一韶の俳句ブログ

俳句を詠うのは自然・私・家族・夢や希望・社会など。読む時はどんな解釈が浮かぶか読み手の経験や生活によって様々

2098   世に生まれ世を生き抜きて星流る  海人

2019年09月29日 | 

 「世」とは何かを調べると➀人の生涯➁ある時代③仏教における過去・現在・未来➃俗世間⑤国家、など使用範囲が広くて驚く。138億年前、ビッグバンによって生まれたこの世の宇宙。その中の小さな太陽系の、微塵のような地球で私たちは生きている。

人間の体は、酸素・炭素・水素・窒素などの元素から成り立っている。死んだからといって、それらは減りも増えもしない、形が変わるだけだ。地球の大気圏に突入する隕石も、流れ星となってその命を燃やし尽きるが、人間と同様で、固体から気体へ変化するだけだ。

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2097  テレビの中精進料理秋の中  鞠

2019年09月26日 | 

 「病人のように、外に出られない人は仕方ないけれど、テレビを見て俳句を作るのは、お勧めできない」と、常日頃言っているが、この句は採ってしまった。

 ~の中、~の中、という繰り返しと、隠さずテレビと言っているのが潔いと感じたからだ。ダメと言われているのを、逆手に取ったのだ。脱帽でした。

ヒガンバナ(彼岸花)

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2096  秋蝉のむくろを探す犬の鼻

2019年09月23日 | 

 我が家の犬デンは、いつも腹を空かせている。半年ほど前、犬に詳しい近所の知り合いから、「太り過ぎだ」と言われてしまった。確かに寝そべっていると、胸より腹の方が太かった。勧められるままに、朝晩二度のドッグフードを、2杯から1杯に減らした。そして近頃ようやく、胸より腹がやや小さくなった。

  しかし今度は、犬好き達から、「胃袋が歩いている」と言わしめるほど、腹を空かせている。散歩をすれば、地面に鼻を付けるように歩き、餌を探している。デンの大好物は、生きていても死んでいても第1に蝉である。草むらに鼻を突っ込み、何やら分からないが、その他虫らしきものを食べている。デンは、まもなく9歳になる。人間に例えれば、早60才くらいなのだ。

シロバナヒガンバナ(白花彼岸花)、リコリス

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2095  台風や生涯無二の師匠逝く

2019年09月17日 | 

 私の俳句の師匠・小澤多留男先生がお亡くなりになられた。享年100才であった。先生は、昨年亡くなった1年年下の金子兜太氏と感じがよく似ていて、写真の先生と兜太氏とよく間違われた。

 私にとって、先生は生涯唯一無二の師匠だった。というのも私は、子供の頃からそして今でもであるが、我儘で自己中心的な人間である。従って学校の先生によく怒られたし、よく殴られた。学校は嫌いではなかったが、先生は一人も好きになれなかった。しかし、社会人になり陶芸を始めてから俳句会に誘われ、多留男先生とお会いした。この運命的な出会いから40年。長きに渡り先生の薫陶を受けることができた。この幸運は、私の人生における最大の幸運といって良いだろう。そして今思えば、先生の懐が実に広かったからだろう、と思う。

 多留男先生は、昭和18年陸軍軍医学校を卒業し、若干25才で直ちに中尉の軍医としてビルマ戦線に派遣され、インパール作戦に参加した生き残りである。

 インパール作戦は、『無謀な作戦』『史上最悪の作戦』と言われ、92,000人の兵隊のうち、戦死者26,000人、戦病死者30,000人以上と伝えられている。その戦記は、『回想インパール わが生涯の夏野 小沢太郎』として文芸社から出版している。俳句が随所に載っている名戦記である。

ツリガネニンジン(釣鐘人参)

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2094 台風一過庭埋め尽くす青落葉

2019年09月10日 | 

 一昨日の台風15号は凄かった。熱海では、強風圏に入った夜9時頃から朝3時頃までの6時間が最も強く吹き、実に恐ろしかった。

 関東で、最大瞬間風速57,5mは過去最大。強風による建物被害、農産物被害多数、死者3名。送電の鉄塔倒壊による停電は、千葉県を中心に93万戸。伊豆は、台風の左側(西側)に当たったため、若干被害は少なかった。

 翌日、庭に出てみると、倒木が通路を塞いでいた。山桜が途中から折れていた。これが建物に当たっていたら、と思うとぞっとする。県道も、除雪の時と同様に地元の建設会社のブルドーザーが活躍していた。

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2093  秋の夜白きレースの花ひらく  naomi

2019年09月08日 | 

 昨日の早朝、我が家の雑種犬デンと散歩していると、うごめくものがあった。見つけたデンが、突然走り出したので、つい紐を離してしまった。その動物は、瓜坊(猪の子供)だった。瓜坊は、デンより少し小さい柴犬ほどの大きさの猪だった。デンが尻に噛み付いたので、ウリボウは豚のようにキーキー鳴いた。しかしデンは、噛み付いて離さなかった。それどころか、次第に頭部向かって五、六回噛み直し、とうとう頭を噛んだ。その時、頭蓋骨がボキボキ折れる音がした。即死だった。

  さて、この句の花は、間違いなく「カラスウリ(烏瓜)の花」だろう。あんな繊細な糸のレースを花びらに巡らせるのは、烏瓜の他にはない。朝にはしぼんでしまうので、深夜懐中電灯をつけて探しに行く。

クズ(葛)

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2092  衛兵の頬に一筋汗の跡      海人

2019年09月07日 | 

 衛兵とは、警備・取り締まり・監視の任務についている兵、近衛兵などのこと。宮殿の門の前で直立不動している兵士。前句とは真逆の、自由とはかけ離れたことを、平気でできる多くの人間が、この世に存在しているのだ。例えば、突然背中が痒くなったり、頬を蚊や蚋に刺されたりしても、絶対に直立不動を崩さない。

 ナポレオンの数千人の軍隊は、間近に砲弾が落ちても、絶対に隊列を崩さなかったらしい。人間は、自分の任務を自覚すると、自覚させられると、洗脳させられると、死さえ恐れなくなるらしい。

 日本の官僚たちも同様で、安倍首相に忖度し、公文書を改ざんしたり消去したり、それを隠蔽するために、究極担当者が自殺したんだから大したものである。

アべリア

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2091  夏休み自由の刑に処せられる   炎火

2019年09月06日 | 

 夏の海辺の超高級ホテルで、日がな毎日飽きずに、ボーっと景色を眺めたり、読書をしたりできる人が、本当の大金持ちや貴族である。椅子に座ってボーイを呼び、冷たいカクテルを注文する。夜は、同じ人種とパーティを開く。そんな生活に、貧乏人は退屈して我慢できないのだ。

 結局人々は、自由より束縛を望む。そうでなければ、不平不満を言いながらも、寿司詰めの満員電車に乗って毎日会社に通えるはずがない。

 俳句の五七五という定型は、明らかに束縛である。しかし、現今の俳句ブームを見れば、結局私たちは束縛の中の小さな自由に満足しているのであろう。

 

キョウチクトウ(夾竹桃)

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2090  通販のカタログ厚き残暑かな   洋子

2019年09月05日 | 

 電話帳で調べてくるのだろう、知らない会社から、様々なカタログが送られてくる。陶芸用品はもとより、事務用品、屋内外の作業用品、衣料、電気製品などである。A4サイズの厚さが四センチもあるカタログは、二千ページはあってずっしり重い。しかし既に、それは時代遅れなのだ。

 今では、分厚いカタログはインターネットに載せられ、パソコンやスマホで見ることができるようになった。アマゾンというアメリカ企業に、日本は乗っ取られつつあるが、誰も疑問に思わないらしい。

タマアジサイ(玉紫陽花)

 

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2089  線香花火呟くように落ちにけり  薪

2019年09月04日 | 

 

 俳句で「花火」といえば、大空に舞う大花火を指す。最近、その花火大会が中止の浮き目に会っているという。観客のマナーの悪さ、警備費のかかり過ぎ、安全を確保できない、などの理由である。熱海のように、年十数回もやる集客目的の花火大会もある。

さて一方、私達が店で買ってきて庭で遊ぶのは、「手花火」という。手花火には色々あるが、代表は何といっても「線香花火」だろう、と思う。しかし、夜の闇を昼間のように明るくしてしまった現在では、地味過ぎて今後見捨てられる運命にあるのかもしれない。

 この句のように、線香花火がぶつぶつと誰にも分からないように呟きながら、この世から消えていくような気がするのは、私の考え過ぎだろうか。

 線香花火が呟くのは、落ちる時というより、その前の火花が散っている時、という海人さんの解釈は、全くその通りであるが、かと言って、この句が揺らぐわけではない。

カラスウリ(烏瓜)雌花

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2088  第276回 岩戸句会 8月

2019年09月03日 | 岩戸句会

線香花火呟くように落ちにけり   薪

昭和家族の真ん中にいた大西瓜

 

通販のカタログ厚し残暑かな    洋子

大夕立人も犬も走る走る

 

夏休み自由の刑に処せられる    炎火     

無宗教のはずの俺が墓洗う

 

衛兵の頬に一筋汗の跡       海人

一杯で止せば良いのに酔芙蓉 

 

炎帝やマスクマスカラ背にリュック 豊春

墓洗う父母の面影薄れゆく

  

風鈴の音色賛否の人模様      余白

蟻がいるアチラコチラに心にも

 

妹の美人薄命墓洗う        稱子

人っ子一人居らぬ公園蝉しぐれ

 

檜扇や老人ばかりの内科医院    雲水

乗っていたドローンタクシー昼寝覚め 

  

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2087  駅前の手湯に湯のなき残暑かな

2019年09月02日 | 

  先日、湯河原駅に行ったが、手湯に湯がなかった。足湯は以前から知っていたが、手湯を見たのは初めてだ。真夏は湯を入れないのだろうか。

  1年前、湯河原駅の駅前改修工事が完成した。新国立競技場で知られる隈研吾デザインの、屋根が新しくなり有料駐車場が数台増えただけで、タクシーやバス乗り場は、ほとんど同じ。噂では、6億円もかかったという。噂が本当ならば、大いなる無駄遣いである。

オトコエシ(男郎花)

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