プリミティヴクール

シーカヤック海洋冒険家で、アイランドストリーム代表である、平田 毅(ひらた つよし)のブログ。海、自然、旅の話満載。

エメラルドグリーンの洞窟

2017-11-29 23:01:18 | 湯浅湾ツアー

 移動性高気圧が日本列島の中心に鎮座した昨日、ここ数週間の中でも最も穏やかなコンディションに恵まれ、やびつ海岸から湯浅湾最北端の宮崎の鼻を越え、女の浦海岸までの往復ツアーを楽しめました。

 大昔から「船をエサとする龍が棲んでいる」と言い伝えられてきた「宮崎の鼻」越えは、よほど海況に恵まれないと行けない岬の先端ですが、それが難なくクリアすることができました。

 湯浅湾北岸のこの海岸線一帯は、これからの時期、南を通る繊細な太陽光線が断崖絶壁やその合間に点在する砂浜を優しく照らし、ちょうど昨日のような穏やかな日には、夢の世界のような、桃源郷のような調べを醸し出します。
 賭け値なく美しい情景に身を置くリアリティ、これぞ晩秋から春先を漕ぐシーカヤッカーの特権です。

 岬の近くに行けば行くほど洞窟が多くなりますが、その中のひとつが上から二番目の写真、「ヒョウラマ」という名の隠れ家スポットです。数年前までこの洞窟の壁際になぜかエレキギターがおもむろに捨てられていて、そのまま「エレキギターの洞窟」と呼んでいたのですが、それもおととし辺りに完全に朽ち果てて今は見る影もなくなりました。

 名前を変えてベタに「エメラルドグリーンの洞窟」とでも呼ぼうか。
 入り口の海水が太陽光線に反射して光り輝く様がなんとも美しいのです。

 「やびつ海岸」へのシーカヤックツアーは当店の晩秋以降のシーカヤックツアーのメインコースですが、栖原海岸からはちょっと遠いのでショートカットとして、カヤックをトレーラーに積み、ある程度近くの浜まで移動したところから出艇しますので、ベテランじゃなくても楽しめます。


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夏よりも、いとおしい海

2017-11-27 23:30:17 | 湯浅湾ツアー

 この時期の湯浅湾ツアーも通常通り開催しています。
 特に風がなく、穏やかなコンディションに恵まれると、海景も海水もともに深い透明感を帯び、心地よい海上ツーリングが楽しめます。太陽光線、風、魚、海鳥、山々の木々・・・、海を取り巻く自然そのものに繊細な情緒があり、夏よりも「いとおしく」感じられるのが晩秋から初冬の海なのです。ハーフデイコースは、午前、午後とも、近場をゆったり進むので、この時期の海は初めてという方にもお勧めです。

 ワンデイコースの場合、海況次第で、湯浅湾北岸の「やびつ海岸」に向かいます。
 道のない無人エリアが続く海岸で、断崖絶壁とその合間に点在する美しい砂浜、洞窟、巨石のロックガーデン、などなど、次々に変わっていく景観が味わえます。スケールは違えどどころどころ知床半島を連想させるような北方系の趣き、近郊の秘境と呼ぶにふさわしい。南の空を通る太陽光線が当たる角度もこの時期ならではの絶妙さで、ひなたぼっこするような感覚で美しい海岸線を進みゆく、とても贅沢な体験です。
 http://www.island-stream.com


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お金と時間

2017-11-26 22:50:12 | マインドフルネス

 先日、友人と話していたのですが、日本人ももっと休む文化にならないと。

 自分の時間、家族や友人と過ごす時間、旅したり人と会ったりして見聞を広める時間、じっくり本を読んだり音楽を聴いたりする時間、新たな物事を勉強する時間、そしてアウトドアアクティヴィティに興じる時間。いくらお金が儲かっても身体は一つだし、人間いずれ死ぬわけで時間は限られている。だからよりよい人生には、お金以上に時間が大切。
 闇雲にがむしゃらに働いていつまでも儲けがでる時代じゃないし、時には戦略的にまとまった時間仕事から離れて、柔軟な頭の使い方をしないと仕事もあまりいい仕事ができない気がする。今はよくても後年きっと行き詰まる。
 しかし社会は真逆で、さらにあくせく、ぎすぎすと余裕のない方向に向かっているように映る。
 だからますます社会は劣化してゆく。

 だけど、それとはまた別に、お金よりも時間を大切にする指向の人も、明らかに増えている。
 多分、あまり何も考えず流されるまま生きていると、知らぬ間にもっともっとあくせく、ぎすぎすを余儀なくされる状況になっていくだろう。それは間違いない。一方、頭を使うとやりようによっては、いくらでも時間とサムマネーは作り出せる時代でもある。起業、独立も一つの方法だ。これからは「金持ち」になるために起業するというより、「時間持ち」になりたいから起業するという人が増えるだろう。また起業、独立じゃなくても、きっといい方法はあるはずだ。 

 その友達は面白いことを言っていた。12人で回っている会社はあえてもう一人増やして13人にし、持ち周りで一年に一ヶ月ずつ休めるようにしたらいいのにと。そんな会社は世の中にないから、みんな入りたがるし辞めたがらなくなる。仕事のモチベーションも上がる。いい人材をじっくり選択し育てることができて、ますます会社は発展するだろうに、と。しかし実際は一人増やしたらその分、さらに儲けを出さなきゃ損だということで、もっともっと休まず働いて売上を伸ばせ、ということになりそうだ。また1ケ月も休んで何やったらいいのか分からない、ということになるのだろう。
 アウトドア派の人間ならば話は別だが。
 アウトドア派ならば休みが多ければ多いほどバンバンザイだ。
 時間がないと、アウトドア遊びなんて、成立しないわけだから。

 実際問題難しいけれどもし日本も欧米先進国のように夏一ヶ月、冬一ヶ月ほどのバカンスがあるならば、アウトドア文化はもっと中身のあるものになっていくだろう。しかし「夏休み5日が必死」というのが大半の日本では、アウトドア指向が広まっているように見えつつ「実際にアウトドアアクティヴィティに興じる」というよりも、「おしゃれなアウトドアグッズ、道具、ウェアを買う」というのがメインの文化になっている。雑誌なんかを見ても、いかにモノを売るか、買わせるかというテーマになってる。
 だけどそれはそれで、確かにアウトドア指向であることに間違いない。
 そういうところから実際の遊びの方に向かい、休日、余暇の大切さに目覚める層もでてくるのだろう。

 自然の中での、自分の時間、家族や友人と過ごす時間、旅したり人と会ったりして見聞を広める時間、じっくり本を読んだり音楽を聴いたりする時間、新たな物事を勉強する時間、そしてアクティヴィティに興じる時間。
 なんて豊かなのだろうか。

 本当は一ヶ月くらいのバカンスをとることは、基本的人権なんじゃないだろうか。
 少なくともそれが成熟社会なのでは・・・。
 結局そうじゃないということは、日本社会もまだまだ成熟していないということだ。
 だけどいつかそうなって欲しいというのがぼくの世の中に対する夢だ。
 だけど当分は無理っぽいから、まずは自分自身がそれを実践してみたい。

 さて、アイランドストリームでは現在、「ワンデイ」系のツアーをメインにしているけれど、これは万人が楽しめるよう敷居を下げたひとつの玄関口みたいなもので、玄関からさらに奥に入って行くともっともっと面白い部屋が展開されます。玄関口でもすごく楽しめるように作っているけれど、一回だけじゃなく継続し、さらに時折3日、5日、7日、10日くらいのトリップをすると、本質的な面白さにまで肉薄できる。そしてもっと長い期間トリップすればもっと深みを増すわけだけれど、まあそれ以上、例えば1ヶ月以上の旅となるとさすがに色んなものを犠牲にしなければならなくなる(逆に人生を変えたいとか、生活の舵を大きく切り替えたいときには、起爆剤になる)
 経験上、だいたい7日~10日くらいのアウトドア旅というのは、ひとつの本質的な何かを掴めるスパンだ。だから本当はそれくらいか、少なくとも5日~7日くらいのツアーも開催したいという考えが常にあります。

 2日~3日目くらいで慣れて、5日~7日目くらいというのはちょうど脂が乗ってきた頃。そしてまだ飽きや膿むことがない時期。そのスパンのアウトドア旅って、ひとつのアート作品のようなものだと言えるのです

 というわけで、当店ではオーダーメイドのプライベートツアーとして2つ、
 「ディープ紀伊半島トリップ」というコースと、
 「ドリームツアー」というコースを現在用意しているけれど、
 特にこの2つはこれから大事に育てていきたいと思っています。
 よろしくお願いします。


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シーカヤック進水式

2017-11-26 21:23:46 | イベント

 先日、と言っても少し前になりますが、お客さまの進水式。
 ウォーターフィールドの不知火2とユーヤック。
 すごくいい色ですね。

 よきカヤックライフを。
 ご夫婦で楽しまれるカヤッカーですが、2人揃って一緒にツーリングするというのは、一回一回の思い出を共有でき、素晴らしい趣味だと思います。そしてここ湯浅湾は、そんな楽しみ方をするのにこれ以上ないふさわしいフィールドです。

 ウォーターフィールド社は、長年ツーリング/旅系カヤックにこだわり続け、世界最高レベルのシーカヤックメーカーとして、艇の中でもイチオシです。個人的にも愛用しています。
 もちろん当店でも取り扱い、販売しています。
 また、置く場所のない方のために、艇庫サービスもご用意しています。


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奄美リサーチ

2017-11-26 17:26:45 | 旅行

 

 先日一週間、リサーチとして奄美大島に。

 加計呂麻島まで下って海辺の安いゲストハウスに投宿し、フォールディングカヤックでライトツーリングしたり、カヤックフィッシングで釣った魚を料理しては宿の人たちとお酒を飲んだり、ドライブして島を散策したり、知人ファミリーにカヤック体験会を催したり、と、離島特有のゆるやなか時間の流れの中、充実した時間を過ごしました。

 関西地方とはだいたい1ヶ月半~2ヶ月くらいの季節的誤差があり、11月も半ばというのにまだセミは鳴いているし、日中はTシャツ一枚で過ごせるのも良かった。冬でもそれほど気温が冷え込まないので、植物の生育もよく、和歌山では冬枯れる熱帯~亜熱帯系の植物がのびのびと生えているところもいい。というかうらやましい。バナナとかソテツとかクワズイモとか何気なくそこらに自生していて、海辺の景観として何もせずともサマになっている。和歌山もこんなんだったらうちの店の敷地内ももっと雰囲気出るのになあ、とうらやましくなりました。

 緑溢れるちょっとした庭にテーブルと椅子を置いただけで、すっごく居心地のいいカフェ空間に変わる。そこでコーヒーを飲みながら潮風を肌に感じ、音楽を聴き、まったりしていると、それだけで何時間でも過ごせそう。

 関空からもバニラエアで片道4000円~8000円くらいで行けるので、日頃ストレスたまっている人はただのんびりしにいくだけでも訪れる価値があると思います。そこにフォールディングカヤックがあれば旅の友としてなおよし(宅急便で2000~3000円で送れます)。

 毎年、奄美・加計呂麻シーカヤックマラソンが開催され、ここではシーカヤックの認知度自体がかなり高いのも、居心地のよさのひとつ。カヤックトリップの価値がまだまだ理解されないことが多い世の中、どこに行っても「何しに来た?」「カヤック漕ぎに来ました」「は? なんやそれ」みたいな会話になり、変わり者扱いされることが当たり前になってますが、それが「あ、いいですね~。素晴らしい」とリアクションされることは、思いのほか気分よいものなのです。

 今回は時間がなかったけど、行ってみて「次回これをぜひやりたい」と思ったのは、加計呂麻島とその周辺にある請島、与路島、須子茂離などの諸島を7日~10日くらいの日程でぐるっと一巡りするというカヤックトリップですね(一番下の地図写真の、左下部分の島々です)。黒潮を全身でダイレクトに感じ、有人無人の島々に渡り、土地の人たちとの交流とそこにすむ生き物たちとの交信。もちろんカヤックにテント、調理用品、食料、釣り道具などを積み込んでキャンプしながら。
 それはきっと自分自身のカヤックトリップ史上に残る素晴らしいセッションになることと直感します。

 なんせ、黒潮のエッセンスがそのまま花開いたような島々だから。

 またその旅を、アイランドストリームのオーダーメイド系ツアー「ドリームツアー」のラインナップに加えてみたいと考えます。


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ナヴィゲーション講習を優先的に開催

2017-11-26 14:04:37 | スクール

 【これから本気で上達したい人のために!!
               平日、土日問わず一人からOK。】
 
 当店アイランドストリームでは、
 業務上、夏季はツアー中心の運営になりますが、
 逆に初冬から春先は、少人数に絞ったスクールを最優先します。
  
 特に読図とともに気象、海況を読んで状況判断し進んでゆく、
 「ナヴィゲーション」スキルを身につける講習は、
 座学中心となりますため、これからの時期にこそ最適です。
 まず「中止」ということがないため、安定開催できるので、
 ご予定も立て易くなるでしょう。

 シーカヤックでは「漕ぐ」だけではなく、海を読み状況判断し、
 次の瞬間の身の振り方を決断する、
 「ナヴィゲーション」能力が非常に重要なのですが、
 それにはまず座学で体系的に学ぶ必要があります。

 海というフィールドの場合、「ナヴィゲーション」ができないと、
 自艇でのツーリングは不可能だと断言できますが、
 それをきちんと教えることのできる数少ないスクールが当店です。
 
 座学と言っても「お勉強」というより、世界が広がり知的好奇心が
 刺激される内容で、海に対する興味関心がますます深まるでしょう。

 また自艇を持たず常にツアー参加として楽しまれる方も、
 ナヴィゲーションの基礎知識が身についていると、
 より海、自然、フィールドとの対話力が深まり、
 一回一回がさらに有意義なものになってきます。
 シーカヤックの本当の面白さ、崇高さ、真髄は、
 「ナヴィゲーションにあり」と言い切ることができるのです。
 
 【ナヴィゲーション講習の案内はこちら】
 海上での状況判断を学ぶ。自分で漕ぐ場合、最も大事なスキル。
 http://islandstream.la.coocan.jp/navischool.html
 
 【パドリングスキル講習の案内はこちら】
 基本的なパドリング操作を身に付けます。
 http://islandstream.la.coocan.jp/skillup.htm
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■■ ツーリング講習も同時開催
 上記講習の実践編として、参加者をリーダーと見立て、
 カヤックツーリングする中で上達を目指す講習が、「ツーリング講習」です。
 「よりナヴィゲーションを意識したツーリング」、もしくは
 「よりパドリングスキルを意識したツーリング」になります。
 自分の判断力で海上を進む実践的スキルを身につけることが目的です。
 開催フィールドのリクエストも可能。
 講習可能フィールドは、普段当店が開催している下記のフィールドとなります。
 ご参照下さい。※ツーリング講習料金は一人15000円となります。
 
 
 
 
 ☆南紀 みなべ海岸
 http://islandstream.la.coocan.jp/minabe.html
 
 
 
 ほかどこでもリクエスト可。もちろん湯浅湾全域でも可。

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一瞬先のベストを探るという行為

2017-11-24 23:42:59 | マインドフルネス

Robert Glasper Trio - LIVE at The Village Vanguard - Double Black

 例えばシーカヤックで数日以上の旅に出ている最中、感覚がヴィヴィッドになって色んなものからインスピレーションを受けますが、どちらかというとアウトドア系の本とかメディアよりも、音楽の演奏に触発されることが多い。
 言語化できない心のひだに触れるものだからだろう。
 海上で感じている感覚も9割方、言語化できないものだ。

 シーカヤッカー目線、シーカヤッキング感覚で特に最近インスピレーションを受けるのは、現代のジャズ。と言っても俗に言う「モダン・ジャズ」ということではなく、まさに「今のジャズ」。
 今、ジャズは新しく、未来を感じさせる、面白いものがたくさん出ている。

 ロックもヒップホップも全く目新しいものがなくなった昨今だけど、そんな中、今の先鋭的なジャズマン達は過去のジャズはもちろん、ロックやヒップホップの歴史的流れも踏まえ、ワールドミュージックへの造詣も持ち、テクノ系の音も咀嚼しながら、即興で音を紡いでゆく。
 ジャズの本質を残しながら、音楽表現として全く新しい次元にシフトさせようという試み。
 上からなぞったような予定調和ではなく、次の瞬間の未知に賭けるチャレンジ精神と遊び心。賢くて、柔軟で、引き出しが多く、多様性主義であること、音楽への愛情に貫かれていること、革新的実験と同時にエンタテイメントであること。それらは指使いのタッチ一つで伝わってくる。

 特にこのロバート・グラスパーは衝撃的だと思う。
 今一番ビビーンとくる。
 音楽好きのシーカヤッカーならば、このよさ、よく分かると思う。

 シーカヤッキングも、旅に出たら、瞬間瞬間が即興で、誰も一切お膳立てしてくれる者助けてくれる者はいず、一瞬先は未知の世界だ。
 あらゆる可能性の中から一瞬先のベストの一音を探るという行為と、無限に広がる大海の中のベストな一筋を自らナヴィゲートして進んでゆく行為。そこに相通じる部分があるのだけれど、これはその最高峰のひとつ。

 ロバート・グラスパーを聴いていると、世界はまだまだ豊かで、未知に溢れているということを教えてくれる。


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山間の水辺の素顔

2017-11-24 22:07:40 | 

 この時期恒例の名張・青蓮寺湖のカヤックツアーも先日、無事開催・終了しました。

 前日夜半から当日朝にかけて雨が降り続けましたが、ツアー開始時間までにはすっかりやんでくれました。
 西高東低の気圧配置になり、北西風が強まりけっこう肌寒くなりましたが、それもまたこの時期の「自然の鼓動」の味わいだと言えます。陽が差すと暖かさに包まれ、日が陰ると再び、谷間を走る冷たい風に身体を引き締められる。一日その繰り返しの中で、そしてピーンと張りつめたような静けさの中で、木々の葉のパッチワークのような色合い、静寂を割って水面からいきなり飛び立つ水鳥、風が湖面を渡っていくときのさざ波、香落渓の断崖絶壁の背面を彩る青空と、草原を走る動物を想わせるようなちぎれ雲の速い流れ、山の木々の合間からふと出現する滝の白い筋と谷間に響くしぶき音、・・・。山上湖というひとつの閉鎖空間の中で、その湖面に身を置いた者にしか決して知ることのない、瞬間瞬間に立ち現れては消えてゆく水辺の素顔を、臨場感たっぷりに垣間見ることができました。
 そこでは、ちょっとした「寒さ」もまた、五感をより鮮やかに際立てる「彩り」のようなもの。

 地味ではあるけれど、だからこそ良い、カヤックならではの、豊かな時間の流れを噛みしめるような一日でした。


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紀伊水道横断 中紀~徳島・伊島

2017-11-11 11:05:08 | 紀伊水道カヤックトリップ

 先日、久々に中紀から紀伊水道を渡って徳島の伊島へ。
 人口200人足らずの、ダイナミックな海岸美と時間が止ったひなびた漁村があるだけの、潮流の中の島。
 
 港は結構大きく、島と島に挟まれた地形から、大昔は避難港・風待ち港として交通の拠点になっていたと思われる。実際、大昔は日常的に手漕ぎの舟で紀伊水道を渡り、紀州と徳島を往来していたのだろう。その中継地としてもよいロケーションの島。

 紀伊水道横断は直線距離にして最低25キロ、航行距離として30~35キロを漕ぎ続けなければ渡れず、途中荒れてきたら逃げ場がないし状況によっては5~6時間以上休みなしで漕がなければならないシチュエーションになることもあり、シーカヤッキングとしては最も難易度の高いコースとなります。

 普段しっかりトレーニングを積み、スキルアップに努めている人のみ渡ることができる海峡ですが、コンディションを見極め、ナヴィゲーションできるならばこういう場所も漕げるというのが、シーカヤックの実力だと言ってもいいでしょう。


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毎日新聞での連載記事 今回は白崎海岸

2017-11-05 17:29:05 | アート・文化

 

 「シーカヤックで再発見 紀州の海」というテーマで毎月一回、毎日新聞で連載させてもらっている記事ですが、今回で5回目となり、11月2日に掲載していただきました。湯浅湾最南端の「白崎海岸」についてのものです。新聞記事ってやっぱり、淡々とした文章が求められて苦手だけど、まあこんなもんでしょう。
 どうぞ写真をクリック&ズームしてご覧下さい。

 なお、ズームできない方のために元原稿を下に記しておきますので、もしよろしければこちらもご拝読ください。

「特異さ漂う岬 太古の面影、時空越えて」

 海の世界は、岬のあちら側とこちら側とで、大きく変わる。

 風や波、潮はもちろん、生態系、海水の色彩、航行の安全性や難易度、景色や空気感までもが変わる。シーカヤックの荷室にテント、寝袋、食料を積み込み数日以上の海旅に出る際にも、岬が大きなターニングポイントとなる。ひとつの海域を過ぎ去るちょっとした感傷と安堵感、そして新しい世界に突入する期待と不安とが心の中で交錯する、旅情がひときわ掻き立てられる特別な場所なのだ。

 中でも湯浅湾南端の「白崎海岸」は、岬の持つ特異感が際立っている。湾内から外海へ、いざ漕ぎ出でようと気持ちを引き締め直し、紀伊水道の向こうに霞んで見える対岸の四国や淡路島の方角に目を向ける。凪ならば徳島まで6時間、淡路島まで5時間で行ける距離だ。船首を動かし、コンパスが南西を指し示すと、複雑に入り組んだ南徳島の海岸線が脳裏に描き出される。北西方向に向くと、鳴門の渦潮やさらに彼方に展開される瀬戸内海の島々の形が心に浮かび上がってくる。

 少し角度を変えただけで想い描かれる世界が大きく変わる。シーカヤックで使用する「デッキコンパス」は想像力を喚起する道具なのだ。

 そしてコンパスが南を指すと、黒潮の世界である。紀伊半島では岬一つ南に向かうごとに、グラデーションのように黒潮の影響が濃くなる。美浜町の日ノ御碕、印南町の切目崎、白浜町の市江崎が大きな境目となる岬であるが、ここ白崎はその起点だ。そして最南端の潮岬まで来ると黒潮はダイレクトにぶち当たり、亜熱帯の海になる。ぼくは熱帯の海より、まるで絶妙な絵筆のタッチのように南国風情の濃淡が感じられる紀伊半島の海が好きだ。そしてそれを肌身でリアルに捉えられるシーカヤックは素晴らしい乗り物だと思う。

 白崎の岬としての特異性は、航海の起点という意味だけではなく、空と海の青をよりシャープに引き立て異彩を放つ、珍しい白亜の石灰岩が担っていることはもちろん言うまでもない。25千年前に赤道付近にあったものがプレート移動によって今ここにあるという不思議。その地球のダイナミズムは、リゾート化された陸からよりも、人工物が目に入らない海からの視点の方が、より心に響く。シーカヤック特有の、水面すれすれの目線でそばに近づくと、まるで時空を越えてやってきた太古の巨大生物のような存在に思えてくるのだ。


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本日開催イベント

2017-11-02 01:11:51 | イベント

本日、和歌山市の「MIZUBE COMMON」にて開催されるイベントに参加させていただきます。かなり面白くなるかと思いますので、ご興味ある方で都合の合う方はどうぞふらりとお立ち寄り下さい。

日時:11月2日(木)18:30~20:40(18:00開場)
場所:Mizube Common(和歌山市福町38 京橋駐車場)(雨天:ミートビル3階)
予定:
 第1部:18:30~19:30
  トーク「世界を旅するカヤックトリップ紀行」
~環太平洋黒潮文化圏という大きなスケールで見た和歌山の海文化の価値~
 平田 毅氏

 第2部:19:40~20:40
クロストーク「和歌山水辺を楽しもう!」
   平田 毅氏(アイランドストリーム)×大江亮輔氏(WASSUP)×松本拓氏(北浜水辺協議会理事)
入場無料:1ドリンクオーダー制
 
◆スピーカープロフィール
○平田 毅氏
湯浅町でシーカヤック、トレッキング、SUPツアー等を企画・開催するアイランドストリーム代表 兼
世界各地をカヤックで旅する海洋冒険家

世界の美しい海の写真と共に体一つで地球の鼓動を感じる「プラネット感覚」にこだわった冒険旅について、海、自然の素晴らしさと、とりまく海洋文化について、環境問題について、などなど森羅万象を大きなスケールでたっぷり語ります
◆クロストークスピーカープロフィール
○大江亮輔氏
BRITISH cafe THE SPACE オーナー 兼 SUPチーム「WASSUP」代表
SUPと和歌山の自然や街の魅力を発信し、身近に感じてもらいたいという想いで2016年「日本シティサップ協会」の公認インストラクターとなる。今までの活動やこれからの夢や目標についてお話しします。
 
◆クロストークモデレータープロフィール
○松本拓氏
水辺の建築家
わかやま水辺のプロジェクト(テクニカル)アドバイザー。
大阪川床「北浜テラス」を運営する北浜水辺協議会の理事もつとめる。

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みちのく潮風トレイルの旅、無事終了

2017-11-02 00:53:20 | 旅行

 みちのく潮風トレイル4日間の旅無事終了。
 三陸海岸の魅力再発見と同時に三陸はやっぱシーカヤックを外したら絶対ダメだなと改めて思った。最もフリーなスタイルでトレースのない所へ行ける唯一の手立てがシーカヤックなわけだから。陸路も面白いけどしばし思いの他、行き場所が制限される。一方陸路のよさは、人との交流の機会が多くなることだ。だから歩きと漕ぎ両方必要。

 3日目には釜石で地元シーカヤックガイドのMESAの草山さんと一緒に飲み、来年コラボでツアーやりましょうという話しになった。

 三陸海岸、シーカヤッキングとトレッキング、もっとみんな人力で旅するムーブメントが起こればいいと思う。

 それから、最後に立ち寄った遠野が思いのほかよかった。
 これまで、凄いと言われる「遠野物語」の良さにぼくはイマイチ関心がなかった。オシラサマ、カッパ、ザシキワラシとか、妖怪譚とかああいうたぐいのやつ。それが今回現地に身を置くことによって、あれは自然と濃密に付き合う中で生まれた美しいものだと、結構腑に落ちるものがあった。
 自然音痴の現代人が自然を無理やり人間の側に引き寄せて捉えようとする「オカルト」や「スピリチュアリズム」とは対極の、日々の現実から決して離れず、自然への畏敬の念と絶妙の距離感をもって、自然界と人間界の不可思議さと精妙さに「ストーリー」という命を吹き込こんだ美しい奇譚の数々、とでもいうか。

 日本は深いと思う。


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