一韶の俳句ブログ

俳句を詠うのは自然・私・家族・夢や希望・社会など。読む時はどんな解釈が浮かぶか読み手の経験や生活によって様々

2115  第280回 12月 岩戸句会 

2019年12月29日 | 

茶の花や占い通りのよき晩年      洋子  

冬茜野沢菜細かく刻みおり

 

穏やかな白衣まぶしき冬日射      さくら

あらかたは通院記録の日記果つ

 

凩や炎と土の出会ふ窯         繰子

木枯や人は都会の方を向く

 

銀杏降り敷く側道の喫煙所       稱子

忙中閑ありダンスパーティ冬銀河

 

まどろみをむさぼるねこのこはるかな  海人

民の声谺と化して山眠る

    

枯尾花派手はでズボン散歩中      豊春

冬の波風切るマスト鳴り止まず

   

力道山床屋で見てた師走かな      炎火

ずわい蟹印刷された市営バス

   

太古の地層に挑みつづける冬の波    薪

ローストビーフ薄く切り分け冬の波

  

一茶似のばば大根で道を指し      歩智

冬空に白い煙高く昇りて

      

追う熊手逃げる枯葉と競い合い     余白

紅葉も散華も見せて桜生く

 

凩や心の奥を吹き抜けろ           沙会

冬晴れの海も大好き大空も  

 

隠れ茶屋昼会席のクリスマス       裕

豆柴のまき毛も伸びる日向ぼこ

 

枯れ枯れて風の流れの冬芒       イヨ

足元を音なく跳ねる冬の雨

 

独楽遊びしてる子を見た人はいる?   貴美

餅つきも凧揚げもなくお正月

 

息を呑む丹沢連の美しい雪       鞠

山積みのみかん人・人群がるよ

 

年の瀬の浮世を覗く梅一輪       雲水

わびしさとさみしさ満ちて冬の波

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2114  なけなしのスタミナを削ぐ濡れ落葉  炎火

2019年12月13日 | 

 句会当日、神奈川県湯河原町と静岡県熱海市の境である千歳川を渡って泉に入る道すがら、車に同乗させて頂いた海人さんと紅葉の話をしていた。海抜30mから、海抜400mの岩戸窯を目指して登って行くと、徐々に景色の変化が感じられてきた。二人で、「紅葉は赤が良い」、「黄色も濃いのが好き」とか、勝手に話していた。

 私は選句の中で、掲句を読んで一瞬、「エエッ」と軽いショックを受けた。落葉にも一生があったのだ。緑の葉が赤や黄色になっていく過程で、スタミナをすり減らして、人間をこんなにも喜ばせ、感動させ、最後には落葉に、それも濡れ落葉になっていく。何気なく見ていた景色の移り変わり。

 句会でも、「落葉が沢山あって、いつまでたっても片付かない」と嘆いていた人もいた。落葉は、頑張り過ぎてスタミナが切れてしまったマラソン選手です。でも落葉に同情していたら、どなたかに叱られそうです。

 私は、落葉が好きになりました。落葉掃きは大変ですが、焚火でもしながら懐かしい歌をみんなで歌いながら暖まりたいですね。岩戸窯は薪ストーブが焚かれ、ポカポカ、ほかほか居心地は最高でした。

この平和がいつまでも続きますように (パピルミ記)

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2113  神の留守作り置きして旅に出る  パピルミ

2019年12月08日 | 

 陰暦十月を神無月(かんなづき)という。日本の神様が、全て出雲に行ってしまうので「神の留守」ともいう。本来は、醸成月(かみなんづき)神嘗月(かんなめづき)神な月(かみなづき)雷無月(かみなしづき)などと言われていたものを、中世の頃に神無しとの字を宛てたのが始まりのようである。

 出雲だけは「神在月」という。この話は出雲の御師が、出雲の都合のいいように考え出した法螺話なのである。そして、法螺が誠になって、正式に暦に採用されたのも面白いが、その後、出雲を除く日本全国の神様が留守では困るので、留守番をする神様(恵比寿神)もちゃんと考えられたそうである。こういう日本人の遊び心に、私は敬服してしまう。実に楽しいではないか。

 さてこの句、作者自身が作り置きしたのだそうだが、それだけではつまらない。留守中に、私達が困らないように、神様も作り置きしてくれたのだ。果たして神様は、恵比寿様の他に何を作り置きしてくれたのだろうか。

センリョウ(千両)

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2112  第279回 11月 岩戸句会 

2019年12月07日 | 岩戸句会

神の留守作り置きして旅に出る   パピルミ  

冬の海中鰯キラキラ頭上を通る

 

烏瓜飾り路上の生活者       薪

短日や兎土偶に尻の穴

 

冬の朝ぐっと近づくランドマーク  さくら

咲き初めて石蕗に移ろう季節かな 

 

冬晴や三界一望透かしをり     沙会

息止めて又咳ひとつ枯芙蓉

 

コスモスや遠い記憶の廃校よ    鞠

ゆっくりと踏むサクサクと落葉かな

 

朝夕の温度差知りぬ冬始め     イヨ

からからと風と去り行く落葉あり

 

秋風や豆腐コトコトネギ生姜    裕

湯豆腐もいつもの鍋で無精者

 

休航のマスト奏でる北風かな    海人

目白鵯雀集いし子守柿

 

喜より怒を俳句にせんと冬の旅   炎火

なけなしのスタミナを削ぐ濡れ落葉

 

今朝の冬レジに居並ぶ婆と爺    豊春

枯蟷螂呼び鈴抱え動かざる

 

面取りのやや雑となり鰤大根    歩智

終活の準備せよとの妻の声

 

さざんかや咲き乱れては散りたがる 洋子    

ひと筋の蔦にすがるや烏瓜

 

老夫婦手を取り運ぶ冬野菜     余白

陽だまりの子規庵囲むラブホテル 

 

草花にかすかな湿り今朝の冬    稱子

一刀両断薪一回転の着地かな

           

初氷割るや小鳥の水飲み場     雲水

小鳥来る旅立つ夢の実万両

 

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