城下町の武家屋敷、両側に白い土塀が続く一本の細い通りがある。そこの屋敷内に、一本の桐の木がある。
「桐一葉」という季語が成立したのは、紀元前の中国、前漢時代に作られた思想書「淮南子(えなんじ)」の説山訓が由来で、「桐の一葉が落ちるのを見て天下の秋を知ること。衰亡の兆しを感じること」である。明治になって坪内逍遙の戯曲に、新歌舞伎となった「桐一葉」が作られた。家康に滅ぼされた豊臣秀頼の冬の陣直前の大坂城内における物語である。従ってこの句から私は、武家屋敷の静寂と桐一葉による栄枯盛衰を感じたのである。
さて最近は、立冬が過ぎてもなかなか気温が下がらず、秋が短く突然冬が来るという予報がある。気候変動、温暖化が、ひしひしと私達の生活を脅かしている。
ホトトギス(杜鵑草)
「ホトトギスは、花の紫色の斑点の様子を鳥のホトトギス(杜鵑)の胸にある斑点に見立てた」と辞書の解説にあるが、果たして本当にそうであろうか?逆ではないのか?つまり、鳥が先か、草が先か、という問題である。