(はるがすみ おきゆくふねの エンジンおん)
立春からひと月近く経った。寒さも峠を越え、梅が見ごろを迎えた。こうなると、大気の水分やPM2.5などの塵が増えて視界がぼやけるのが「霞」である。
気象観測では、視界一キロ未満を「霧」、一キロ以上を「靄」というが、古来強い秋の「霧」に対して、やや弱いのが春の「霞」である。又、昼の「霞」に対して、同じ現象でも夜は「朧」である。
さてこの句、沖ゆく船の見えるか見えないかの曖昧な視覚に対して、エンジン音だけが鮮明に聞こえている。この視覚と聴覚の食い違いが面白い。
白梅