俳句を詠うのは自然・私・家族・夢や希望・社会など。読む時はどんな解釈が浮かぶか読み手の経験や生活によって様々
ふる里の駄菓子屋も消え鰯雲 凛
身の軽き茶髪の庭師冬構 〃
冬構始まる脚立運ぶより 冬華
新之助てふ新米を白粥に 〃
サッチモをバーボンで聴く寒夜かな 仁
うとましや時雨の夜の腰の骨 〃
冬構伊豆の山々セピア色 豊狂
朝時雨ゴミ出し男背丸し 〃
〃
畑道の草寝そべりて冬ぬくし 信天翁
冬ぬくし身動き軽き昼下がり 〃
老集う居酒屋ムード囲炉裏端 淡白
大松の枯れ葉重なりゴザ模様 〃
奥付の横に旧姓一葉忌 紅
残菊や畝の隅っこに括られし 〃
もの言えぬ犬の涙や山眠る コトリ
榛の実をクシュクシュ踏んで山路かな 〃
初霜のたよりを聞けば冬構 みやび
あと五分ふとんをかぶりしがみつく 〃
立冬に夏日を記すエルニーニョ 伊豆山人
酉の市熊手にサイフが届かない 〃
花八ツ手死にゆく犬の眼に泪 釣舟
亡骸に土を掛けゆく寒さかな 〃
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ミサイルが着弾します四月馬鹿 ルパン
ピンポーン竹の子二本届きけり
雨に打たれ広がってゆく桜草 流水
雨やどり目玉で会釈雨蛙 〃
風光るサッカー少年の大リュック マープル
かくれんぼの鬼残される落花の中
風光るダンプの前のミニバイク 豊狂
風光る稚児舞簪揺らめきし
春眠や深度三百のシーラカンス 吠沖
新緑や山も心ももふもふに 〃
気を付けて「ね」に心こめ花の宵 蠍
大丈夫元気になるよしょうぶ咲く
春眠や待合室の老男女 心
句碑に名を刻みし母や桃の花 〃
蒼天へ自由奔放花ミモザ さくら
ヨチヨチがパパ振り払って青き踏む 〃
空をゆくひとかたまりの花吹雪 黒薔薇
ジャンプして陽炎に紛れこむ
イベントの疲れ回復菖蒲の湯 淡白
さえずりに見上げた先のツバメかな
桃の花童女になりし叔母卒寿 吟
嫁ぐ娘と最後の散歩桃咲く日 〃
清明や野道の光りひねもすを 信天翁
鳴く鳥の姿隠して若葉舞う 〃
年一のタラの芽サクッと揚がりけり コトリ
釣りたての鯵を捌くや桃の花 〃
春暁や太陽女神訪れて 翠風
トンネルの向こうで待ってる桃の花 〃
昭和の日世界和せない令和かな 伊豆山人
味噌汁にふかみどりなるワカメかな 〃
今という時間はゼロや風光る 釣舟
空海忌モーター廻す蓄電池 〃
風やわらさあ春蘭を探しましょう 蠍
カステラをぶ厚く切りて花見せん
ものの芽や地底のマグマ母として 吟
春風も軽トラックに積み込んで
ものの芽や乳呑み児胸に若きパパ 豊狂
木の芽雨榾木艶めく夕間暮
山椒の芽またひとりめぐり雨の朝 吠沖
人影なきかあごめかごめ夕桜
花の色常なる日々は奇跡なり コトリ
春満月犬と私の長い影
白木蓮午後五時という昏さにも さくら
蒼蒼と田老産なる和布かな
芽吹くときかすかな吐息あるような おぼこ
つなぐ手に笑顔に花の散り止まず
ものの芽や子等の足音聴いており 心
フリージア一輪挿しが窮屈に
歩かない老犬抱いて桜見る マープル
踏切に鳴り出す鉦や夕桜
花吹雪笑顔のイカスラガーマン ルパン
啓蟄や花壇の手入れいたしおり
ふらここや私心もゆーらゆら 黒薔薇
ものの芽やほぐれほぐれて大和魂
ボタン押すバスの車内にバラが咲く 淡白
思い出は卒業日でのボタン取り
春疾風袴のすそも祝ひ舞 流水
春雨も思い出となる卒業式
雄叫びのWBCや花も満ち 信天翁
花咲くを風の間に間に川の音
春の夢なつかしき人に出会う旅 伊豆山人
ウグイスがベランダに来て声ならし
枝垂梅酔心宴に誘われて 翠風
枝垂梅ライトアップに円舞曲
青き踏む百人一首諳んじつ 釣舟
春雷や欹つ耳の二二ンが四
踏みしめる土の弾力ふきのとう 蠍
手のひらに豆腐切る朝春隣 〃
春立てり波の潮目に吹く風に 吟
あんぱんのおへその上の桜かな 〃
カツカツと春風を行くハイヒール 心
春めくや貧乏ゆすり見せており
料峭や幕府黒松魚付林 マープル
屋台の枘コツンと嵌める梅三分 〃
真夜中に氷柱は牙を研ぐらしい さくら
生国はどの辺ですか山の独活
しほらしき薄氷なすがまま光り 黒薔薇
ぽつんと人影小路に余寒かな
一羽来て一羽出て行く巣箱かな 伊豆山人
陽の当たるベンチをえらぶ梅見処
マフラー巻くリボン結びのお地蔵さん 豊狂
春時雨日曜朝のヴィヴァルディー
梅咲いた秒針コトリと動いた ルパン
定置網後光差しけり春の湾
春がすみピンクに染めて綿菓子に 吠冲
マスクとれいいえ私は花粉症 〃
早春の馬込百坂風の音 淡泊
早春の池上梅園老夫婦 〃
冬桜友美しく身罷れり おぼこ
夫を看るそれも幸せ春隣
春寒の静かなる海眺めつつ コトリ
満開のマンサク見上げ背伸びする
梅咲かば香りほどけて鳥の声 信天翁
春の雪窓辺に踊り過ぎ行きぬ
春麗富士の笠雲追いかけて 翠風
青空と河津桜の朝湯舟
春浅き吹く風の色空の色 流水
吹く風に背を向けて行く浅き春
その喧嘩櫟が買った春一番 釣舟
そろそろと高足蜘蛛の春動く
初鏡たしかにこれは祖母の顔 吟
ひょうきんな綽名のまゝの初便り 〃
冬の月泣かないための赤ワイン 黒薔薇
大寒や真っ赤なビーツスープ美味
初詣明るい方へ歩き出す コトリ
食べないの寒の山雀餌隠す 〃
戻らざる遠くの人も冬ごもり さくら
雑煮椀具は串刺しが博多流 〃
熱燗をグっと飲み干し出す答え 流水
雪嶺の朝日をかえす赤き富士 〃
寒椿美しきまま落ちまする おぼこ
老人が老犬を引く冬の坂
寒雀枯萱足場ぶらんこに 豊狂
餅焦がし顔火照すどんど焼
保険証ポインセチアのわきに出す 伊豆山人
松かざり一週間の寿命かな 〃
寒波きし故郷の山凛として 信天翁
夕暮の畑道哀し虎落笛 〃
バルザックの彫像重き黒マント マープル
孫娘より化粧の手解き女正月
冬空に一羽のカラス見張りおり 心
初明りスマホに届くうさぎ年 〃
初出航鴎達追いかけてきた 翠風
朝風呂や河津桜が二輪咲き 〃
八重の香につつまれ迎える初明り 吠冲
双六やまた振り出しで戦前に 〃
ゴミ箱に正月飾り虎の絵馬 ルパン
初日の出大仏様の眼の如し
メモ忘れスーパーうろつく夜寒かな 蠍
一字一句心をこめて寒中見舞
枇杷の花咲いて受粉の手を求む 淡白
銀杏の樹裸に成りて月を載す
山雀の糞の一滴初景色 釣舟
凸凹の沖雲に穴初日の出 〃
テラスで新聞昇りくる尺取虫 蠍
カクテルにストロー二本夏の宿
尺取虫急ぎ足するボンネット 吠冲
ゆあんゆおん蝉時雨の風やハンモック
夏雲とゆらゆら電車語りけり 翠風
桜島噴火尺取り虫避難
片陰の若き鼾や道路工 マープル
食べおえしスイカの皮の化粧水
先行きのことはさておき心天 凛
雨上がる虹を渡っておいでませ
青田風山里暮らしの頬撫でる 豊狂
カタカナの賢治のポエム夏夕焼
さーらりと解く夏帯香わしや 黒薔薇
ウスバカゲロウ羽広げ天使的
朝の道夕べの道も蝉しぐれ 信天翁
帯なして故郷の山夕焼けて
あさがおに直哉の想いのせて観る 船山
走湯山社紋神紋わが家紋
朝顔を数えて今日の始まれり おぼこ
叱咤激励手つなぎ散歩夏の夕
生ビールプリプリ蛸に誘われて 心
「意気地なし」昭和の歌謡酷暑かな 〃
紫蘇湯掻く酢とお見合いで赤くなり 流水
冷酒や烏賊はあぶって裂いて喰い 〃
着る気なく捨てる気もなく藍浴衣 さくら
忍び入るバネ仕掛けめく尺取虫 〃
夏の夢二万年後の哺乳類 ルパン
蝉時雨仏とけ仏とけ五三八さん
白南風の波高なりて小舟舞う 歩智男
熱海では知らぬ人なしジャカランタ
赤トンボ命受け継ぎ悠々と 淡泊
どぜう喰いに出れば仲見世供養雨
閑けさや内耳に止まぬニイニイ蝉 釣舟
碧空に遊びて戻る土瓶割 〃
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遠き日の破滅派いずこ桜桃忌 鯨児
十薬に梔子の香庭の面
畑道を雲低くして梅雨半ば イヨ
雨止みてせせらぎ音頭蛍舞う 〃
納涼やしたたかに凛と咲く花よ 洋子
大粒の雨がきそうよカンナ咲く
梅雨晴間月星日の出光りけり 黄玉
道をしへ仙厳園の観音岩 〃
手擦る蠅兵器産業見本市 炎火
紫陽花やビルエバンスの前頭葉
かの笑顔置き六月の風となり 沙会
今年又ここで紫陽花待ってます 〃
紫陽花や変わりゆく夫いとおしむ 稱子
合歓の花夫の笑顔のあればいい
暁闇の静寂を開く杜鵑 豊春
蛍火の残像追ひし子等の声
風鈴屋色とりどりの風を呼ぶ 薪
夜盗虫朝のベランダ動悸打つ
安曇野の風に吹かれて納涼かな まり乎
神田川橋まん中の夕納涼
ノーメイク日傘とマスクで楽々 一煌
白夜光黒ビールとグラスひとつ
街路樹にビワ実りても手も出さず 余白
ゴミ拾い高齢男女の麦茶かな
青嵐青年の眼の真っ直ぐに さくら
変わりしは我かも知れぬ四葩かな 〃
新茶汲む祖母いますかに真っ先に 凛
鎌倉も北鎌倉も七変化 〃
十薬や一輪挿しを絵手紙に 光子
河骨やぶれない姿勢受け継いで 〃
無人駅足音まばら夏に入る 鞠
滴りや升麻に出会う箱根路よ 〃
泣き崩れおり涅槃図の蛇百足 雲水
雉鳩の声のくぐもる夕涼み
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ヒメジョオン(姫女苑)
久かたの七尾の今朝の新樹道 凛
囀りやエリちゃんカズちゃんトモコちゃん
春眠や目覚めよ畑が待っている 洋子
秘めやかに山にとけこむ藤の花
光風や手から離れし赤風船 鯨児
今宵も雨ながめせしまの小町の忌
薄氷に時流れゆく青き空 一煌
相模湾大きすぎたる春の月
ゾヨゾヨと覗いてるよな空豆の花 さくら
街並の朧々の小糠雨
ミニスカの足の白さや春の果 豊春
目の前を過ぎる燕の白き腹
寒戻る真白き峰と青空と 沙会
主なき家跡に散る桜かな
ぶり返す寒さしのぐや中華そば 余白
街路樹と庭木の花の鑑賞会
こでまりや右へ左へ遊ぶ風 光子
れんげ草花かんむりのお姫様
箱根山楚々としている豆桜 鞠
釈迦堂も摩崖仏にも花まつり
夕ぐれて行く春慕う風の音 イヨ
常ならば山のあること春霞
囀りや透き通った海に献茶 黄玉
東寺や夜桜心に光りけり
クリームパンとろりと割れば春の果 薪
二分の一カットキャベツの薹立ちぬ
ロキソニン腰に四枚山笑う 炎火
往く春にハービーマンはいかが哉
海胆割って潮で洗ってスプーン 雲水
いつもの林道ふらふら歩き春惜しむ
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コマツヨイグサ(小待宵草)
ホワイトデー駅階段を急ぎ足 光子
クシャクシャが目クシャ鼻クシャ春来たる
珈琲の膨満雪崩注意報 さくら
彼岸桜見知らぬ人と立ち止まり
蓮華田や湿りて遊ぶ少女らは 薪
葦の角大気吸い込む鯉の口
木の芽風鉢植え椿名札消え 豊春
ため口のナースの肩へ朧月
揺するなら陽のある時に春鯰 鯨児
春愁ひ茶殻を撒きてひと掃きし
さようなら握る手強き春の雨 沙会
泣きべそが袴姿で卒業す
いくつもの雲をくぐりて鳥帰る 凛
カーテンにワルツのやうな春の風
オードリーヘップバーンや春の夢 炎火
ミサイルに吹っ飛ばされた花見かな
鳥集う彼岸桜へ夕陽射し イヨ
一日ごと色増すつぼみ桜かな
春の海日の出を迎え万物流転 黄玉
初音とも一日始まりワクワクす
春光となり翡翠の番翔く 雲水
巣籠りや春子の無垢の白き襞
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オオアラセイトウ(別名 諸葛菜、紫花菜、花大根)
翁逝く春耕の鍬壁に立つ 豊春
辻地蔵毛糸マフラー布マスク
ザリザリと我先潰す霜柱 さくら
白菜をメリメリと割り厨事
大福の中の苺の薄あかり 凛
目覚めゆく大海原に風光る
タンポポのソーラーパネル発電所 炎火
枯れた草枯れない草もありにけり
丸窓から「おばんです」と春満月 鯨児
ひらひらと朽ちゆく国に春の雪
春の海密状態の魚元気 鞠
お籠りの三回接種春寒し
あれやこれ話半分狸汁 沙会
黄砂舞ふ世界の果ての果てまでも
逢えました二夜続いて春の夢 光子
風光る伊豆稲取の吊るし雛
春めくや若いつもりの服を買う 稱子
まんさくや義父に感謝をして足りず
紅白の梅てんでんに膨らみし 裕
梅仰ぎ犬の散歩は千歳川
梢揺るさえずる小鳥東風の波 イヨ
静かなる巷の夕を春の雨
春立つと龍頭雲に乗り日の出 黄玉
佳2➀春の月レースドレスを着て踊り
独り居に息吹いただく蕗の薹 洋子
春隣海見入るだけの旅気分
単身赴任の赤鬼戻り豆撒けり 薪
霊山の馬酔木の蕾蠢けり
冬日ざし山王草堂野良の猫 余白
凍て路に足を取られて空を見た
二月尽何か切らんと刃物研ぐ 雲水
焚火からこの世に戻る半ひねり
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ウメ(梅)
寒林や生きとしもののある気配 稱子
湯たんぽを赤児のように抱いて寝る
遠火事や放火魂疼く夜 鯨児
寒月や道行く人を石に変え
玄関の乱れし靴や去年今年 豊春
仄赤き雲の広がる寒の空
精悍な風貌となり成人日 さくら
駅なかにピアノ響くや寒に入る
雪の夜は踏切の音高くして イヨ
初雪やただ深々と夕の闇
冬花火果てたる闇に孤りをり 凛
雪の日の三千院が好きと君
冬の海月光の道佇まふ 黄玉
満月臘梅寄り添って漣
夫婦にも雑煮の味は郷の色 裕
福寿草箱根七里を駆け抜けて
初泣きは親と娘の卒業式 沙会
書初めは行雲流水と決めにけり
初詣最強守り一つ買う 鞠
早春や古希の祝いの昼の茶事
福寿草ぷいとよそ向く犬の鼻 薪
チーズフォンデュ泡立ちねばる女正月
初雪や紅茶に一匙ナポレオン 洋子
女正月男交じえずいと楽し
スマートフォン操る子の香筆はじめ 炎火
大発会オミクロン株大暴騰
おでん食べ身も心も通い合う 余白
雪だるま汚れ欠けてもおかしけり
猛襲のコロナ六波や小正月 光子
どんど焼き灰かき分けて柚子参上
大寒や野鳥の皿に湯を満たす 雲水
空腹を水で満たすや寒の犬
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薪ストーブ令和新撰組屯所 炎火
ドラキュラも溶けゆくさだめ霜柱
年用意思ひも染みる筑前煮 さくら
ロングブーツ女性車輛の闊歩かな
下駄箱の木製列車冬日向 豊春
冬ざれや茶箪笥飾る志野徳利
大晦日余白の多き手帳かな 光子
一人居のチャチャチャのチャッと大掃除
蓑虫や庭の手入れに切りをつけ 洋子
野ぼたんや毎日咲きて毎日かなし
クリスマス何度聴いてもあきぬ歌 凛
数え日や仕上げを急ぐ合唱団
残照の破片むさぼる鴨の河 薪
数え日を搦め綿菓子太らせる
犬死にも英霊となれり開戦忌 鯨児
風一陣茜の波や冬夕焼
家中の時計の針や年惜しむ 裕
数へ日や隣人もまた無精髭
よく売れるパン屋の横のみかん小屋 鞠
数え日の切腹最中でお茶事かな
朝日浴びふくら雀となりにけり 歩智
カレンダー最後の一枚寂し気に
短日や日の出一分遅くなり パピ
冬花火輝き沸き上がる拍手
玉柘植にイルミネーション聖夜かな 余白
文士村柿熟してももぎ手なし
数え日の踊りおさめのタンゴかな 稱子
嫁入りの包丁健在のっぺ汁
数え日や思わぬ奇跡が起きにけり 黄玉
数え日や満天星と流星
冬ざるる地震竜巻地の果ても 沙会
夕映の冬山紅葉拝みをり
数え日を残し射したる朝日かな イヨ
さざんかの花道続くを風去りぬ
黄を増して日に日に柚子の輝けり 雲水
朝焼けや霜にまみれし青菜摘む
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初雪や窯の余熱はこころにも 雲水
つわぶきや戻らぬ人を見送りて 洋子
冬耕の男しだいに土の中
日向ぼこコロッケ色の猫も来て 凛
色褪せぬ赤い糸あり時雨傘 〃
五十年世のこと忘れ浮寝鳥 鯨児
野山の色それを肴に入り日酒
冬の海めぐみちゃんとその母のこと さくら
冬うらら少女の声の男の子 〃
冬めくや逢初橋を通るたび 裕
鳴き上手熱海湾にも浜千鳥 〃
どうしても三辺余る炬燵かな 光子
一斉に軽きステップ木の葉雨 〃
山寺の梢にぶらり烏瓜 イ ヨ
あたたかの十一月や深呼吸 〃
沈む日の光集めて木の葉雨 沙 会
マフラーも包みおほせぬ想いかな 〃
虹色の夕日海注す冬初め 鞠
初冬の朝焼けの中小舟引く 〃
秋の海瑠璃色映る極楽よ 黄 玉
幸せに涙が滲む木の葉雨 〃
錦秋や山に浮き立つ崖の家 豊春
秋深し校舎裏より細き声
サンドウィッチの鋭三角形天高し 薪
牛糞乾く野原飛び交う秋の蝶
黒板の小枯しの音消し残る 炎火
竹ぼうき細みとなりぬ木の葉雨
お重詰め招福おせち愛犬用 パピ
二人では広すぎる家毛糸編む
ガーリックバター馥郁小春パン 雲 水
百三十七億年や神の旅 〃
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飲むほどに肴は焼いた唐辛子 沙会
唐辛子舌をちゞめて蕎麦啜る
荒畑にメタリックの艶唐辛子 豊春
秋夕焼おさげ姉妹のランドセル
秋風や開いた烏賊の洗い張り 炎火
エンディングはGの音の法師蝉
針のせてちょっとマイルス灯親し 鯨児
夢の瀬に小さき物音小鳥くる
曼珠沙華一糸一滴輝けり 黄玉
露草と蜜蜂を撮る私がいる
暮れのこる南蛮辛子馬籠宿 薪
鎮魂の海仄白き無月かな
満月に吸い上げられて逝きし人 洋子
味噌汁を深く味わう秋の朝
新涼や朝の広場の太極拳 凛
あのことは無駄じゃなかった唐辛子
ピーヒョロロ二羽で呼び交ふ秋の海 パピ
金秋やイルカのようにパラリアン
灯火あり草の中から虫の声 歩智
天国と地獄同時の唐辛子
地図にない小径に高き葛の花 さくら
保線区の鉄塔点検秋暑し
丁寧な草刈り後や彼岸花 光子
夜なべする昭和の母の背中かな
朝獲りの今宵に刻む唐辛子 イヨ
故郷の段々畑曼殊沙華
大島のぼやけて見える敬老日 裕
唐辛子立ち喰蕎麦に山と盛る
天高し凱風快晴今日の富士 貴美
逢えなくて月仰ぐ今日は仲秋
コロナ中魔除けで飾る唐辛子 鞠
秋海棠銀の露玉ちりばめて
天からも地からも降れり虫しぐれ 雲水
焼酎の氷コロンと良夜かな
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タムラソウ(田村草)
校庭のタイヤの遊具やんま来る 薪
白内障術後きらきら夕の虹
夢覚めて独りの闇や鉦叩 凛
還らざるものを想いて星仰ぐ
枝豆に少々という塩加減 さくら
汗散らし突き上げガッツポーズかな
蟋蟀や積んどく本とキイボード 豊春
吾子の如犬抱く男ちちろ鳴く
鬼灯の豊かな実り店先に イヨ
夕暮の鐘の音遠し盂蘭盆会
指先に心を込めて大根播く 洋子
ねじれても寄り添っている水引草
蝉しぐれ少し黙ってくれないか 裕
降るような秋蝉に耳盗まれて
立秋や女は南へ男は西 鯨児
猫じゃらしくすぐったくて逃げる雲
雨上がり月の匂ひの晩夏かな 沙会
夏が過ぎ風清かなる夕の暮
バラバラ事件の被害者あぶら蝉 炎火
八月や今や先制攻撃論
誰彼と話したくなる鰯雲 光子
無花果を見つけ迷わずレジかごへ
僧侶の棚経もなく盆過ぎる 鞠
涼月のすべて浄化を願いけり
海の風純白の百合届けたい 黄玉
全力のクロウリハムシと初対話
ガラス戸を拭き秋空も磨きけり 歩智
ビルの間に橋架け進むインパルス
夏の犬首に氷のう乳母車 パピ
川端に早一輪の彼岸花
邯鄲をはらからとして余りあり 雲水
落蝉の細かな波紋止みにけり
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コバギボウシ(小葉擬宝珠)