毎日新聞月イチ連載コラム「シーカヤックで地球再発見」、
11月分はアラビア半島東端のホルムズ海峡に面したムサンダム半島のやつ。
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鹿児島県・こしき島のギャラリーに訪問したときにいらっしゃった95歳の芸術家、平嶺時彦氏。
なんと80歳から創作活動を始めたらしい。
ぼくらは30や40で、あるいは50や60で「もう年だ」と思いがちだけど、そんなセリフは氏にとってみれば、ガキのたわごと、笑止千万の極みに違いない。
平嶺氏の人生はちょっと聞くだけでもすごい。19歳で悪運の遣いであると島で畏怖されるカッパに遭遇し、20歳で満州に派兵。自爆部隊に配属され、胸に地雷を抱え、あと一人で自分の番だというところで撤収。戦後シベリアにて3年間抑留、強制労働生活を送ったという。
で、シベリア生活の話を伺うと、なんと「楽しかった」という。物がないなりに、いろいろ創意工夫して生活用品を作ったりしながら面白く過ごした、とおっしゃる。
周囲には絶望して自死する者もいる中で・・・・、そんな人、初めて聞いた。衝撃的に印象に残った。
その後甑島に帰ってきて土建業を立ち上げ、60人ほどの人夫を雇っていたらしい。
芸術活動を始めたのは、東京の芸大に行き甑島でアートプロジェクトを立ち上げた孫に触発され、「じゃあワシも何か作ってみよう」というのがきっかけだったようだ。
それが80歳の時。現在95歳。
その稚気溢れる中にも「なんでもあり合わせのもので作ってみよう、とにかくやってみよう」というブリコラージュの逞しさが感じられる作品群を眺めているとふと、じいちゃんの存在が、この辺鄙で不便で冷や飯を食わされ続けてきた離島にありながらなんでも創意工夫して作り出し生き抜いてきた甑島人スピリットの結晶のように思えてきて、感動したのだった。
握手していただいた手は、分厚く、あたたかかった。
じいちゃん、長生きしてください。
また会いにいきたいです。
先日から、10日ほど鹿児島県の西海岸沖にある甑島(こしきしま)にカヤックトリップに行っていました。
上甑、中甑、下甑と3つに分かれた諸島を一周してきました。
海岸線のカヤッキングはもちろん、島の人々との交流や、文献なども通して島の文化もしっかり学び、非常に実りの多い旅となりました。
この旅は「島々と交感する旅」と名打ったシリーズの一環としての旅でした。
そろそろ過去に旅してきた場所と、これから旅する場所と合わせて、紀行文をシリーズ化して電子出版で発表していこうと考えているのですが、その流れでの旅です。カヤック、トレッキング、自転車、釣り、潜りなど、実際にアクティヴィティに興じる中で、国内外の島々の隠されたエッセンスをとらえ、表現していくシリーズ。
なぜ島なのか?
グローバル資本主義が極まった現在、世界中どこも画一化したように映る、あるいは映し出される昨今ですが、意志をもって細部に目をやるとまだまだ世界は多様性に満ちている。特に辺鄙な島ほど、自然、文化の両面において、多様な面白さが残っているのですね。
そんなものを、生身の実体験を通して、伝えていければと思っています。
「交感」というテーマで、もちろん「自然の息吹、地球の鼓動に対して楽器のように敏感な」カヤックがメインツールになりますが、変化を持たせてより本質に迫るために、いろいろやります。
甑島、世間一般的にはマイナーだけど、いやあ、いい島ですよ。
その内容の詳細は上記で発表することとして、このブログではその写真を何度かに渡って載せておきたいと思います。
よろしくお願いします。
海水温はまだまだ暖かく(20度ほど)一方気温が下がるこれからの時期、特に朝方冷え込むと水温と気温の温度差で水面に霧が発生します。そこに朝日の光線が入ってくると霧の粒子に色彩が入り乱れ、えも言われぬ美しさを醸し出します。
なにげないですが、意志をもって自然の中に入ってみないと、絶対に出会うことのない光景。
そういう体験を、日常のなかで、できるだけ積み重ねていきたい。
それが豊かさだと思うから。
湯浅湾北岸は北方系の風情。
やびつ海岸は北風がすう勢になる今の時期から美しさが増す。
風裏になり、しかも太陽光線が南を通るので、穏やかでぽかぽかした空気の中をツーリングできる。
デイトリップはもちろん、キャンプもいい。
ちょうど焚火が身に染みる季節になってきた。
遠征用としてフォールディングカヤックのアルフェック「エルズミア530」の進水式をした。かなりでかいが、ある程度スピードが出て荷物をたくさん積載できる艇としてチョイス。ヤマト便でもギリギリ送れるサイズ。
これがなかなかいい漕ぎ味。
さすがにリジット艇に比べるとスピードは落ちるが、波とうまく噛み合うというか、うまくいなす感じというか、漕いでいて気持ちいい艇だった。もっとも空荷だったので、フル荷重ならどんな感じになるか未知数だが。
フェザークラフトなき後、入手しやすいフォールディング本格シーカヤック艇とすれば、こいつか、フジタカヌーのシーショア500かどちらかになるだろうな。どっちも捨てがたいが。
先日、直島諸島へキャンプトリップへ。
10個以上の島々を巡った。
太平洋沿岸のようにうねりがないかわりに、潮流が生き物のようにダイナミックに、かつ微細に動き回る、瀬戸内の海。その動きを読みながら、時間配分も考えながら、潮に逆らうのではなく味方に付けながら進んでゆくのは、ある種ゲーム性もあって面白い。
あるいは自分の感覚と洞察力で進路をチョイスし、美しい軌跡を描いてゆく、体感アート。
やはり海のツーリングは断然春と秋だな。
ある程度の距離を漕いでも汗だくになることなく、澄んだ空気の中進んでゆけるのは、そして焚き火が心に染みるのは、夏ではなく今の時期でこそ。