一韶の俳句ブログ

俳句を詠うのは自然・私・家族・夢や希望・社会など。読む時はどんな解釈が浮かぶか読み手の経験や生活によって様々

3050  菖蒲園江戸しぐさして橋渡る  凛 

2024年07月02日 | 

江戸しぐさとは、他人と付き合う時の礼儀作法や自分を磨く考え方や方法などをいう。

◎傘かしげ 雨の日に互いの傘を外側に傾け、相手が濡れないようにすれ違うこと。

◎肩引き 道を歩いて、人とすれ違うとき左肩を路肩に寄せて歩くこと。

◎時泥棒 断りなく相手を訪問し、または、約束の時間に遅れるなどで相手の時間を奪うのは重い罪(十両の罪)にあたる。

◎うかつあやまり たとえば相手に自分の足が踏まれたときに、「すみません、こちらがうかつでした」と自分が謝ることで、その場の雰囲気をよく保つこと。

◎七三の道 道の真ん中を歩くのではなく、自分が歩くのは道の3割にして、残りの7割は緊急時などに備え他の人のためにあけておくこと。

◎こぶし腰浮かせ 乗合船などで後から来る人のためにこぶし一つ分腰を浮かせて席を作ること。

◎逆らいしぐさ 「しかし」「でも」と文句を並べ立てて逆らうことをしない。年長者からの配慮ある言葉に従うことが、人間の成長にもつながる。また、年長者への啓発的側面も感じられる。

◎喫煙しぐさ 「喫煙禁止」などと張り紙がなくとも、非喫煙者が同席する場では喫煙をしない。

◎お心肥やし 知識・機能を増やすだけでなく心・感性を磨く

◎見越しのしぐさ 先を読む

◎ロク 江戸っ子の研ぎ澄まされた第六感。五感を超えたインスピレーション。

(私見ではあるが、五感の次に第六感があるのではなく、五感すべての上に乗っているのが第六感だ、と思う。幸運を呼び込む予知能力、不幸を避ける予知能力、テレパシーなどがある。特に、味覚や臭覚、触覚を磨くと良い)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3049  かがり火の音たくましや鵜飼舟  信天翁

2024年06月27日 | 

鵜飼と言えば、「おもしろうてやがて悲しき鵜舟哉   芭蕉」を思い出す。

芭蕉のこの句は、能・謡曲の題目である「鵜飼」を下敷きにして作られた、と言われている。

 あらすじは、「安房の国の僧が、老いた鵜使いと出会う。鵜使いによると、私は殺生の禁制を破った咎めを受けて、殺された鵜使いの亡霊であると明かし、鵜を使った漁の様子を見せた後、闇路へ消えていく。鵜使いの悲惨な死を聞いた僧たちは、川の石に法華経の文句を書きつけて老人を供養すると、そこに閻魔大王が現れ、殺生の罪により地獄に堕ちるべき老人が、以前従僧をもてなした功徳もあって、救いを得たことを知らせる」

 芭蕉の句は、鵜飼の一夜が更けて鵜舟が帰るころは、あれほど鵜飼を面白がっていたが、そのまま悲しく切ない思いへと変わってゆくことだ、という意。

 見物人を集めるほど人気の鵜飼ではあるが、鵜を飼い慣らし、殺生をする行為を、残忍ととらえ、止めさせようとする仏教、特に日蓮宗の教えが基本になっている。

 さて、掲句の作者「あほうどりさん」は、鵜飼を篝火に焦点を当ててその逞しさを表現しているが、芭蕉の「おもしろうて」や謡曲「鵜飼」が下敷きになっているに違いない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3048  合併に市となる離島山笑ふ  巣鳩

2024年04月23日 | 

 市、郡、町、村、という人口や経済規模によって差別化された単位が、合併によって新しい名前の市になった。国・政府はこの30年、グローバル化・均衡財政・税金の細分化などにより支出を渋り、緊縮財政によって地方を疲弊させた。そして、都市の一極集中を招いた。

 しかも政府・日銀は、30年の経済停滞、デフレを平然と放置している。外国人に土地を買われ、企業も株も買われている。「売国奴」という言葉があるが、まさに、日本が売られている。

 それに気付かず、奴隷のように沈黙している、選挙にもいかない多数の日本国民、インバウンドに大喜びし、貴重な魚介類・野菜果物、等々、多くの国産の高級品を外国人に差し上げて(取られて)喜んでいる生産者・日本国民。

 その一つ、離島の合併により、村から市に名前が変わって喜んでいるのだ。離島の自治権が奪われ、市役所のある主要地の言いなりになることを、知ってか知らずか。この句の作者が、合併を喜んでいるのか、嘆いているのか分からないが、嘆いていることを切に祈る。

ホトケノザ(仏の座)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3047  501回 多留男会 令和6年3月句会

2024年04月22日 | 多留男会

あーでもないこうでもないとつるし雛 心

老梅を母の形見と言う老人      〃     

    

山笑うAIニュースの合成音    豊狂

山笑う卒園祝う胸のバラ       〃           

      

大空を国境もなく鳥帰る     黒薔薇

春の海ゆうらりゆらり観光船    〃

 

菜の花やみつ蜂遊び風遊び    信天翁

幕山の川音高し風光る       〃

 

採血の針ウロウロと春とおし   コトリ

眠れない雛人形の目が一杯     〃

 

ふるさとは雲形の頃遠い嶺     紅 

白木蓮夜の帳の仄明り       〃

 

まんまるに大きくふんわり朧月  流水

旅立の祝言葉や桜まじ       〃

 

背後から魔女の一撃春の雷     凛

朝の地震大島包み陽炎いぬ     〃

 

春の夢なつかしき人に出会う筋 伊豆山人

陽の光あびる草摘む散歩かな    〃

 

ゴジラ観る日比谷エリアは山笑う  淡白

カラスの巣除去ガザウクライナ   〃

 

野遊びや足裏の発条の心地よき   釣舟

西行に耳欹てし涅槃かな      〃

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3046  あーでもないこーでもないと吊るし雛  心

2024年03月29日 | 

 吊るし雛は、江戸時代から始まったようである。高価な雛人形とは異なり、近隣の仲良しの女性たち、母親や祖母が吊るし雛作りに集まり、娘の成長を祈りつつ、わいわいがやがや、あーでもないこーでもないとアイデアを出し合って、布や紙、糸などで様々な雛を手作りするのである。

人形以外に手毬(幸せ)、鶴亀(長寿)、三角(無病)、うさぎ(魔除)、巾着(お金)、本(学業上達)、犬(安産)、海老(長寿)など、様々な縁起ものを作り、吊るしたのである。

そして、吊るされた雛たちを揺らせば、一斉に雛人形たちはあーでもないこーでもないとおしゃべりを始めるのである。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3045  家康も斯くありなむと初音待つ  釣舟

2024年03月26日 | 

 近年に起こった震度7以上の巨大地震は、

2011年の東日本大震災。

2016年の熊本地震、

2018年の年の北海道胆振東部地震、

そして今年2024年の能登半島地震。

つまり、3~4年に一度、日本のどこかで巨大地震が起きていることになる。

 しかし、今回のテーマは初音である。その年の初めて聞いた鶯の声を「初音はつね」という。ちなみに家康が待ったという、初夏に鳴くホトトギスの初鳴きは「忍び音しのびね」という。

 初音を待ち焦がれている私であるが、まだ、聞かない。毎朝1時間近く散歩しているから、聞き逃してはいないはずだ。そこで、毎年初音を聞いた日を記録しているので、以下に記す。

2019年 2月 9日、21年 2月 22日、12年 2月21日、16年 3月  3日、15年 3月  9日

20年 3月 9日、18年 3月15日、17年 3月19日

 平均は、3月 4日なので、今年はやや遅い。2月に20度を越える日があり、「地球温暖化のせいだ、暖冬のせいだ」と騒がれたが、結局は平年並みなのだ。

 地球温暖化の原因がCO₂で、削減しなければならない、いう世の主張は疑わしい。又CO₂原因説が正しいとしても、圧倒的に多い半分近く(45,7%)のアメリカと中国が先導して協力する必要がある。森林伐採が続き、2020年の世界の二酸化炭素排出総量は約314億トン。国別は、以下の通り

1 中国     32.1%  

2 アメリカ   13.6%     

3 インド     6.6%           

4 ロシア     4.9%        

5 日本      3.2%          

6 ドイツ     1.9%         

7 韓国      1.7%          

8 インドネシア  1,7%

9 カナダ     1.6%

10 ブラジル    1.2%

11 オーストラリア 1.2%

12 メキシコ    1.1%

13 イギリス    1.0%

14 イタリア    0.9%

15 フランス    0.8%

その他       26.4%

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3044  山笑うカードで太る財布かな  おぼこ  

2024年03月10日 | 

 「山笑う」とは、まず春になり、木々の蕾が赤く色付き山全体が膨らんできた様子を言う、更に山桜など木々の花々が咲き、むくむくと山全体が更に盛り上がって見える様子を言う。今ちょうど、ヤシャブシが咲き出している。

 一方、作者の財布は、クレジットカード、ポイントカード、SUICAなど様々な物を買うためのカードによって膨らんでいるというのだ。その中では特に、ポイントカードが多いだろう。ポイントカードを作って売る販売戦略に乗せられているのは、第一にスーパーなどの小売店舗であり、第二に使う私達消費者である。この便利なカード社会に抗うのは、消費者が夢中になる限り、かなり難しいようである。

 本来不必要なカードを作って売る商魂によって踊らされている消費者ではあるが、財布を膨らませて結構楽しんでいるようだから、カードは必要な遊びであり、今に至っては生活必需品なのだ。

 一方、将来予測すれば、現在カードは滅びつつあります。カードはスマホの中、つまりネットの中に保存されつつあります。メールが出現し手紙や葉書が不要になったように、アマゾンが出現しデパートなどの小売店舗が閉鎖に追い込まれたように、カードは無くなりつつあります。インターネットがこの社会を、人間を変えつつあるのです。

 おっとっと、インターネットで変わらないものが、まだまだ沢山ありますのでご安心を。しかし、よくよくご注意を!!

 この句、作者が膨らむ春の山々と、自分の財布の膨らみを比べているところが妙。一体、人間はどこに向って進んでいるのだろう、という問いを私達に問いかけているのだ。      合同句集「天岩戸」より

ホトケノザ(仏の座)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3043  レターパックに友の手作り雛人形  淡白

2024年03月07日 | 

 レターパックとは、郵便局が指定するA4サイズ、厚さ3センチ以内の書類などを送る宅配便である。その中に、雛人形が入っていた、という。当然、材質は紙であろう。大きさからすると、一つではなく、複数入っていたのかもしれない。沢山の吊るし雛かも知れない

 さて、世の中では、人々が手作りをせず、大量生産の商品を買う時代になった。物を手作りしないと、不器用になる。安全な家に住むと、耳が悪くなる。屋外に出なくなると、目が悪くなる。出来合いの物ばかり食べていると、味覚や臭覚が衰える。車社会で歩かないと、足が衰える。そいいう五感が衰えると、第六感(勘)が働かない。

 今後、AIやチャットGBTなどが発達すると、記憶力や思考力、想像力、創造力が衰えるだろう。科学文明の発達によって、物が軽薄短小となり、とても便利に扱いやすくなった。しかし増々、人間本来の動物的本能は衰えてゆくだろう。

合同句集「天岩戸」より

ヤシャブシ(夜叉五倍子)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3042  「おい母さん」呼んでしまひぬ蕗の薹  仁

2024年03月05日 | 

この句は、色々な解釈が成り立って面白い。

➀ 子供の蕗の薹が、葉っぱのお母さんに「おい母さん」と呼び掛けた。童話の世界ですね。

➁ 蕗の薹を見つけた作者が、自分の妻に「おい母さん」と呼び掛けてしまった。母親に「おい」と呼び掛けるのは、私は抵抗がある。妻がふさわしい。子供がいる家庭で、夫が妻を「母さん」と呼ぶのは普通。

③ 蕗の薹を見つけた作者が、実際近くにいる母に「おい母さん」と呼びかけた。子供の頃の回想。

➃ 蕗の薹を見つけた作者が、元気だが近くにいない母にいると勘違いして「おい母さん」と呼びかけてしまった。

⑤ 蕗の薹を見つけた作者が、すでに亡くなっている母に「おい母さん」と、生きているつもりで呼びかけてしまった。

こういった色々な解釈が成り立つのも、ついつい呼んだという意味の、この句の「呼んでしまひぬ」にある。蕗の薹を見つけた喜びの余り、見せたくてついつい声に出してしまったのだ。

飯野仁俳句集「しえん」より

 最近知り合った飯野仁さんから句集をいただきました。私が俳句をやっており、句会を主宰しメンバーが複数いるということを聞き、10冊送って来ました。俳句は、若い頃から現在まで、200句ほど。他に随筆もあります。 

 飯野さんは、弁護士で93才、とてもお元気です。句集「しえん」の由来は、煙草の煙から来ていて、大の煙草好き。特に「パイプ煙草」なのだそうです。

 仁さんのダンディズムは、俳句、パイプタバコ、ヨット、ゴルフ、ジャズ、車など多岐にわたっています。

シキミ(樒)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3041  第五百回 多留男会 2月句会 2024、2,27

2024年03月03日 | 多留男会

雪舞ひて巷の明かり小踊りす   信天翁

春立つを群なす小鳥木から木へ   〃

    

晴れ渡り陽の匂ひ立つ蕗の薹   黒薔薇

桜貝メモリーそっと玉手箱     〃

    

一つだけ子に詫びたきや冬苺    紅 

リハビリやガラス戸越の春隣    〃

 

人去りて瀬音もどりし梅の径    凛  

もろともに齢重ねし梅なれば    〃

     

小鳥カフェメジロこぞって雨水かな  伊豆山人 

落椿地面にえがく万華鏡        〃

 

大山を冬靄包み空青し       流水

春雨に瞳も濡るる今宵かな     〃 

  

おっととつまずき喜寿の二月かな  心

春風やしとどの窟教えおり     〃

 

侘助や一つ手折って妻の元    コトリ 

蕗のとう揚げてビールと父の笑み  〃

       

春時雨傘ささぬ子等黙し行く    豊狂 

三輪車スケボー横に蕗の薹     〃

    

育休のパパ抱く吾子はホッカイロ  淡白 

寒暖差大きい時に足湯あり     〃  

 

大鬼が小鬼を抱いて節分会      釣舟

春冴ゆる眼耳鼻舌身第六感      〃

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3040  雪舞ひて巷の明かり小躍りす  信天翁

2024年03月02日 | 

 (ゆきまいて ちまたのあかり こおどりす)

「巷(ちまた)」とは、大ぜいの人々が生活している町や世の中、にぎやかな通りや街角をもいう。この句の場合、町である巷が、街灯によって明かるく照らし出されているのだ。

通りは、ビルによって風が乱され、降っている雪が乱舞している。その雪は、街灯によって明かるく照らし出されている、というのだ。

つまり、雪が風によって乱舞しているだけなのだが、まず「雪が舞っている」と言い、次に「明かりが小躍りしている」と雪の様を更に強調して言い替えているところが妙。

 そして実際、小躍りしているのは、雪や明かりだけではなく、作者のこころも小躍りしているに違いない。現実の作者は、又、少女時代のことを回想しているのかもしれない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3039  日溜にむしろを引きて梅ソフト  清野美部

2024年02月01日 | 多留男会合同句集「天岩戸」

(ひだまりに むしろをひきて うめそふと)

 あらためて清野の俳句を眺めていると、熱海に引っ越してからの日々が鮮やかに思い返されます。

 一月半ばから熱海桜の開花を待ち、二月は梅見に河津桜、四月は坂井邸のお花見からのタケノコ採り三昧。その他にもワラビ、ニューサマーオレンジ、芝刈り、夏ミカン、梅干しづくり、ビワ、ヤマモモ、天ぷらの会、紅葉ドライブ、サンマの会、干し柿づくり、金柑…。

 熱海に来てから、たくさんのお友達ができて、四季折々のイベントを一緒に楽しませていただきました。ここに改めて、皆様に深く御礼申し上げます。

 この句は夫婦で湯河原梅園に梅見に行った時のものです。当時、湯河原梅園では、梅見の季節には広場に木のチップを敷き詰めて、むしろではなく畳表を自由に借りられるようになっていました。まだ肌寒い季節ですが、チップと畳表が陽に温められて、とても気持ちが良かったのです。「お弁当作ってな。俺、お稲荷さんがいい!」リクエストの声がよみがえります。デザートは売店の梅ソフト。ちびりちびりと舐めながら、梅の間を散歩しました。思い返すとなんと幸せな日々だったことでしょう。まだまだ続くと思っていたのに、最後まで想像のナナメ上をいく男でした。 

 妻 清野さおり記

熱くともひとり風呂吹き無声鍋  美部

 僕が、この俳句を初めてみたとき、「ふろふき大根」という言葉を知らずに書いてしまいました(笑)。無声鍋と詠むくらいですし、僕が一緒に暮らし始めるまでは、やっぱり寂しかったのかなと思います。僕が熱海に来てからは、毎日お風呂に一緒に入ったりしたことを懐かしく思い出します。もう今では、僕が一人風呂になってしまいましたが、なんだかいつも、一緒に入っていた情景が浮かんできて、誰もいないのに水面が揺れたりしたことがあったりなかったりします。まだまだ寂しいですね。        

(合同句集「天岩戸」より 息子 楽聞記)

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3038  初孫の生命の画像聖五月  御守 海人 

2024年02月01日 | 多留男会合同句集「天岩戸」

(はつまごの いのちのがぞう せいごがつ)

この句は、海人さんのお嬢さんが送ってくれたお孫さんの写真でしょうか。「生命(いのち)」という言葉に、彼の喜びがあふれています。

 彼は、愛妻家で子煩悩でした。長生きしていたらきっと孫煩悩であったことでしょう。いつも奥さんやお嬢さんの話をしていたし、家族旅行の話も良くしていました。

海人さんと私は、俳句とテニスの仲間でした。彼は、話題が豊富で、よく冗談を言い、いつも明るく、酒が大好きで、周りを楽しませ、和ませてくれる人でした。趣味が広く、真鶴の海辺育ちですから、釣りや素潜りはお手の物、将棋も熱心でした。

 彼は、「引退したら、芭蕉を偲んで、奥の細道を旅したい。一緒に行かないか」と言うので、「そうだなあ、海人さんが芭蕉で、僕が曽良なら一緒に行っても良いよ」と私が言うと、彼は笑いながら「是非一緒に行きましょう」と言ってくれました。

 そんな彼が、若くして癌に倒れ帰らぬ人になってしまいました。本当に残念です。

母と娘の泣いて抱き合う冬一日  海人

「奥の細道」の珍道中も叶わぬ夢になってしまいました。      

 (合同句集「天岩戸」より 釣舟記)

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3037  仏掌に木洩れ日しづく夏正午  佐藤 吠冲

2024年01月29日 | 多留男会合同句集「天岩戸」

(ほとけてに こもれびしづく なつしょうご)

至福から法悦へ

二行読むのにも、一週間。それでもまったく理解不能という超難解なマラルメという詩人がいる。そんな詩的な俳句も、おもしろいかなと挑戦!

初夏のある日、欝蒼とした庭でハンモックを楽しむ。木々の薫り・鳥のさえずり。室内からB・エヴァンスの「流れの下で」が流れてくる。ハンモックに身をゆだね、独特の浮遊感を味わう。さまざまな思念が、浮かびまた消えていく。至福の時である。正午を回ると、風がでて葉々が揺れ、薄暗き世界に木洩れ日が、雫となって降り始める。光の雨の中で、自分という存在が希薄になる。ハンモックも抱擁感だけになり、なにやら御仏の掌の中で、生かされ生きるという法悦を味わう。この法喜の世界を、「しづく」という多義語を用い、詩的な俳句で表現した。「しづく」は、若い時に出遭った語で、名詞として、雫の意味を持つ。また動詞として「①水底に沈む②水面に映っている」の意味を持つ。御仏の光の海に溶け沈んでいるのだが、ただ沈んでいるのではなく、水面にも映し出される我ともいえぬ法悦の我。独りよがりの極みの句だが、まあそれもよし。

(合同句集「天岩戸」より 佐藤吠冲記)

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3036  初詣明るい方へ歩きだす   佐々木コトリ

2024年01月29日 | 多留男会合同句集「天岩戸」

(はつもうで あかるいほうへ あるきだす) 

 夢溢れる若い頃、私にも叶えたい夢がありました。けれどもその夢は、突然道半ばで途絶え、叶えられませんでした。それからの年月、心ここに在らずで、ただ淡々と日々を過ごしていました。

 そんな中、3・11東日本大震災…。ハッとしました。人はいつ死ぬか判らない。私はもう一度やりたい事(陶芸と料理)を中心にちゃんと生きようと決心し、動き始めました。

 そして出会ったのが、岩戸窯、釣舟先生でした。先生は私の話を聞いて下さり、『四十過ぎじゃ遅いかもね。でも、やってみれば』と岩戸窯に通う事を了承して下さいました。有り難い事に、それから八年私は、陶芸中心の生活を送る事が出来ています。

 そして、岩戸窯に通わせて頂いている当初から、俳句の事も聞いていたのですが、7年目で漸く、参加させて頂く事になりました。

 この句は、悲しい事や愁う事の多い世の中、一個人は小さい存在ですが、一人ひとりが、日々幸せに暮らす事で、世の中全体も明るい方へ歩き出せたらな、と思い作りました。

(合同句集「天岩戸」より 佐々木コトリ記)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする