月が隠れて完全に闇夜になった先日のナイトツーリングでは、夜光虫が非常によく見えた。
夜光虫とは海中に普通に棲息するプランクトンの一種で、まあ連中は日中肉眼で見えないけれど、夜の暗闇下では何かの外的刺激を受けることによって発光するという性質を持っている。
たとえばカヤックのパドルを「ガバッ」と入れると光の粒子の塊と化した波紋がそこらに広がり、そいつはまるで魔法使いのガールが杖を振ってその杖の先から星がキラキラキラっと流れ出るのによく似ている。暗ければ暗いほど、夜がふければふけるほど、よく見える。
で、先日は特に多かった。
そこらをグルっとカヤックで周遊したあとついでに真っ暗な無人の砂浜に上陸し、シュノーケリングした。
水中で、マスク越しに、やばいほど光りまくっていた。
水中でちょっと体を動かすと、体の周辺に光の粒子がまとわりつく。面白いので大暴れしてみる。するとまるで高温の油の上でテンプラのコロモがバババババーっと広がるように、我が手足周辺で光が弾けまくる。ぼくは、エビフライの気持ちが分かったような気になったのだった。そうして次に、潜りながらいろいろ踊りまくってみた。ぼくの動きにあわせて光も一呼吸置いて踊りまくった。おびただしい光の集合はライトのように皮膚を透かして血管を浮き立たせるように見えた。私の手足を縫うように走る幾多の血管の中でさらに光の粒子がキラキラ流れては消えゆくようにも見えた。
流れ星のように。
宇宙空間のような漆黒の海中に漂う、天空の星々のような光の粒子の群れ。
そいつは非常に幻想的で、そこらの宇宙人なんかより遥かに宇宙的だった。