一韶の俳句ブログ

俳句を詠うのは自然・私・家族・夢や希望・社会など。読む時はどんな解釈が浮かぶか読み手の経験や生活によって様々

690  蟋蟀の初音文月の十三夜

2012年08月31日 | 

(こおろぎのはつね ふづきのじゅうさんや)

 二,三日前から、トップバッター、キリギリスが鳴き出した。当然だが、虫にも鳴き出すのが早いのと遅いのがある。今日は、ツヅレサセコオロギとカンタンも鳴き出した。これらは、窓から聞こえる。

 そこで昨夜10時ごろ、旧暦文月(七月)の十三夜でもあったし、快晴で風もないので、近隣を散策することにした。すると更に、エンマコオロギとヤブキリも鳴いているのを発見、いや発聞or初耳。二匹の犬も、闇の中を音もなく走り回っている。

 これからしばらく私には、秋の夜の虫の音の楽しみが続く。但し、虫の種類は非常に多く、聞いている声が本当に名前の通りの虫なのか自信はない。

それにしても、明日はどんな虫の初音に出会うのだろう。

カサブランカ(ユリ科の多年生球根)

日本(琉球)原産のユリから改良されたオリエンタル・ハイブリッドと呼ばれるユリの品種の代表

確かに山百合(下の写真)の模様がないだけだ

 

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689  虫一つ闇夜の底の底に啼く   遊石

2012年08月30日 | 

 この句は、実体が希薄だから、現実的な想像がしにくい。例えば虫は、どんな虫だろうか。底の底とは、一体どんな所だろうか。

 曖昧だからであろうか、私は、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」の中の地獄を想像してしまった。闇は、地獄に落ちた罪人が犇めく血の海地獄である。罪人たちは、疲れ果てて声を出す気力もない中で、一人わめいているのが犍陀多(けんだた)である。句の実体が希薄だからこそ、こういう非現実な想像がしやすくなるのだろう。

 そして「底の底」という繰り返しによって、作者の憂鬱な悲観的な気分からこの句が生まれたであろうことも、容易に想像される。

キバナコスモス(キク科コスモス属の 多年草または一年草)

 

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688  浪江町の野生化の豚蝉時雨   炎火

2012年08月29日 | 

 

 福島の原発事故により放置され、野生化した豚や犬、猫などの動物たちは、一体どのような末路になるのだろうか。

 起きてはならない事故が起きてしまったのだから、唯放置するのではなく、それぞれの個体を識別し、万一のための放射能汚染の研究対象にするべきではないか。

セミなどの昆虫を含むあらゆる動植物も、同じように研究対象になるはずだ。

 地中深くに潜んでいて、放射能汚染を免れたセミたちの蝉時雨。しかし今年生まれる彼らの子孫は、強く影響を受けるだろう。

何故なら、山野は全く除染されていないからだ。

エラチオール ベゴニア

 

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687  2012年 8月 岩戸句会 

2012年08月28日 | 岩戸句会

波の音にうたた寝せんや砂日傘    洋子

苧殻焚くひと刷毛の雲流れゆく

 

口中に味無きガムや蝉の羽化     薪

海原やカーソルのごと白帆立つ

 

浪江町野性化の豚蝉しぐれ      炎火

立葵大きな雲の下に海 

 

豊穣の稲のうねりや風走る      鼓夢

人絶えし高原の駅秋茜

 

虫一つ闇夜の底の底に啼く      遊石

流れ星君が微笑の一刹那

 

秋の虹明治の色の赤煉瓦       章子

稲妻に万丈の闇あばかるる

 

切っ先のような月ある夕べかな    稱子

撫子や年取ることは屁でもなし

 

捨てられた串に群がり蟻生きる    空白

炎昼や説明つかぬ一瞬の静

 

酔っぱらいと猫と豚に月下美人    雲水

撫子や一家揃って深夜族

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686  口中に味なきガムや蝉の羽化   薪

2012年08月27日 | 

(こうちゅうに あじなきガムや せみのうか)

  蝉は7年間幼虫として地中に生き、最後の7日を地上に出て成虫として生殖活動をして死ぬ。その最後の7日間を、栄光として肯定的にとるか、憐れな末路と否定的にとるか。

 この作者は、どうやら否定的にとったようである。実質的に羽化した蝉はわずか7日ほどの命である。なんという短さ、なんという儚さ、可哀そう、という訳なのだろう。

 しかし、例えばアメリカ中部に生息する17年蝉(←クリックすると、映像が見られます)は、17年置きに大発生し、その数は数億匹という。

足の踏み場もないくらい、一斉に羽化する情景を実際に見たら、か弱い人は失神するかもしれません。可哀そうなどと悠長なことは、きっと言ってられませんよ。

シラヤマギク(白山菊)キク科シオン属

別名ムコナ(婿菜)

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685  苧殻焚く一刷毛の雲流れゆく  洋子

2012年08月26日 | 

(おがらたく ひとはけのくも ながれゆく)

 苧殻は、皮をはいだ麻の茎。盂蘭盆会(うらぼんえ)の門火(かどび)を焚くときに用いられる。麻殻とも言う。

 この句の、苧殻を焚いているのは、たぶん送り火である。下五が「雲流れ来る」なら迎え火、「雲流れゆく」なら送り火、とするのが自然な解釈だろう。 

 つまりこの句の「苧殻焚く」は、お盆の全ての行事が終わり、先祖や身内の御霊をお送りする最後の行事の送り火をしているのだ。

先祖や親しかった身内の御霊が、一刷毛の雲となって帰ってゆくのであり、それを安堵して見送っているのだ。

ダイコンソウ(大根草)  バラ科ダイコンソウ属

 

 

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684  酔っぱらいと猫と豚にも月下美人

2012年08月25日 | 

 昔の話だが、友人から「月下美人が今夜開きそうだから、見に来ないか」という誘いがあった。ゲッカビジン(月下美人、英名: Dutchmans pipe cactus、A Queen of the Night)とはメキシコの熱帯雨林地帯を原産地とするサボテン科クジャクサボテン属の常緑多肉植物。大正頃、日本に持ち込まれたそうである。

 洋物の花には、さほど興味はないのだが、酒と食事付きだし、一度くらいは見ておいて損はないだろう、という軽い気持ちで訪ねることにした。他にも知り合いの客が2人いて、宴会が始まった。ところが、肝心の花が開き始めたのが10時頃、開き終わったのは深夜1時頃だった。

 待つ間に、私はついつい飲み過ぎて、結局ソファーで仮眠となり、時々起こしてもらう仕儀に。素面(しらふ)ならいざ知らず、私のような酒に弱い酔っぱらいには、月下美人の芳香も美しさも、全く無意味だったのである。

足長蜂の巣も仲間が増えて立派になってきた

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683  阪神と残暑何とかならへんか  廣太郎

2012年08月24日 | 

 近年、「巨人・大鵬・卵焼き」の関東の「巨人」が低迷して視聴率が下がり、野球放送そのものが減ってしまった。関西の阪神も同じで、人気にあぐらをかいているうちに、MLBやサッカーなどに客を取られている。だから、「阪神も巨人も、なんともならへんのや」

 黒船来航以来、日本はアメリカに手なずけられ、なめられ、良いようにあしらわれている。才能のある優秀な人材が、アメリカに出てゆく。野球にしても、同じことが言える。巨人、阪神うんぬんの問題ではないのだ。

 しかし、阪神には救世主が現れた。「大阪維新の会・橋下徹」である。次期衆議院選挙で、台風の目になるだろう。だから、そう期待する私の気分としたら、巨人や阪神などではなく

日本と残暑何とかならへんか

オトギリソウ(弟切草) オトギリソウ科/属名:オトギリソウ属
生薬名:小連翹(しょうれんぎょう)

 

 

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682  倫敦からとんぼ返りや赤とんぼ

2012年08月23日 | 

(ロンドンから とんぼがえりや あかとんぼ)

 先日、友人がロンドンに出張で行って来たそうで、チョコレートをいただいた。彼は、熱海から新幹線通勤している、たぶんエリート社員である。

 「仕事でロンドンなんて羨ましいなあ。勿論オリンピックは見ただろうね」

 「どんでもない、オリンピックどころか、観光も一切せずのとんぼ返りだよ。海外出張では、昔は結構遊べたんだけどね。今は全く時間的余裕がないんだ」

 「なるほど、経済効率を求めるから、エリート社員と言えども大変だねえ」

 「時差ボケも治らないのに、帰った次の日に会議だからね。海外出張なんて少しもいいことないよ」

 「・・・・・・・・」

ヒオウギ(檜扇)  アヤメ科アヤメ属の多年草

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681  うつぶせの顔のつぶれて夏の果   浩子

2012年08月22日 | 

(うつぶせの かおのつぶれて なつのはて)

  夏の終わりを「夏の果」という。この頃、ようやく涼しくなって朝晩の寝苦しさから解放され、熟睡できるようになった。

 この句の「顔のつぶれて」というのが、実に面白い。この句の主人公が誰かを考えると、作者が女性だから、子供か夫ではないだろうか。まさか作者自身のことではあるまい。作者であるとすると・・・・想像するのは止めておこう。

 畳などの固いものにうつ伏せに寝れば、模様が顔に型押しされ、つぶれたようになる。だから、酔っ払って畳にうつ伏せで寝ていた、ざんばら髪の亭主が最もふさわしいだろう。

富士山(十国峠より)

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680  本当は捨てられしやと墓洗ふ   眸

2012年08月21日 | 

  「夫23回忌」と前書きのあるこの句、確かに20余年も経つと、夫への思いや感情は変わってくるだろう。問題は、「捨てられしや」と思うようになるその前は、どう思っていたのだろう、ということ。

  何歳くらいだったか、事故か病気か、闘病生活の長さなどによっても、死者に対する思いは様々なはずで、作者にしか分からない。

  あえて想像すれば、妻子を残して先に逝かざるをえない夫は、無念を抱えていたのかもしれない。つまり、愛された記憶、又は愛されていたという確証が、20余年の時間の経過と共に、次第に薄れていったのではないか。

  「全くしょうがない人ねえ。あなた、あの世で遊び呆けているんじゃないの」などと呟きながら、悲しみも可笑しさに変わり、達観の境地に辿り着いたとも言えるだろう。

クサギ(臭木)  シソ科 落葉小高木

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679  ゐのししの暴れたる墓洗ひけり  雅樹

2012年08月20日 | 

「墓参り、墓洗う」は、正月、春秋の彼岸、故人の命日など一年中行われるが、特にお盆の墓参りを指して、秋の季語になっている。

さて、98回でも書いたが、昨夜の我が家で、しきりと吠える犬を外に出したが、いつまでも庭で吠えていた。私には分からないが、きっと何か動物がいるのだろう。

と翌朝、調べてみると案の定、入口付近の土がひっくり返されていた。イノシシに間違いない。庭の中まで侵入しなかったのは、たぶん犬のお陰である。

以前、セコムのセールスマンが勧誘に来たことがあるが、機器購入の数万円と毎月の数千円がかかるという。それを犬が替わりをしてくれて、かつ1円も請求しないのだから実に有難い。そう考えたら、犬の餌代など安いものだ。モモちゃん、デンちゃん、有難うね。

ノブドウ(野葡萄)  ブドウ科ノブドウ属

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678  20対0で九人の夏終わる  和生

2012年08月19日 | 

 ロンドンオリンピックで、日本は史上初の38個のメダルを獲得したが、国としてもう少しスポーツに予算を使うべきだ、と思う。例えば、1村1品運動のように、市町村が決めたスポーツ施設を作り、青少年を中心にスポーツの底辺を広げることを提案する。

今の日本の青少年の様々な問題を解決するには、スポーツ振興が最も効果的だ。リニアモーターカーや全国高速道路網に巨費を注ぎ込んでも、日本人は良くならない。

 そういう10数兆円の税金を、全国にスポーツ施設を作るのに使い、選手引退後の一流コーチを配置したら、どんなに素晴らしいだろう。青年達の余りあるほどのエネルギーを、戦争に使うとは何という無駄遣いだろうか。

 この句、高校の野球チームのことだろう。20対0で屈辱的に負けたのかもしれないが、野球に賭けた高校生活や、涙が彼らの人生の金字塔になることは間違いない。

ブーゲンビリア(オシロイバナ科ブーゲンビリア属)熱帯性の 低木

和名はイカダカズラ((筏 蔓)

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677  登山家の未踏リストに雲の峰  弘明

2012年08月18日 | 

(とざんかの みとうりすとに くものみね)

 私は、富士山に数回登ったことがあるが、3,000メートルを越えると、どうしても高山病にかかってしまう。登れない訳ではないが、あの息苦しさというか、体のだるさには辟易する。だから、倍の8,000メートル以上のチョモランマなど考えられない世界である。

  ところが、今年の5月に山梨の渡辺玉枝さんが、10年前に続き女性としては最高齢、なんと73歳でチョモランマに登頂した。よほど心肺能力が優れているのだろう。

 さて、昔「雲に乗りたい」という歌があった。しかし、誰も雲に乗ることはできないのだから、登山家にとって、雲の峰(入道雲)は永遠に未踏でもいいのだが、その夢を夢の中で実現したのが、例えば孫悟空であって、絶対にできないことを、いとも簡単に出来るのが小説の世界だから、俳句にだってそういう分野があっても一向に構わない。

だから、一歩踏み込んで、例えば「孫ちゃんの登山リストに雲の峰」と、大奮発してもいいわけだ。

ハナミョウガ(花茗荷) ショウガ科ハナミョウガ属

生薬名:伊豆縮砂(いずしゅくしゃ)、芳香性健胃薬(腹痛・下痢)

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676  左手に聖書右手に蠅叩き   百千草

2012年08月17日 | 

「左手に聖書・右手に剣」という言葉は、キリスト教が平和主義でないことを、証明している。例えば、古くは十字軍の遠征、近代ではベトナム戦争やイラク戦争を見れば分かるように、異教徒を大量殺戮しても平然としているのがキリスト教徒。

 平和主義どころか、好戦的と言った方が良かろう。まあ日本だって、アメリカの核の傘下にいるのだから、同じ穴のムジナに違いないが・・・・

 いづれにしても、キリスト教にしてもイスラム教にしても、国々の政治家が、聖書、経典を全く理解していないことは歴然である。

 だからこの句、剣の代わりに蠅叩きを持っているなんて可愛いもので、キリスト教徒に対する大いなる皮肉の句なのである。

オミナエシ(女郎花 ) 合弁花類オミナエシオミナエシ属 の 多年生植物。

秋の七草の一つ。別名、チメグサ、敗醤(はいしょう)ともいう。

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