一韶の俳句ブログ

俳句を詠うのは自然・私・家族・夢や希望・社会など。読む時はどんな解釈が浮かぶか読み手の経験や生活によって様々

2274  ふんわりと産毛残して巣立ちたり  歩智  

2022年06月14日 | 

(ふんわりと うぶげのこして すだちたり)

  以前私は、野鳥のための巣箱を作った時山雀が入り、その子育てを遠くから見守ったことがある。又、犬柘植など、木を剪定していて巣を発見したこともある。しかし、巣立ったばかりの鳥の巣を驚かしてはいけないと思い、覗いたことは、一度もない。

 さてこの句、産毛を残した動物はなんだろうか。鳥類と考えるのが普通だろうが、毛のある哺乳類なども候補ではある。一応鳥類として考えると、第一候補は燕、二番目は雀、三番目は鴉、つまり私達の身近にいる鳥達である。つまり、こういう俳句が作れるのは、身近に野鳥がいるということだ。

 最近は、巣箱に小型カメラを付けて、パソコンで観察できるようになったらしい。便利になったものだ。

タツナミソウ(立浪草)

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2273  五月雨や熊本城の天守閣  沙会  

2022年06月12日 | 

 この句、作者は「五月雨」「熊本城」「天守閣」という名詞を、助詞の「や」と「の」でつないだだけである。副詞も形容詞も動詞もない。作者の感情や理屈など一切の修飾や説明がない。

 しかし、読み手である我々は、数年前熊本地震があり、熊本城が大きな被害を受け、最近ようやく天守閣の修復が終了したのをニュースで観て知っている。作者が、その復旧した天守閣を仰いで、熊本市民の安堵の気持ちや加藤清正の築いた城の歴史などに思いを馳せたであろうことが、想像されるのである。そして、修理された屋根に、滂沱たる五月雨が降っている。

 6年前の2016年4月、熊本地震が発生した。震度7が1回、6強が2回、6弱が3回。計測震度は、東日本大震災(6,6)を上回り、熊本は(6,7)だった。関連死を含めて273人が亡くなっている。負傷者2800人、避難者18万人。被害額4.6兆円という大災害だった。

 俳句は、短詩であり省略の文学と言われるが、この句のように作者の言わんとすることを具体的な物だけを提示して、読者にその投げかける。これが俳句の原点なのだ。

タツナミソウ(立浪草)

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2272  第309回 岩戸句会   五月 

2022年06月04日 | 

五月雨や熊本城の天守閣         沙会

濃淡の阿蘇の新緑描く筆         〃

 

ふんわりと産毛残して巣立ちたり     歩智

梅雨どきとはいえ昨夜の豪雨かな

  

あじさいやエンディングノート書き直す  洋子

夏みかん唇指もしたたりて 

 

夏空や右折車線は渋滞中         光子

蜥蜴居て一オクターブ上がるキャー    〃

 

鶯もお国訛りや三千院          凛

ガーベラに見つめられてる昼下がり    〃 

 

トマトの輪切りボヘミアガラスの皿    炎火

紫陽花の国道を切る配管工 

 

遠き日の我と行きかふ夕焼雲       さくら

回り道して万緑の中に入る         〃

 

蝶の口出水の後の土を吸う        薪

販売車の弾む音楽万緑へ

 

さえずりに揺れて応える若楓       鯨児〃

麦嵐波涛につるむ風の神 

    

野原でスキップランラン夏来たる     一煌

花間近為朝ユリの息づかい

 

夏の蝶屋根越す毎に裏返る        豊春        

万緑や森に溶け込む石仏         〃

 

静けさの万緑の寺鐘の音         イヨ

穀雨来て野道賑わい風渡る        〃

 

初夏になり鮎川戻り海静か        鞠

一面に蜜柑の花や香水瓶         〃

 

公園の泉水跡に八重桜          余白

妻拝す月下美人に何願う

 

日が暮れて命のかぎり蝉時雨       忠人

雨に濡れ香り色付く牡丹かな       〃

 

万緑や赤傘野点沢求め          黄玉

野薔薇道越えて歓声溢れけり       〃

   

逃げ延びた金魚を売って下さいな     雲水

新茶汲む二煎三煎八雲もち        〃

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