一韶の俳句ブログ

俳句を詠うのは自然・私・家族・夢や希望・社会など。読む時はどんな解釈が浮かぶか読み手の経験や生活によって様々

1661   生きる場はガラスの世界夜香蘭   潤

2016年02月29日 | 

  夜香蘭は、ヒヤシンスのことで、専用の「ヒヤシンスグラス」で水耕栽培される。ヒヤシンスは、地中海東部沿岸からイラン、トルクメニスタン付近の原産。オスマン帝国で栽培され、園芸化され、日本には1863年に渡来したという。

 さてこの句、ヒヤシンスがガラスの器に育てられている、というだけでは面白くも何ともない。「生きる場はガラスの世界」と大上段に掲げたことで、私達日本人の、いやそれどころか、人類の危機感を象徴しているのではないか、と想像されるのである。地震、台風、噴火などの自然災害、温暖化、戦争、テロ、難民、原発、核実験、世界恐慌など様々な生きる不安要素が存在しているからである。

マンサク(金縷梅、満作、万作)

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1660   春落葉得体の知れぬものも掃く   喜久

2016年02月26日 | 

 「得体」とは、僧侶の着ている衣で宗派や格式が分かった「衣体」から来ているらしい。意味は、「物事の本質、真実、正体」「得体が知れぬ」とは、姿が見えていても正体が分からないこと。

 さて作者は、落葉以外にどんなものを掃いたのであろうか。どんな動物であろうか、全く得体が知れない。そう言えば、90回に「落葉焚くきっといろんな虫も焚く」という句があったっけ。

紅梅

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1659   窯焚きの闇に金縷梅蠢けり

2016年02月20日 | 

(かまたきの やみにまんさく うごめけり)

 

唯今、深夜2時過ぎ。1270度±5度で焚いている。山の中に窯焚きの照明の明かりがあり、その中に灼熱の炉があり、薪が燃えている。

過去に、窯焚きに関するどんな句を作っただろうか、と思い並べてみた。以下、16句あった。

 

神主の声朗々と冴え返る

木枯や御饌神酒祀り火入れ窯

窯焚きの帆柱春暁の箒星

窯の火を覗く春泥払ひつつ

新緑を嬲ってをりぬ窯煙

窯焚きの火照り冷ますや京鹿の子

攻め焚きやいつか消えたる蚊遣香

真弓の実窯の煙に巻かれをり

蜩が一番好きなり窯火燃ゆ

窯焚きの煙立たせて憂国忌

初冬の窯赤々と焚かれをり

攻め窯にコレルリ聞かす冬の山

冬の窯積み重なりし方眼紙

夏の窯最後の薪に有難う

窯の火を止め五月雨の世に戻る

梔子や窯の余熱は八百度

 

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1658   神主の声朗々と冴返る

2016年02月18日 | 

 本日AM9:00、穴窯の火入れ式。快晴、気温3度、風なし。1時間焚くと結構体が冷える。PM3時で、窯の中は690度だが、外気温は7度。まだまだ寒い。これから交代ではあるが、3昼夜の寝ずの番の窯焚き。

32年で、90回になった。

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1657   椎茸菌小楢に打って窯を焚く

2016年02月16日 | 

 根元の直径が20センチの小さな小楢の木を伐採して、長さ90センチ、5本の椎茸の榾木を切った。わずかではあるが、毎年やれば自家用ならこれくらいで十分である。市販の椎茸菌は、直径9ミリ長さ20ミリの木に菌を培養してある。榾木にドリルで穴を開け、菌をハンマーで打ち込む。その原木に水を掛けて水分を十分に含ませ、シートに包めば「仮伏せ」の完了。

この冬初めての積雪

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1656   大雨のあとの大虹春一番

2016年02月15日 | 

 この冬は、まだ一度も雪が降らない。降らないどころか、昨日春一番がやって来てしまった。もしも、このまま雪が降らずに春になれば、私の知る限り30数年で初めての珍事である。

一昨夜来、豪雨と強風に見舞われ、気温も20度まで上がったが、それも今日までで、再び寒さが戻って来るらしい。体調管理に気を付けたい。

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1655   建国日もうじき確定申告日

2016年02月12日 | 

  紀元節は、古事記や日本書紀による、日本の初代天皇とされる神武天皇の即位日をもって定めた祭日で、2月11日。これは1873年(明治6年)明治政府によって定められ、紀元節(きげんせつ)と名付けられた。但し、現在の歴史学、考古学では史実ではなく、当時の権力者が作りだした神話だとしている。

  明治政府は、この王政復古の天皇を国の主体とすることによって、新しい日本国を建設しようとした。古墳時代から始まった天皇を主体とする国家が、奈良時代、平安時代、鎌倉幕府、室町幕府、徳川幕府、そして明治・大正・昭和・そして平成の日本政府まで、千数百年に亘り王家が続いたのは、稀有である。

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1654   余寒うろうろ薬缶ちんちん棚を斫る

2016年02月11日 | 

(よかんうろうろ やかんちんちん たなをはつる) 

 灰が解けてガラス化した固まりが、窯で使う棚板に張り付いている。防塵マスクをして、それを鏨(のみ)やハンマーで斫り(はつり)、最後はサンダーで削り取る。

 外仕事は「寒いのなんの」なんて言ったら北国の人に笑われるが、やはり寒い。屋外は寒いが、室内に入れば薪ストーブで暖かい。

窯詰もいよいよ最終段階である。

フキノトウ

 

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1653   童心の笑顔を今も焼芋す

2016年02月09日 | 

 先日、友人夫婦に薪ストーブで焼いた焼き芋をふるまったら、それが美味しいと大喜びでした。早速今日、彼等は八百屋にあった4種類の薩摩芋を持参してやって来た。以下値段の高い順に並べると、

1徳島県産・鳴門金時(里むすめ)(粘質系1本400円)

2石川県産・加賀野菜・五郎島金時(粉質系)

3千葉県産・紅はるか(粘質系)

4千葉県産(粘質系)(4本135円)

確かに、1の鳴門金時が一番美味かった。意外だったのが2番の五郎島金時が粉っぽくて美味しくなかったこと。東京の焼き芋は、1200円するというから、きっと鳴門金時だろう。

 彼ら夫婦はついでに、イタリアに暮らしているお嬢さんが持って来たというオリーブオイルを持って来た。焼き芋に付けて食べたらどうかと言うのだ。食べてみると、辛みのある珍しいオイルだった。・・・・・やはり、バターの方が良い。

 ところで以前、私がふるまった芋は・・・・・どれだったと思います?

 

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1652   暗雲に金の縁取り初日の出   薪

2016年02月08日 | 新年

 新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。旧歴では、今日が元旦。正月又は春節とも言いますね。 

 私のではありませんがこの句、今年一年の世界を象徴したような句です。暗雲に現実を、「金の縁取り」に作者のかすかな希望を感じます。かすかなどではなく、確かな安心の一年になって欲しいのですが・・・・・

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1651   蕗の薹おずおずと「禁薫酒」の碑

2016年02月07日 | 

(ふきのとう おずおずときん くんしゅのひ)

長野県上田市真田町の曹洞宗・真田山・種月院・長谷寺(ちょうこくじ)は、今年から始まった、NHKの大河ドラマ「真田丸」の主人公・真田幸村の祖父幸隆が建立した寺。祖父幸隆・父昌幸など真田家の墓所がある。幸村は大阪夏の陣で打ち取られたため、残念ながら墓地はないが、幸村人気は大したもので、日本各地に供養塔があるという。

 「禁葷酒」とは、「葷酒を禁ず」と読み、酒や葷の匂いをさせて山門を入るべからずという意味で、「葷=くん」とは、韮、葱、大蒜、生姜などの強い香りのするものをいう。

長谷寺の「禁葷酒」の碑

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1650   立春大吉黄鶏大根よく煮えて

2016年02月04日 | 

(りっしゅんだいきち かしわだいこん よくにえて) 

 今年の旧暦の正月は2月8日だから、「年内立春」である。ちなみに、立春以前なら「新年立春」。今日からは、どんなに寒くても「余寒」「冴返る」「春寒」「残る寒さ」などと使う私の友人に、年賀状を旧暦で呉れる方がいる。必ず、「立春大吉」と書いてある。

 さて、「黄鶏・かしわ」は、黄色の和鶏の肉のことで、柏の葉の色に似ていることから、そう呼ばれるようになったそうである。関西でよく使われる。

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1649   熱燗の二本で遊ぶ江戸の街     鼓夢

2016年02月03日 | 

 江戸時代は、慶長8年(1603年)に徳川家康が征夷大将軍に任命されて江戸に幕府を樹立してから、慶応4年(1868年)に江戸城が明治政府軍に明け渡されるまでの265年間を指す。徳川時代とも言う。「江戸時代は、電気やガス、水道、車などがなかったから、未熟な社会だった」などと思ったら大間違いである。

 現在の地球は、産業革命以後に発明された大量生産、大量消費の物質文明によって、地球の温暖化や核戦争など人類滅亡の脅威が迫っているが、この地球を救う様々な知恵が、実は江戸時代にはぎっしり詰まっているのだ。

 

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1648   第233回 1月 岩戸句会  

2016年02月02日 | 岩戸句会

海女小屋に海女の声無し北風吹く  海人    

潔く白菜十字に切られおり

   

熱燗の二本で遊ぶ江戸の街     鼓夢

都鳥問えど滔々隅田川

 

暗雲に金の縁取り初日の出     薪

山葵田を浄めゆく水去年今年

 

賀詞交す皆よそゆきの声をして   洋子

紅梅を指で引き寄せ口づけす

 

薄氷満天の星封じけり       豊春

うすらひの底に不屈の草芽かな

 

茶を点てる雪見障子の夕明り    稱子

穏やかな日々あれば良し福寿草

 

雪見酒すぐ花見酒月見酒      炎火

大吉と中吉の孫初詣

 

枯芝を雪と見まごう寒の望     歩智

小正月残りものあり粥を炊く

 

寒椿望月入りて日の出かな     余白

空晴れて枇杷の花咲く馬込かな

 

再会に目が物を言う冬帽子     章子

雪見酒独りと思ひ苦笑い

 

見逃してしまう薄さの初氷     雲水

目白に蜜柑切って俎始かな

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1647   海女小屋に海女の声なし北風吹く   海人

2016年02月01日 | 

(あまごやに あまのこえなし ならいふく) 

  明治から昭和にかけて、三重県志摩地方の海女は全国各地の磯へ出稼ぎに行ったという。出稼ぎ先は、紀州、土佐、九州、伊豆、羽後(越後、山形)、北海道(利尻)など。この句の作者によると、真鶴の海女も元は志摩地方の海女が居ついて、現在に至っているという。

 さて、北風は、「ならい」とも言い、関東で吹く北寄りの風をいう漁師言葉。北風が吹けば、海が荒れて漁に出られない。今日の海女小屋には誰もいないようだ。

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