を何年も意識的にやっていると、別に自慢じゃないですがフィーリングやイマジネーションが割と発達してくるんですけど、たとえば「NHK 大自然紀行」みたいなテレビ番組なんかで海の映像が流れるとしますよね。あんなのを見ただけで自分がまさにその場にいて風を受け、波に揺られ、潮の香りを味わいながらシーカヤックを漕いでいるような感覚にどっぷり浸ることができたりしちゃいます。で、映像ごときでもそういうわけですから、たとえカヤックではなくデッカイフェリーだったとしても、その場に身を置くという生体験で、かなり黒潮本流のエッセンスを実感できるんじゃないかなあ、と思ったわけです。

 アマゾン川の約500倍の流量を誇り、最大幅100kmに達する世界最大級の暖流・・・、などなどカタログスペック的に色々書いたりすることもできますけれど、それよりも感覚的なインプレッションとしては、「世界最大」とか「地球規模」とかなんとかいうより、宇宙的なスケールの質感、エネルギー感を感じましたね。

 地球の圧倒的な丸みに抱かれる、四方八方見渡す限りの群青色。その圧倒感に圧倒されました。また大型フェリーの安全なデッキの上で浴びる潮風がなんともよかったです。寒かったけどね。

 行きはそのようにしてフェリーで行きました。四国、九州の沿岸を進んでいるときは数年前に日本一周した際に通った沿岸も出てきて、非常に懐かしい感慨が込み上げて来ました。。

 そして帰りは飛行機で帰ったんですけど、これもまた味わい深かった。青く美しい琉球の海に浮かぶ宝石のような島々を超え、雪をたたえた山頂をいただく屋久島を過ぎ、九州、四国、と今度は黒潮の流域を空から鳥のように眺めたわけです。ちょうど渡り鳥が北上するのと同じルートです。

 鳥のように魚のように、なかなかよい旅でした。やはりカヤックトリップは素晴らしいと思いました。次生まれ変わったらクジラ、その次生まれ変わったら渡り鳥、という流れで黒潮を行ったり来たりするのもいいかもな、とふと、思いました。

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↑これが黒潮の色だ。大型フェリーのデッキという安全地帯から眺める安心感がいい。

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↑宇宙的なスケールを突き進む中で、有村産業の「A」と言う文字が人間くさいというのか、なんかよかった。

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↑シーカヤックで日本一周をしたとき、鹿児島最南端の佐多岬から大隈半島東岸を通って志布志湾にたどり着くまでの約70キロくらい、ずっとこのような断崖絶壁が続き避難するエスケープルートがない中ででかいうねりが打ち寄せ続け怖かったおぼえがあるが、その記憶が蘇った。

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↑これこれ、これが黒潮のブルーだ。コンテナの色も似ているが、やはり海の色の深みにはかなわない。


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八重山カヤックトリップ

2008-03-21 22:42:17 | 八重山カヤックトリップ

 こんにちは。またまたお久しぶりです。前回の記事の鷹島クリーンキャンペーンの件ですが、色々話を進めているうちに、地元漁協に「余計なことするな」とえらい剣幕でガミガミ言われました。なぜゴミ掃除をしたら駄目なのか、法的根拠もないし意味がわからないので予定通り催行するつもりです。田舎の海辺というのは一見のんびりして温厚そうに見えますが、案外せせこましくせちがらく理不尽で排他的で不条理な部分が多いことを改めて痛感しますが、やはり海の偉大さと比べてなんとしょうもなきことよ、という考えに行き着きます。鷹島の明恵上人も泣いていることでしょう。

 さて、しょうもないことはここではひとまず置いておきましょう。

 ぼくは1月末から2月20日頃まで南琉球・八重山方面にフォールディングカヤックを持って、フィールドリサーチを兼ねたカヤックトリップに出かけていましたが、ここからしばらくはその報告の記事を続けたいと思います。

 帰ってきてパッと書くというのもいいんだけれど、体験をしばらく寝かせるというのも試してみたいスタイルのひとつです。体験の新鮮さも大事だけれど、新鮮さが失われてもなお残るもの、それもまた大事ではなかろうか、ということです。

 まず写真は、もっとも素晴らしいと感じた西表島のフィールドのものです。上は仲良川・ナーラの滝。滞在中、ほとんど毎日雨が降っていたので、水量がかなり多く、迫力がありました。そして下は、仲間川のマングローブ地帯のもの。うっそうとした緑の中に、うねるように鈍く光る川筋が、なんとも生き物じみていて、凄みを感じました。

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健康

2008-01-23 16:04:19 | 八重山カヤックトリップ

 個人的なことで恐縮ですが、去年の10月頭くらいから約2ヶ月間、体調が最悪でした。あまりに調子が悪いのでありとあらゆる検査を受けたのですが異常なし。医者が言うには夏の過労がたたって夏風邪をひき、免疫力が低下したところに連鎖球菌などの雑菌がワルサをし、長くこじれたのだろうとのことでした(見た目は誰にも全くわからなかっただろうけれど)。

 12月の半ばから完全に回復しましたが、その後逆に、不調以前よりはるかに体調がよくなりました。どうなってるんだろう。ある人が言うには「毒素がすべて抜けきったのだろう」、とのことでした。で、ぼくもそういうことにしておこう、と思いました。

 体調の悪い間、いろいろと悪い想像などして思い悩みましたけれど、やはり健康が一番。体が動けばなんでもできる。また、なんでもできるうちになんでもしておかなきゃあとで後悔する、と悟らせていただきましたので、今日からしばらく石垣島、西表島等八重山諸島にカヤックトリップ出張に行かせていただきます。その間も電話およびメールでの通信可能ですので、ツアーお問い合わせなど御用の際はお気軽にご連絡ください。出張中もこのブログは更新していきますのでよろしくです。


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