一韶の俳句ブログ

俳句を詠うのは自然・私・家族・夢や希望・社会など。読む時はどんな解釈が浮かぶか読み手の経験や生活によって様々

2978  深秋や耐心とだけ亡母の文  おぼこ

2022年11月28日 | 

(しんしゅうや たいしんとだけ ははのふみ)

 冬がそこまで来ている晩秋の頃、外では木枯が吹き枯葉が舞っている。既に家族も寝入ったのであろう。ようやく一人の時間が訪れた。久し振りに押し入れから文箱を出し、蓋を開ける。亡き母の歳に近づいた作者。結婚したての作者に宛てた亡き母の手紙を開く。唯々娘の幸せを願う母の手紙を読む。何度も何度も読んだのであろう。涙の染みがあるかもしれない。

そこには、「耐心」としか書かれていない。

 「耐心」を広辞苑で調べると、載っていない。つまり、あくまで中国語のようである。辛抱強さ、根気良さをいうらしい。よく私達が使う「忍耐」に意味が近いと思うが、「耐心」の方がはるかに優れた言葉だ。

日本に「耐心」という言葉が定着しなかった理由を問いたい。

 

キチジョウソウ(吉祥草)、キチジョウラン(吉祥蘭)、カンノウソウ(観音草)とも

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2977   第314回 10月 岩戸句会  

2022年11月22日 | 

ワグネルと白茶のかほり秋うらら   吠沖 

村神様ぽっちゃり気味の菊人形

 

山脈が包むくらしや秋の暮      さくら

道草の子らは物知りバッタ追う

 

労いのことば互いに十三夜      おぼこ

深秋や耐心とだけ亡母の文

  

倒れたるかかしに案山子指を差す   流水

振り向けば道の向こうに秋の声

 

赤とんぼくるくる頭まわしおり    ルパン

廃校は三年後とか霜降りる

    

波しぶき白く躍りて秋の川      信天翁

友来たり栗飯炊きて和む夕

 

漆黒の毛髪曼荼羅冷まじや      マープル

黒子のように同居の蜘蛛いる十三夜 

 

この富士は北斎ブルー秋の暮     吟

大花野仔犬も我も内弁慶

 

帯祭り富士の笠雲秋の暮       翠風

秋風蓬莱橋天女渡り

 

順天に病も駅伝も任せとけ      伊豆山人

蘭の花背伸びしながら秋をゆく

 

十三夜家族のみ知る隠し鍵      蠍

主なき庭に届けり十三夜

 

夜半の秋古書洋楽美酒少し      黒薔薇  

老し蝶日のあるうちに静かに舞う

 

秋祭り笛と太鼓に神宿る       淡泊

ハナミズキ実も葉も染めて日が暮れる

 

メロンパン臍曲がり屋の十三夜    豊狂

悪筆を個性と自慢豆名月

 

末っ子も古希を過ぎたり芋を掘る   釣舟

試し呑む今年の梅酒十三夜

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2976  道草の子らは物知りバッタ追う  さくら

2022年11月21日 | 

 新型コロナの影響で、ステイホームや家庭学習が増える中、年代別子供用図鑑がバカ売れしているという。動物、昆虫、魚、恐竜、地球、宇宙、星座、飼育栽培、多肉植物など多種多様である。ほとんどにDVDが付いている。場所を取らない電子書籍版もあるから至れり尽くせりである。

 図鑑に嵌った子供たちは、大人顔負けの知識を持ち、親などはとてもついて行けないという。そういう豆博士の中から、将来の動物博士や宇宙工学博士が、きっと生まれるに違いない。

 さてこの句、作者のお孫さんだろうか。学校からなかなか帰って来ないと思ったら、最近昆虫図鑑に嵌っていて、野原で昆虫採集に駆け回っていたのかもしれない。きっとすこやかに育っているのだ。

トウガラシ(唐辛子)

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2795  ワグネルと白茶のかほり秋うらら 吠沖  

2022年11月18日 | 

 ワグネルを調べて驚いた。➀ドイツの作曲家ワーグナー由来の男性四部合唱 ➁慶応大学ワグネルソサイエティ男声合唱団 ③明治時代初期に日本の大学で教え、大きな足跡を残したドイツ人教授。それ以外に ➃プーチンの私兵、民間軍事会社ワグネルがあったのだ。この句の作者のワグネルが、まさかプーチン由来ではなかろう。

 中国茶を分類すると、緑茶、白茶、黄茶、青茶(ウーロン)、紅茶、黒茶(プーアール)に別れる。その中で唯一白茶は、自然乾燥させ揉まないまま火を入れる。従って、淹れる際には耐熱ガラスに湯を入れ、茶葉が揺れ動くのを楽しむという。茶葉の色は、白色、翡翠色、青緑色である。

 さて、ソファーに寄りかかって、ワーグナーのドイツ男声合唱を聞きながら、白茶の熱々中国を楽しみ、秋のうらら日本を楽しむ、実に風流なほんわか作者である。

食用菊

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2794  教えて彼岸花練り切りどんな味    翠風

2022年11月17日 | 

 「俳句はひねる」と言われるが、「ひねる」を辞書で調べると、

1 指先でつまんで回す。2 からだの一部をねじって向きを変える。3 ねじって回したり、締めたりして殺す。4 つねる。5 いろいろと悩みながら考えをめぐらす。6 わざと変わった趣向や考案をする。7 苦心して俳句や歌などを作る。8 相手を簡単に負かす。かたづける。9 金銭を紙に包む。

 本来の意味、体の動作「ひねる、つねる、まわす」から派生して、「わざと変わった趣向を考案する」などに変化したのだろう。

という訳でこの句、「彼岸花教えて練り切りどんな味」とするのが普通。つまり、彼岸花が咲いている場所で、誰かに練り切りの味を質問しているのだ。しかし、それではつまらないので、一工夫して、彼岸花に質問した形にひっくり返し、575を崩したところが、この句の味噌なのである。

ススキ(芒、薄)

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