プリミティヴクール

シーカヤック海洋冒険家で、アイランドストリーム代表である、平田 毅(ひらた つよし)のブログ。海、自然、旅の話満載。

自立と協力

2013-12-19 10:44:02 | インポート
P1010048

P1010038

Img_0689

Img_0599

Img_0673

Img_0679

Img_0648

P1010059

P1010086

 またまた、前回の記事から相当期間があいてしまいました。
 ごめんなさい。
 来年以降のアイランドストリームの展開について作戦を練ったりしている日々です。
 色々と面白くなっていきそうな画策をしています。

 さて、前記事では瀬戸内カヤック横断隊の準備について書きましたが、もちろんおかげさまで無事帰ってくることができました。山口県祝島からスタートして七日間の行程。今回は毎日のように西高東低の気圧配置になり、総じて西よりの風が強いシビアなコンディションが続きました。最終的には小豆島ではなく岡山の渋川海岸でゴールしたのですが、総勢20数名での海旅。いや~、今回も色んなドラマがあり、たくさんのことを学べました。

 まあ、詳しい内容は横断隊のブログに参加者がそれぞれレポートを寄稿しているのでそれをご拝読いただければ分かるかと思いますが、ひとつ言っておかなければいけないのは、横断隊では最終目的地(今回は小豆島)に到着したから「成功した」とか、あるいは到着できなかったから「失敗だった」とかそういうものではなく、あえて目的地を設定しそこを目指して七日間フルにシーカヤック海旅する中で、どんな発見や学びがあるかってところがテーマなんですね。
 カヤックを漕ぐことはもちろん、ナヴィゲーションから露営まで自分のことは全て自分でやる上で、チームの一員としてメンバー同士が知恵を出し合い、力を合わせ、時として助け合いながら進んでゆくこと。そこに面白さがあるわけです。
 その上で「瀬戸内」という世界屈指の多島海について、肌身を通して知ってゆくこと。

 自立と協力、
 この二つのバランス感覚が、
 横断隊の何よりの特徴と言えるかもしれませんね。
 もちろん自立していないとシーカヤッキングは成立しない。
 だって、漕ぐのは自分だから。
 各々が自立しているからこそお互いが信頼し、協力し合う事ができる。
 自分の意見を持ったみんなの文殊の知恵によって、
 シビアな状況判断も、より最善のものに磨き上げられてゆく。
 そうして漕ぎ終える頃には、チームとしてのまとまりと、
 メンバー同士の不思議な絆が生まれ始める。

 そういう意味で、
 別に横断隊はチャレンジとか冒険って類いのものではないとも言えるでしょう。

 だけどまあ、まとまった日数のシーカヤック海旅の経験をしたことがある人というのも今の日本でそうそういるわけではないし、実際のところ常に危険と隣り合わせの「マジ漕ぎ」の舞台でもあるわけで、確かにシーカヤックでメシを食っているガイドのような人間ではなく一般の方にとっては、実際の気持ちの面で、チャレンジとか冒険の意識がかなり強くなってくるかと思います。
 一日50キロほど漕ぐ力を養う必要もあるし、焚き火から調理まで一通りの野外生活術を身につける必要もある。会社勤めの身でほとんどゼロのところからあえてそれを習得しようとすると確かにちょっとした「チャレンジ意識」を奮い立たせる必要性も出てきますね。
 行動を起こすモチベーションとして、それもまた大事。

 瀬戸内カヤック横断隊にいつか参加したいという人も結構いらっしゃるようなので参考までに繰り返しますが、横断隊は旅の実践の中での学びや気づきが目的であり別にチャレンジや冒険ではないのだけれど、参加する前段階としてはまずチャレンジ精神や冒険意識を持っておいたほうがいいと思います。そうするとそこに向けて日々トレーニングしたり風や潮流を読むナヴィゲーションをきちんと勉強しようとする意識が芽生えてくるからです。
 
 その下準備さえちゃんとするならば、横断隊は誰でも参加できます。
 そのための日々の練習や上達、あえて言うとそのコツは、
 毎回海に漕ぎいでる際、
 あえてちょっとだけ「無理め」のラインを設定し、
 一歩一歩それを乗り越えてゆく意識を持つことです。
 「無理なこと」をするのではなく
 「ちょっと無理め」くらいのことを繰り返してゆく。
 (本当に「無理」なことはやらないでおく。勘違いのないように。20キロ漕げる人が25キロ漕いでみるとか、平均時速5キロで漕げる人が時速6キロで休みなく漕げるところまで漕いでみるとか、そういうレベルの積み重ね)。
 その意識が必要ですね。
 いつもいつも自分の限界ラインの内側に完全にとどまりつつヌクヌクとした漕ぎを繰り返していてもシーカヤッキングは大して上達していかない。
 結果としていきなり本番で未知のトライをすることになり、
 それは「無理め」ではなく、本当に「無理なことをする」になってしまうわけです。
 
 甘く見るのは間違っているけれど、
 自分には無理、と決めつけるのもおかしい。
 そういう意味でのちょっとしたチャレンジ意識。

 話は変わりますけれど、
 「ノミ理論」って知っているでしょうか? 
 犬とかにくっついてるちっちゃい虫で、ノミっていますよね。
 あのノミ。
 あのノミってちっちゃいけど跳躍力抜群で、1mくらいピョーンと飛べるそうです。
 だけどそいつを15cmのビンに入れると、15cmしか飛べなくなる。
 それは物理的に、当たり前ですね。
 しかし問題はそいつをビンから出して自由にしてあげても、
 15cmしか飛べなくなってしまうという現象です。
 環境や習慣によって、
 1m飛べる力があるのに15cmしか飛べなくなってしまうということ。
 本当はできることができなくなる、
 物理的な問題ではなく精神的な問題。
 つまり自分自身で勝手にリミッターをかけてしまうということですね。
 で、これは人間にも当てはまることではないでしょうか?

 閉塞感の強い今の日本社会の現状、
 「自分なんて無理だ」とか「今の環境でできるわけがない」など、
 勝手に自分自身でリミッターをかけてしまっている物事が
 いかに多いか。
 1m飛べる力があるのに、15cmしか飛んでいない人がいかに多く、
 もったいないか(自分も含めてだけどね)。
 ちなみにその、15cmしか飛べなくなったノミを再生させる方法は簡単らしい。
 1m飛んでいるノミ連中の中に放り込んでやればすぐに思い出して、
 再び1m飛べるようになるそうだ。

 ・・・と、この喩えを出したのは、
 別に横断隊やシーカヤックに限らず、
 なんでもちょっとしたチャレンジ意識を持ってトライしてみると、
 意外とできちゃうものだという事ですね。
 元々は1m飛べるわけだから。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする