(ひだまりに むしろをひきて うめそふと)
あらためて清野の俳句を眺めていると、熱海に引っ越してからの日々が鮮やかに思い返されます。
一月半ばから熱海桜の開花を待ち、二月は梅見に河津桜、四月は坂井邸のお花見からのタケノコ採り三昧。その他にもワラビ、ニューサマーオレンジ、芝刈り、夏ミカン、梅干しづくり、ビワ、ヤマモモ、天ぷらの会、紅葉ドライブ、サンマの会、干し柿づくり、金柑…。
熱海に来てから、たくさんのお友達ができて、四季折々のイベントを一緒に楽しませていただきました。ここに改めて、皆様に深く御礼申し上げます。
この句は夫婦で湯河原梅園に梅見に行った時のものです。当時、湯河原梅園では、梅見の季節には広場に木のチップを敷き詰めて、むしろではなく畳表を自由に借りられるようになっていました。まだ肌寒い季節ですが、チップと畳表が陽に温められて、とても気持ちが良かったのです。「お弁当作ってな。俺、お稲荷さんがいい!」リクエストの声がよみがえります。デザートは売店の梅ソフト。ちびりちびりと舐めながら、梅の間を散歩しました。思い返すとなんと幸せな日々だったことでしょう。まだまだ続くと思っていたのに、最後まで想像のナナメ上をいく男でした。
妻 清野さおり記
熱くともひとり風呂吹き無声鍋 美部
僕が、この俳句を初めてみたとき、「ふろふき大根」という言葉を知らずに書いてしまいました(笑)。無声鍋と詠むくらいですし、僕が一緒に暮らし始めるまでは、やっぱり寂しかったのかなと思います。僕が熱海に来てからは、毎日お風呂に一緒に入ったりしたことを懐かしく思い出します。もう今では、僕が一人風呂になってしまいましたが、なんだかいつも、一緒に入っていた情景が浮かんできて、誰もいないのに水面が揺れたりしたことがあったりなかったりします。まだまだ寂しいですね。
(合同句集「天岩戸」より 息子 楽聞記)