一韶の俳句ブログ

俳句を詠うのは自然・私・家族・夢や希望・社会など。読む時はどんな解釈が浮かぶか読み手の経験や生活によって様々

3020  新之助てふ新米を白粥に  冬華  

2023年12月15日 | 

 コシヒカリ70%の生産量を誇る新潟県で、気候によるリスク分散を図るため、早生品種の「こしいぶき」と晩成品種の「新之助」を開発したという。2017年より販売を開始し、コシヒカリの遺伝子を25%受け継いでいるが、その食味はまったく異なるという。

 さてこの句、新之助、新米、白粥という「し」音の繰り返しが心地よいですね。但し、白粥にしてしまって、新之助の美味さが消えていないか、気になる所です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3019  ふる里の駄菓子屋も消え鰯雲  凛

2023年12月10日 | 

 物心が付いた頃、我が家にあった電気製品は、裸電球とラジオのみだった。それから洗濯機が来て、冷蔵庫、テレビ、黒電話、蛍光灯が来た。自転車とリヤカーがスクーターになり軽自動車になり、普通車になっていった。

 当時の田舎には小さな雑貨屋があり、そこには子供たちのための駄菓子、大人のための食料品、農具、金物、酒、たばこ、燃料などを揃えていた。

 地域によっては、子供たち専用の駄菓子屋もあった。この句の駄菓子屋は、作者の年齢を考えると、ウン十年前に足繁く通った駄菓子屋なのであろう。

 産業革命以後の科学文明は、幾何級数的に変化している。生まれるものと滅びるもの、その変化に右往左往せず、地道に生きていきたいと思うこの頃である。最近は、パソコン、スマホは当たり前、自動運転の車やドローンのタクシーが完成間近である。しかし、科学は進歩しても、戦争はなくならない。人類は愚かのままだ。人類破滅を危惧するのも私だけではあるまい。

 さて、あるものを詠うのが俳句の基本ではあるが、この句のように無いもの、無くなってしまうものを詠うこともできるのである。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3017 鵙高音国宝立正安国論  釣舟 

2023年11月23日 | 

(もずたかね こくほうりっしょう あんこくろん)

 平清盛(1118~1181)が武士政権を起こし、朝廷にまで権勢を誇った平家時代は、壇ノ浦の戦いによって25年の短命に終わった。替わったのは、源頼朝の起こした鎌倉政権であったが、源氏も滅ぼされ、北条氏に取って替わられた。

  鴨長明の「方丈記」によると、鎌倉幕府が成立するまでに、京都では様々な自然災害や大火があった。

1177年      京都の大火 (安元3年4月28日)

1180年      京都の竜巻 (治承4年)

1180年      福原遷都  (治承4年)

1181~1182年 養和の飢饉 (養和年間)

1185年      京都の地震 (元暦2年7月9日)

1185       頼朝により鎌倉幕府が開かれた。(文治元年)

 そういった社会不安の中から鎌倉幕府が誕生し、「鎌倉新仏教」と称する仏教が勃興したのだ。法然(浄土宗)・親鸞(浄土真宗)・栄西(臨済宗)・道元(曹洞宗)・日蓮(日蓮宗)・一遍(時宗)によって始められた六宗である。

 北条政権になってから、室町幕府が成立する1336年(建武3年)までの、鎌倉時代150年間も、地震・暴風雨・飢饉・疫病などの災害が相次いだ。当時鎌倉にいた日蓮は、執権北条時頼に「立正安国論」を提出した。しかし、時頼から「政治批判」と見なされて、翌年に日蓮は伊豆国に流罪となった。市川の中山法華経寺には、国宝の「立正安国論」がある。

鴨長明 1155~1216

親鸞  1173~1263

道元  1200~1253

日蓮  1222~1282

一遍  1234~1289

さて、現今の日本では、2025年問題などと、世界規模での危機意識を煽っている人々がいるようだが、自民党政権による政治の腐敗と堕落、日本の経済的没落のこの30年を鑑みると、あながち荒唐無稽とは言えない。

 社会不安は第一に、(地震、風水害、気候変動、食糧危機)など、政府が関与しても修復できないような大規模な自然災害から始まるのが常である。社会の不安から混乱へ、治安が悪化し、内乱や戦争に発展する危機を孕んでいる。

食用菊(もってのほか)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3015  下校時の鞄跳ねてる秋麗  豊狂

2023年11月20日 | 

 (げこうじの かばんはねてる あきうらら) 

  新型コロナのパンデミックがようやく収まったけれど、11月なのに早インフルエンザが猛威を振るっているという。10月27日時点の全国では、学級閉鎖2939学級,学校閉鎖55校に及んでいる、という。

 しかし、雨にも負けず、風にも負けず、雪にも夏の暑さにも負けぬ丈夫な体を持っている子が、熱海にはたくさんいるようで心強い。

 この句、背中の鞄に焦点を当て、元気な子供の様子をとらえている。秋麗という季語の斡旋によって、作者の微笑みさえ見えてくる。

鰯雲(鱗雲、鯖雲などとも)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3014  行く秋の我に神なし仏なし  子規

2023年10月27日 | 

 明治を生きた子規は、俳句、短歌、小説、評論など多方面にわたり創作活動を行い、漱石や虚子などに俳句を指導し、日本の近代文学に多大な影響を及ぼした。

日清戦争に記者として従軍、その帰路に喀血し、次第に結核に侵されていった。以後35才で亡くなるまでの7年間、子規庵で句会や歌会を催し創作活動を行った。しかし、病床の子規にとって、やり残したことが多々あったはずである。

「まだ死にたくない。神様、仏様助けて下さい」と懇願し祈ったに違いない。しかし、病は重くなるばかりで、その苦痛に耐えかねて掲句になったのであろう。

ソバ(蕎麦)の花

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3013  石山の石より白し秋の風   芭蕉

2023年10月25日 | 

「青春、朱夏、白秋、玄冬」と季節を色で示すのは、陰陽五行思想からきている。この句の「白し」は、秋風のことを言っているというよりは、秋の深まりをも言っている、と解釈すべきである。つまり、

「古来、秋は白いと言われているが、近頃は朱夏の暑さも収まり、白秋はすっかり深まって、ここの石山の石より白いのである。そこに心地良い秋風が吹いている。」

ウド(独活)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3012  御祝詞朗々として無月かな   釣舟

2023年10月19日 | 

(おんのりと ろうろうとして むげつかな)

 江戸時代までの日本人の夜となれば、ほの暗い蝋燭の明かりで、家族と過ごす時間のみが豊かに流れていた。そんな夜の生活の中で、夏の猛暑が去って涼しくなり、屋外に出ても蚊が少なくなり、月が如何に大きな存在であったかは、想像に難くないであろう。

 日本人にとって、旧暦で月日が動くのも、月とのかかわりがし易かったであろう。毎月の1日は月がない朔であり、7日は上弦、15日は満月、23日は下弦、そして1日に戻る繰り返し・・・一日の半分が夜となれば、昼の太陽以上に、夜の闇における月の存在は人々にとって大きかったのである。

 落語で「おい、八つぁん、天気もいいし15日だから遊びに行こうぜ」という、満月の夜の月明かりを頼みにして、夜遊びに誘う会話が成り立つのである。

月は一年中存在し、最も鮮明に見えるのは、空気が最も澄む冬である。しかし、季語としての月は、冬ではなく秋である。これは単に、夏は蚊が多く冬は寒いので、屋外での鑑賞に耐えないからである。

 現代日本人は、室内外を問わず、電気による照明という実に明かるい夜の生活をするようになった。テレビなどの娯楽があり、屋外に出て月や星を眺める習慣を全く失ったといっても過言ではなかろう。

 又、天の川(銀河)などは、夜空が明るすぎて日本国内のほとんどで見ることができない。日本の小学生の半数が、魚は切り身であると思い込み、月の満ち欠けを知らない、という話を聞いたことがあるが、信じるに足る恐るべき話である。夜空は、暗いほど星が良く見え、月の明るさが増すのである。 

 さて、江戸時代以前の人々にとって、秋に月を愛でる夜時間はたっぷりあった。いわゆる夜長である。14日の夜から20日の夜までの月の名前をみれば、月に対する人々の暮らしようが、よく分かる。

 又、月に関する言葉の数を見ても、日本人の月に対する愛着がどんなに強かったかが、分かるであろう。尚、十五夜や十三夜にお供えをして月を祭る風習は、日本以外にはないそうである。以下、月に関する言葉と意味を調べて見た。 

小望月、待宵・・・明日の十五夜を待ちかねて、満月を恋うている

名月、無月、雨月・・・一年で最高の満月を愛でる。なくても愛でる。

十六夜(いざよい)・・・月の出が遅いのをいざよう(ためらう)

十七夜・立待月(たちまちづき)、

十八夜・居待月(いまちづき)、

十九夜・寝待月(ねまちづき)、臥待月(ふしまちづき)

二十夜・更待月(ふけまちづき) 

下弦の月 満月と次の新月の間の半月をいう。逆Dの字で次第に欠けて行く。

二十三夜待ち 陰暦23日の夜半過ぎに月待ちをすることで願い事が叶うと言われている。

二十六夜(にじゅうろくや) 陰暦26日の月のこと。

虧月(きげつ) 満月から新月までの間の、次第に欠けて細くなってゆく月のこと。

晦(つきごもり) 月隠り(つきごもり)が転じたもので月の末日、晦日(みそか)のこと。

中秋/仲秋 陰暦8月15日のこと。秋(陰暦7、8、9月)の最中にあたるところから中秋という。

月待ち 月の13日・17日・19日・23日などの夜に人々が集まり、月の出を待って拝む行事のこと。

月見 観月(かんげつ)ともいう。特に陰暦8月15日と9月13日の月を観ることをいう。

月の頃 満月前後の月の眺めの良い頃のこと。

寒月(かんげつ) 冷たく冴えた冬の月のこと。

月天心(つきてんしん) 冬の満月は頭の真上近くを通り、天の中心を通っているように見える。

雨月(うげつ)/雨夜(あまよ)の月 雨で見ることのできない名月を言う。恋人の姿を想像するだけで実際には見られないことに例えて言う。

雪待月(ゆきまちづき) 今にも降り始めそうな雪催いの空にかかっている月のこと。陰暦11月をいう

薄月(うすづき)月が霞んではっきりしない。そのような夜のことを薄月夜(うすづきよ)という。

明月(めいげつ) 清く澄んだ月のことで、名月をさす。

弓張月(ゆみはりづき)/弦月(げんげつ) 弓のような形をした月のことで、上弦または下弦の月。

天満月(あまみつつき) 満月のこと。天満星(あまみつほし)は夜空一面の星をさす。

月白、月代(つきしろ)/額月(ひたいづき) 月が出ようとしている時、空が明るくなる状態をいう。

田毎(たごと)の月 小さく区切った棚田ごとに映る月のこと。

月宿る 月がその夜の座を占めること。

白道(はくどう) 月が天球上に描く軌道のこと。

月明かり/月光・月華(げっか)・月明(げつめい) 月の光、または月の光で明るいことをいう。

月下(げっか) 月の光のさす所。夏の夜に咲く純白の大輪を月下美人という。月下香(チュベローズ、オランダ水仙)は夜強い芳香がある。

月夕(げっせき)月が煌々と照っている夜のことで、陰暦8月15日の夜をさすこともある。

月前(げつぜん) 月光が照らしている範囲。他の勢力の前で影が薄くなった存在を月前の星という。

月影(つきかげ) 月または月光のこと。更に月の形、月の姿、あるいは月の光で映るものの影のこと。

月の氷 澄み渡った夜空に冴えた月が氷のように見えることや、月光が水に映って煌く様子をいう。

月の剣/月の眉 三日月の異称。

月の霜/月の雫 月の光が冴えて白いのを霜にたとえて言う言葉。同じように月の雫と言えば露をさす。

月の鏡 月の形を鏡に見立てたもので、満月または晴れ渡った月のこと。

月の真澄鏡(ますかがみ) 月影を映す池の面を澄み切った鏡に例えた言葉。

月の盃(さかずき)弓なりに反った月を盃に見立てていう言葉。

月の船 夜空を海に見立て、月が動いて行く様子を船に例えた言葉。

月に磨く 月の光に照らされ、景色が一段と美しくなること。

月に明かす 月を見ながら夜を明かすこと。

月色(げっしょく)月の光または月の色のこと。同じように月の光をさすものに月気(げっき)がある。

月の顔 月または月の光のこと。

月輪(げつりん)月の異称。月の形が丸く輪のように見えるところから言う。

月魄(げっぱく) 月または月の精や神をさす。

月暈(つきかさ) 月の周囲に見える光の輪のこと。

夕月(ゆうづき) 夕方の月のこと。

掩蔽(えんぺい)/星食(せいしょく) 月が恒星や惑星の前を通って隠す現象。

黄昏月 黄昏時に西の空にかかる細い月のこと。

宵月 宵の間に見える月のこと。また宵の間だけ月のある夜のことを宵月夜という。

朧月(おぼろづき) 春の宵などの仄かに霞んだ月のこと。その夜のことを朧夜または朧月夜という。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3009 岩戸句会 8月

2023年09月10日 | 

伊豆山の花火に鎮魂手を合わす   伊豆山人

盆の月初島照らす灯台か       〃

  

夕散歩追尾執拗アオマツムシ    豊狂

夏の夕破れ幟と仕舞屋と       〃

 

猛暑日の真夜中に聞く蝉時雨    流水 

寝苦しき闇を切り裂く救急車     〃 

 

かくれ湯へ長き廊下や虫の宿    吟

邯鄲や答え待つかに間を置いて   〃

 

雲散って空の青さや夏薊      黒薔薇       

小川路きらきら泡ふく沢蟹     〃

                         

静けさを奏でる小川赤とんぼ    信天翁

秋立ちてせせらぎの音風の音     〃

 

遠ざかる昭和夾竹桃の白      紅

連山の青き嶺々雲の峰       〃

 

小ヤモリが葉っぱの裏で雨宿り   ことり

夏休みこのひとときは陶芸家    〃

     

ボンベ引きずり共に夏生きる    余白

疎開先蝉の鳴く声父の森       〃

 

縁の糸ただ一心に墓洗う      心

今生を惜しみて鳴ける秋の蝉    〃

     

赤とんぼ廃墟に沈む夕富嶽     吠沖

こころのなかあちこち迷走夏颱風  〃

 

七夕や湯気立ちの釜銀河菓子    翠風

七夕や満天の星朝茶事       〃

 

休み窯空のこころにちちろ鳴く   釣船

原爆忌・敗戦日・盆・無為徒食    〃

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3008 暮の秋チーズが好きになりました  釣舟

2023年09月07日 | 

 60年前10歳の頃、生まれて初めてチーズを食べさせらた。多分、雪印のプロセスチーズ。第一印象は、臭くて不味いと思った。父は、太平洋戦争の軍隊帰りで非常に厳しかったし、私がチーズ嫌い、と分かれば、毎日食べさせられたのです。ところが2,3年後のある時、突然「あれ、このチーズ旨いな」と思ったのです。

 私はこの経験から導いた結論は「どんなに不味いものでも、食べ続ければ美味しく感じるようになる。何故ならば、必ず誰かが美味しいと思って食べているから、誰かによって生産されているのだ」

 子供は、香りの強いもの、例えばニンジン、ピーマン、ホーレンソウ、メロンなどが嫌いなようである。しかし継続的に我慢して食べることによって、クサヤ、鮒ずしなどどんなに臭くて不味いと思っていたものが、美味しいと思うようになり、好きになっていったのである。今では、父の様々な食以外の強要についても、大いに感謝している。

ムクゲ(木槿)、(宗旦木槿、底紅木槿とも)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3004   風鈴に一茶の蠅を吊るしけり  釣舟

2023年08月06日 | 

  風鈴の起源は、中国から僧侶が持ち帰ったものが青銅製の大きな「風鐸」であり、ガランガランという鈍い音には厄除けの意味があったらしい。その後小型化した風鈴にも呪術的な意味もあった、という。風鈴は、法然が「ふうれい」と名付けたことに由来すると言われている。

 風鈴は、おわん型の「本体」を糸で吊るし、内側に鳴らすための「舌(ぜつ)」を吊るし、風を受ける「短冊」を吊るす。構造的には3つの部品と糸の4つである。その短冊にどんな俳句を書こうか、と俳を作る私は考えた。

 風鈴の俳句としては「くろがねの秋の風鈴鳴りにけり 蛇笏」を思い出すが、風鈴の句はふさわしくないだろう。

「やれ打つな蠅が手をすり足をする 一茶」

「閑さや岩にしみ入る蝉の声 芭蕉」

「滝の上に水現れて落ちにけり 夜半」

とっさに思いついた夏の句を3句。上げ出したら切りがないのでこれ以上やめておくが、この中では、やはり一茶の蠅が面白いかなと、私は思った。あなたならどんな俳句を選びますか。

風鈴ではないが、風によって鳴るチャイム

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3001  492回 岩戸句会  6月

2023年07月06日 | 

藪からしジパングに日は沈みゆく   吟

人なげやりなカラスの声よ梅雨深し  〃

 

ふるさとや弾む語らい柿の花     信天翁

噴水のしぶきに踊る子等の群     〃

  

鉢巻の折り目正しき夏祭り      豊狂  

新調の法被肩張る夏祭        〃

    

歓声や田植えの子らの汗眩し     心 

紫陽花や叱ってくれる師のありて   〃

     

完璧は叶わぬ齢胡瓜もむ       紅

たおやかに宙に伸びゆく立葵     〃

 

わさび田の蛍眺むる父の日に     流水

新緑に精気賜り深呼吸        〃

 

梅雨晴れ間汐風野点母上に      翠風

海上のお日様金魚となりにけり    〃

 

紫陽花が活けて活けてとせっつくの  コトリ

床柱大山蓮華佇みぬ         〃

 

時の日や数字を持たぬ時計草     伊豆山人

父の日に父想う家に父は亡し     〃

 

雨上がり雲間にきらら梅雨の月    黒薔薇

帯の蝶々が華やぐ祭かな       〃

  

喧噪は海へと沈む祭り後       吠冲

裏庭に舞いとぶ蛍二つ三つ      〃

     

雨の中ミミズ這い出しどこに行く   余白

初孫を胸前に抱き藤の花       〃

 

風鈴に一茶の蠅を吊るしをり      釣舟

サービスの五月雨洗車してをりぬ    〃

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2978  深秋や耐心とだけ亡母の文  おぼこ

2022年11月28日 | 

(しんしゅうや たいしんとだけ ははのふみ)

 冬がそこまで来ている晩秋の頃、外では木枯が吹き枯葉が舞っている。既に家族も寝入ったのであろう。ようやく一人の時間が訪れた。久し振りに押し入れから文箱を出し、蓋を開ける。亡き母の歳に近づいた作者。結婚したての作者に宛てた亡き母の手紙を開く。唯々娘の幸せを願う母の手紙を読む。何度も何度も読んだのであろう。涙の染みがあるかもしれない。

そこには、「耐心」としか書かれていない。

 「耐心」を広辞苑で調べると、載っていない。つまり、あくまで中国語のようである。辛抱強さ、根気良さをいうらしい。よく私達が使う「忍耐」に意味が近いと思うが、「耐心」の方がはるかに優れた言葉だ。

日本に「耐心」という言葉が定着しなかった理由を問いたい。

 

キチジョウソウ(吉祥草)、キチジョウラン(吉祥蘭)、カンノウソウ(観音草)とも

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2977   第314回 10月 岩戸句会  

2022年11月22日 | 

ワグネルと白茶のかほり秋うらら   吠沖 

村神様ぽっちゃり気味の菊人形

 

山脈が包むくらしや秋の暮      さくら

道草の子らは物知りバッタ追う

 

労いのことば互いに十三夜      おぼこ

深秋や耐心とだけ亡母の文

  

倒れたるかかしに案山子指を差す   流水

振り向けば道の向こうに秋の声

 

赤とんぼくるくる頭まわしおり    ルパン

廃校は三年後とか霜降りる

    

波しぶき白く躍りて秋の川      信天翁

友来たり栗飯炊きて和む夕

 

漆黒の毛髪曼荼羅冷まじや      マープル

黒子のように同居の蜘蛛いる十三夜 

 

この富士は北斎ブルー秋の暮     吟

大花野仔犬も我も内弁慶

 

帯祭り富士の笠雲秋の暮       翠風

秋風蓬莱橋天女渡り

 

順天に病も駅伝も任せとけ      伊豆山人

蘭の花背伸びしながら秋をゆく

 

十三夜家族のみ知る隠し鍵      蠍

主なき庭に届けり十三夜

 

夜半の秋古書洋楽美酒少し      黒薔薇  

老し蝶日のあるうちに静かに舞う

 

秋祭り笛と太鼓に神宿る       淡泊

ハナミズキ実も葉も染めて日が暮れる

 

メロンパン臍曲がり屋の十三夜    豊狂

悪筆を個性と自慢豆名月

 

末っ子も古希を過ぎたり芋を掘る   釣舟

試し呑む今年の梅酒十三夜

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2976  道草の子らは物知りバッタ追う  さくら

2022年11月21日 | 

 新型コロナの影響で、ステイホームや家庭学習が増える中、年代別子供用図鑑がバカ売れしているという。動物、昆虫、魚、恐竜、地球、宇宙、星座、飼育栽培、多肉植物など多種多様である。ほとんどにDVDが付いている。場所を取らない電子書籍版もあるから至れり尽くせりである。

 図鑑に嵌った子供たちは、大人顔負けの知識を持ち、親などはとてもついて行けないという。そういう豆博士の中から、将来の動物博士や宇宙工学博士が、きっと生まれるに違いない。

 さてこの句、作者のお孫さんだろうか。学校からなかなか帰って来ないと思ったら、最近昆虫図鑑に嵌っていて、野原で昆虫採集に駆け回っていたのかもしれない。きっとすこやかに育っているのだ。

トウガラシ(唐辛子)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2795  ワグネルと白茶のかほり秋うらら 吠沖  

2022年11月18日 | 

 ワグネルを調べて驚いた。➀ドイツの作曲家ワーグナー由来の男性四部合唱 ➁慶応大学ワグネルソサイエティ男声合唱団 ③明治時代初期に日本の大学で教え、大きな足跡を残したドイツ人教授。それ以外に ➃プーチンの私兵、民間軍事会社ワグネルがあったのだ。この句の作者のワグネルが、まさかプーチン由来ではなかろう。

 中国茶を分類すると、緑茶、白茶、黄茶、青茶(ウーロン)、紅茶、黒茶(プーアール)に別れる。その中で唯一白茶は、自然乾燥させ揉まないまま火を入れる。従って、淹れる際には耐熱ガラスに湯を入れ、茶葉が揺れ動くのを楽しむという。茶葉の色は、白色、翡翠色、青緑色である。

 さて、ソファーに寄りかかって、ワーグナーのドイツ男声合唱を聞きながら、白茶の熱々中国を楽しみ、秋のうらら日本を楽しむ、実に風流なほんわか作者である。

食用菊

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする