プリミティヴクール

シーカヤック海洋冒険家で、アイランドストリーム代表である、平田 毅(ひらた つよし)のブログ。海、自然、旅の話満載。

スイッチの入る、ふとした瞬間。

2011-03-08 18:37:20 | フィジー・カンダブ島カヤックトリップ
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 海外へ行くときは基本的にその地の治安と気候と地理と食べ物と水とある程度の交通事情くらいを最低限押さえておいて、あとはあまりカチッと予定を立て過ぎず勝手気ままな要素を残しておき、あえて向こうからやってくる予定外のことを楽しもうというアンテナと心の余裕を持ちつつ行動した方が面白くなるものですが、特に今回のフィジーは別段旅しにくい国ではなかろうということであえてほとんど情報収集せずのカヤックトリップとなりました。

 フィジー・ナンディ国際空港に着いてまず思ったのは、ただ暑いだけで「香り」ってやつがないなあ、ということでした。ハワイでもインドネシアでもどこでも「ああ南の島だ~」っていうそれぞれ独特の甘ったるいような香りが漂っているのですが、ここナンディ空港ではそれが感じられないなあ、季節的なものなのかなあ、ちょっと物足りない感じかもな、などと思いつつ今回の主たるカヤッキングエリアであるカンダブ島という離島へ飛ぶエアチケットを買おうと空港内をウロウロ。するとぼくのキョロキョロ具合を見ていろんな人が寄ってきて声をかけてくる。たいていの国ではそういう輩は十中八九うさんくさく品行よろしくない輩だったりするので無意識に身構えるのですが、どうやらこちらをカモりたくて声をかけてくる感じではなく、本当に親切心から声を掛けてくれているのだということがすぐに分かった。のちのち旅が進むにつれてそれはフィジー人全般に通じる優しさだということも分かってきたのですが、「ああ南の島の香り~」ってのがない代わりに、まずそれが到着直後の非常に新鮮な感覚でした。
 南の島~、て感じのおおらかなテイスト。
 
 みんなに丁寧に教えてもらってパシフィック・サンという航空会社のカウンターに行き、さっそく明日かあさってのカンダブ島行きのチケットを購入しようとするが、明日もあさっても便がなく最低でも5日後まで待たなきゃいけないとのこと。ま、この辺からしてぼくの行き当たりばったり感と南方系のテキトーさとのコラボ感が出ちゃっていますが、郷に入りては郷に従え、まあそれもいいだろうと。ちなみにフィジーってのは300個ほどの島が集まった島嶼国で、総合計するとちょうど日本の四国ほどの大きさだと言われています。島々にも大小さまざまがあり、首都スバや国際空港のあるナンディはその中でも一番でかい「ビチレブ島」って名の島にある街です。そしてぼくが行こうとしているカンダブ島はフィジーで4番目の大きさを誇る熱帯雨林の島で、日本でいえば淡路島をちょっと大きくしたくらいの面積になります。今回の旅では感覚的にビチレブ島には食指が動かず、速攻でカンダブ島へと飛ぼうと思っていたのですが、5日という中途半端な日程が空くならばまあしゃあない。それまでバスにでも乗ってこのビチレブ島を巡ってみるかと思ったのでした。

 しかしこの暑い中23・5キロのカヤック装備が収納されたバックパックと12キロほどの生活用品が入った別のバックパックとの2つを持ってあちこち歩き回るのは気が引けるなあ、レンタカーを借りるのももったいないしなあ、とカートを押してうろついていると、パンチパーマが伸びきったようなヘアスタイルのごついおばちゃんがぼくを見て状況を察知したのか近寄ってきて「あそこに預けるといいよ」と、荷物一時預かり所を指さしてくれた。そうだそんな簡単ことになんでおれは気付かなかったんだろうか、時差ぼけしてんのかなあ、もし海に出てこのぼけ具合だったらまずいよなあ、などと思いつつ5日間預かってもらう手続きをしたあと、バックパックを持ってリノリウム臭く薄暗い15畳くらいの荷物置き部屋に入ったとたんぼくのぼけた脳みそは一気にシャキーンとして、とっさに南半球を中心点とした地球の姿を思い描いたのだった。
 ちょうどこの上のグーグルアース図のような、海しか映っていないプラネットアース。 

 預け棚にはサーフボードがたくさん並んでいる。
 そう、このフィジーにサーフトリップしに来た連中けっこうがいるのだ。
 薄暗い部屋の中、まるでサーフボード一枚一枚それぞれに、「ぼくらはあちこちの国からこの南半球の島に、風という地球の息吹、波という水の惑星の鼓動と対話しに来ました」という無言のストーリーのようなものがしみ込んでいるような気がして、その棚に自分の折りたたみカヤックのバックパックを置くことによって、晴れてその仲間入りをした気分になったというわけです。
 南太平洋を中心点として地球儀やグーグルアースを見てみると、ちょうど角度の妙ってやつで、大陸が全く見えず、地球は完全に水の惑星と化するのですが、ちょうどそのとき宇宙から見たウォータープラネットの姿がパーンと脳のスクリーンに描き出されたのでした。
 ここでやっとカヤックトリップのスイッチが入ったわけですね。
 
 カヤックトリップという旅のスタイルはサーフトリップやダイビングトリップというスタイルに比べていかんせん遅れをとっている感があるけれど、カヤックこそ、この暗黒の大宇宙の中にあってひとり美しくブルーに輝く宝石のような水の惑星「地球」の息吹をディープに体感することのできる、最良のトリップツールなのです。
 だいたい、バックパックで背中に背負って歩いて運搬できる舟など、他にない。
 そういうスイッチ。
 さてそういうわけでこのフィジー・カヤックトリップのお話は次回に続いていきます。

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カンダブ島

2011-03-03 15:01:45 | フィジー・カンダブ島カヤックトリップ
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 フィジーの離島であるカンダブ島でのカヤックトリップから帰ってきました。

 カンダブ島とは、日本でいえばちょうど淡路島くらいの大きさか、南太平洋に浮かぶな~んにもない熱帯雨林の島ですが、しいて言えばグレートバリアリーフに次いで世界2番目の面積を誇る「グレート・アストロレイヴ・リーフ」と呼ばれるサンゴ礁が有名です。
 そこをぐるーっとカヤックで回ってきました。

 以前のブログでも書きましたが
 http://blog.goo.ne.jp/islandstream/d/20110108
 南太平洋を中心点として地球儀やグーグルアースを見てみると、ちょうど角度の妙ってやつで大陸が全く見えず、地球は完全に水の惑星と化すのですが、その宇宙から見たウォータープラネットに浮かぶ感覚を意識して漕ぐってのがひとつのテーマでした。
 その感覚ってカヤックそのものの核心点でもあると同時に、かつカヤックという狭いジャンル枠を越えて旅とか自然とか海とかの本質をつかみ取るってことのためにも、とても大事なんですよね。
 いわゆるひとつのプラネット感覚。
 そういう所を、ただチョイ漕ぎするのも悪くはないのですが、それより1週間とか10日とか20日とか、身体の細胞全体が変わっていく感じというか、ラジオのチューニングでも合わすように己の存在の内部からそっちの側に近寄っていく旅がしたいなと思っていました。

 カンダブ島は、フォールディングカヤックでぐるっと回るにはちょうどよい大きさ、ちょうどよい辺鄙さの島で、また治安の問題や毒蛇、マラリア蚊、猛獣などの心配もなく、行く前から「テント暮らししながら周れるいい島を見つけたぜ、我ながらセンスいいなあ」なんて思いつつ乗りこみました。

 しかし実際、漕ぎ続けるには過酷なほど、もう身体の芯からおかしくなるんじゃないかと思っちゃうほど、猛烈に暑かった。また途中でハリケーンの襲来などにもあってなかなか大変な面もあったんですが、親切な各村々の人々にお世話になったおかげもあって、すごくいいトリップとなりました。ここの島民は、日本でいうならば江戸時代以前の名もなき農村にすむ民って感じの自給自足生活している人たちなのですが、便利なものは何一つ持っていないけれど、まだこんな人たちが地球上にもいるんだなあ、というほどフレンドリーでピースフルで心やさしい人たちでした。
 北アフリカや中東情勢が大きく揺れ動く一方、タイムワープしたような南の島のゆるーい空気。
 そして閉塞しまくって息苦しい日本。
 同じ地球の、別宇宙のような質感、リアリティ。
 いろんなことを哲学しまくりつつ、楽しんできました。
 
 が、帰ってきてからせっかく撮りまくった写真の後半半分、500枚ほどが間違って消去されてしまっているということに気づき、ちょいへこんでしまっているところです。
 まあ、しゃあないな。
 まあ、このトリップのこともまた、徐々にこのブログにアップしていきます。

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