一韶の俳句ブログ

俳句を詠うのは自然・私・家族・夢や希望・社会など。読む時はどんな解釈が浮かぶか読み手の経験や生活によって様々

2192  腰痛の富士浮びおり霾ぐもり  薪

2021年03月11日 | 投稿

(ようつうの ふじうかびおり よなぐもり)

 俳句には、句を作った人の連想を追っていくという楽しみがある。たとえば今回のお題「春一番」の句に、「髪揺らす」があれば、それは「春一番」から「揺れる髪」を連想したということがわかる。こうした連想にこそ、それぞれの人の感性なるものが垣間見えて興味深い。個人差はあるとはいえ、その連想は「髪揺らす」のように共有されていて、お互い理解しあえる。しかし時々、その理解の許容範囲を超える連想もある。今回は、この「腰痛の富士」がそうであった。腰痛で苦しむ富士山!???であった。しかしこうした句は、解釈するために、逆に無茶苦茶な連想が必要となり、自らの連想能力にとってよい刺激となり、その意味でとても貴重である。前回の「目借時蒟蒻踊る鉄鍋で(歩智)」もそうだった。

 この句の季語「霾ぐもり」は、中国大陸からの黄砂などの影響で曇った状態。たぶん、ここからコロナを連想したと思われる。それで外出ができず巣ごもりが原因で、富士「富んだ士(人)」つまり富裕層が、太ってしまって腰痛になり、富士山のようにドテっと動けない状態になっている。しかしながら腰痛の富裕層は、多くの人が沈む中、動けなくても浮かんでいてなにも問題ない。実際富裕層は、コロナ期でも焼け太りで、逆に資産を増やし続けているという話である。一見イミフ(意味不明)ながら、世相をあてこすった素晴らしい作品である(鯨児)

ヤシャブシ(夜叉五倍子)

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2191  列島をゆさぶりながら春一番    炎火

2021年03月10日 | 

    日本列島は、最大幅300キロ、長さ3500キロに及ぶ。中新世(2300万年前 – 530万年前)にユーラシア大陸と分離して日本海が形成され、50万年前に伊豆半島が列島に衝突した。更新世の終わり頃の2万年前に、現在の日本列島が完成した、という。

 又、ユーラシアプレートと北アメリカプレートの2つの大陸プレートの下に太平洋プレートとフィリピン海プレートの2つの海洋プレートが沈み込む運動によって日本列島が形成されたという。プレートの移動は年8~10センチだから、ざっと一万年では一キロメートル、百万年では百キロメートル、という途方もない距離になる。

 死者行方不明者18000人余の東日本大震災から10年経った。三陸では、明治29年の明治三陸地震、昭和8年の昭和三陸地震、昭和35年のチリ地震による津波など、多くの大津波の被害があったにもかかわらず、被害の歴史が役に立たなかった。

 私達に身近な伊豆半島でも、272名の死者を出した昭和5年の北伊豆地震があり、丹奈断層では上下に2.4メートルずれ、北へ2.7メートルも移動した。

 実際、日本列島を揺さぶっているのは、太古から地震である。東京直下地震、東海地震、南海地震が、いつ連動して起きても不思議ではない、と言われているが皆さん意外と無頓着である。

 さてこの句、春一番を目の当たりにしながら作者は、近々起こるかもしれない地震のことを気にしてはいないだろうか。

ホトケノザ(仏の座)

 

 

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2190   蒸蛤とぶっきらぼうな目玉焼き  裕

2021年03月09日 | 

(むしはまぐりと ぶっきらぼうな めだまやき)

 蛤は、春に身がふっくらと肥え、旬を迎える。二枚の貝は、末長い夫婦の縁(えにし)の象徴とされ、婚礼や雛の節句、貝合せなどに用いられる。平安時代には、薬入れとしても使われた。吸物、蒸し物、蛤鍋、焼蛤として食卓に上る。将棋や碁などで使われる「その手は桑名の焼蛤」や西行の「今ぞ知る二見の浦の蛤を貝合はせとておほふなりけり」が有名

 さてこの句、蒸蛤と目玉焼きという取り合わせが、ちぐはぐで可笑しい。一方、この句の目玉は、何と言っても「ぶっきらぼう」だろう。「ぶっきら棒」とは、ぶった切った棒の意から、物の言い方や挙動などに愛想がないことをいう。目玉焼きは、美味しいが愛想のない朝食の定番であり、蒸蛤は、味噌汁や吸い物にも良いが、何と言っても酒の肴に合う。

 貝には、牡蠣、赤貝、帆立、浅利、蜆、バカガイ、色々あるけれど、古来から、やはり蛤が一番上等かもしれない。

サクラソウ(桜草)

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2189   第294回 岩戸句会 3月

2021年03月07日 | 

湯豆腐に鶯まだか問うており    裕

蒸蛤とぶっきらぼうな目玉焼き

 

列島をゆさぶりながら春一番    炎火

春一番オットセイ族蠢きぬ

 

料峭や仄かに草の匂ひあり     さくら

早春賦ハモった頃の若かりき

 

春一番革靴ステッキ濡れ布巾    豊春   

春一番大島初島歪みけり 

 

陽の匂ひ残したままの毛布かな   沙会 

料峭やブランコ一つ揺れもせず

 

歩む季も踵を返す余寒かな     鯨児

冬の果て何やら散るや死の都

   

お互いに生き延びましょう山笑う  稱子

春愁や息でしめらせ眼鏡拭く

 

料峭也窮屈退屈痩我慢       凛

料峭や他人のやうなパスポート

 

門前の沈丁花咲きカラス鳴く    空白

老人臭初めて感じた冬の風呂 

 

窓ガラスぴかぴかにして春が来た  洋子 

草萌えや和菓子抹茶でもてなさん

 

料峭や電車まだ来ぬ無人駅     貴美 

ポリバケツ転がって行く春一番 

 

どこまでも送ってくれる春の月   歩智 

蕨摘むころんでもころんでも

  

風光る水切り石の飛びきりし    薪

封筒に点字ふつふつ梅咲けり

 

取れ立てを鍋一杯にひじき煮る   パピ

光る風長い長い影作り

  

鴉の巣小枝落とすあわてんぼう   一煌

 春一番ドスンと幹騒がしや

   

料峭や電車まだ来ぬ無人駅     貴美 

ポリバケツ転がって行く春一番 

 

だんご喰うずつなしきめて春炬燵  光子

立春や白髪染めたら出かけよう

 

人影のまばらなる街春浅し     イヨ

蕗の薹鼻歌交じりに一つづつ

 

春一番合格絵馬を嘶かす      雲水

探梅や縄文系の黒き髪

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