一韶の俳句ブログ

俳句を詠うのは自然・私・家族・夢や希望・社会など。読む時はどんな解釈が浮かぶか読み手の経験や生活によって様々

2230   夢覚めて独りの闇や鉦叩  凛

2021年09月12日 | 

フランスの歌手ジョルジュ・ムスタキに「私の孤独」というシャンソンがある。詩を要約すると、

「私には、孤独という恋人がいる。彼女は、いつも僕のそばにいて離れることがない。ベッドに寄り添う彼女と仲良くすべきか、抵抗すべきか、悩んだ時もある。僕に新しい恋人ができても、彼女は決してめげずについてくる。だから、私が死を迎えるとき、きっと最後の伴侶になるだろう」

 人は、母の胎内から独りで生まれてくる。そして、両親・兄弟・姉妹・師匠・友人、伴侶、子と家庭を営み、社会生活を営む。そして、究極独りで死んで行くのだ「そんなことは、誰でも知っている」と人は言うだろう

 しかし、人は決して独りではない。寄り添う親友は鉦叩きかもしれないし、恋人は野菊や枝豆かもしれない。伴侶は雨や風や月かもしれない。五感をもって心を開けば、無数の友達がいることを発見するだろう。

キョウチクトウ(夾竹桃)

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2229  うつくしや野分のあとのたうがらし  蕪村

2021年09月07日 | 

 この句は、野分(台風)の過ぎた後の荒れた畑に、真っ赤に色づいた唐辛子がいつもより美しく見えた、という意味であるが、安永五年(一七七六年)蕪村が六十才の頃の句である。蕪村は、還暦を過ぎてからどんどん詩情が豊かになり、絵画や俳句にみずみずしさが増していったという。江戸時代の傑出した俳人と言えば、芭蕉、蕪村、一茶がいるが、彼らの個性の相違は、江戸時代の豊かさを象徴している。

 森本哲郎の「月は東に―蕪村の夢 漱石の幻」によると、「草枕」は、蕪村の絵画と俳句に惹かれた漱石が、それを小説化したものだ、と言っている。主人公の画家は蕪村自身に違いない、と断定している。

 漱石は草枕の中で、非人情の世界、つまり自然界の山川草木に感動する興趣、感興を美として絵画や俳句に表現したのが、蕪村だった、と言っているのである。

 これと同じ意味が、「花鳥諷詠」で、歳時記は時候、天文、生活、植物、動物などに分類されているが、多くの感動が言葉になり季語となったと言えるのではないだろうか。

カラスウリ(烏瓜)

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2228   校庭のタイヤの遊具やんま来る   薪

2021年09月05日 | 

 校庭に、使い終わった廃棄処分のタイヤがある。タイヤを並べて地面に半分埋めて、子供たちが跳ぶもの。タイヤをぶら下げて、乗ったり穴をくぐったりするもの。チューブに空気を入れたら浮き輪になる。

 ギザギザイボイボで心円の人工的なタイヤに、トンボが止まる。人間界と自然界、人間のいとなみと動物のいとなみの対比に思いが至る。、

 地球に人類が生まれなかったら、どんな世界が広がっていただろうか。産業革命以後、人間は科学の発展と資本主義の元、自然を破壊しつつ便利さや快適さを追求して、様々なものを作り続けた。人間の工場生産した物のほとんどは、究極ゴミを作っているのと同じである。

 CO2排出によって地球温暖化が進み、砂漠化による森林火災がある一方、多雨による洪水が多発している。人類は、着実に破滅に向っているような気がする。

クズ(葛)・秋の七草の一つ

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2227   第300回 岩戸句会 8月

2021年09月03日 | 岩戸句会

校庭のタイヤの遊具やんま来る    薪

白内障術後きらきら夕の虹 

     

夢覚めて独りの闇や鉦叩       凛

還らざるものを想いて星仰ぐ

 

枝豆に少々という塩加減      さくら

汗散らし突き上げガッツポーズかな

 

蟋蟀や積んどく本とキイボード   豊春

吾子の如犬抱く男ちちろ鳴く 

        

鬼灯の豊かな実り店先に      イヨ

夕暮の鐘の音遠し盂蘭盆会

 

指先に心を込めて大根播く     洋子         

ねじれても寄り添っている水引草   

 

蝉しぐれ少し黙ってくれないか    裕

降るような秋蝉に耳盗まれて

 

立秋や女は南へ男は西        鯨児

猫じゃらしくすぐったくて逃げる雲

     

雨上がり月の匂ひの晩夏かな     沙会

夏が過ぎ風清かなる夕の暮   

 

バラバラ事件の被害者あぶら蝉   炎火

八月や今や先制攻撃論

 

誰彼と話したくなる鰯雲       光子

無花果を見つけ迷わずレジかごへ

 

僧侶の棚経もなく盆過ぎる      鞠

涼月のすべて浄化を願いけり

 

海の風純白の百合届けたい      黄玉

全力のクロウリハムシと初対話

 

ガラス戸を拭き秋空も磨きけり   歩智 

ビルの間に橋架け進むインパルス 

  

夏の犬首に氷のう乳母車      パピ

川端に早一輪の彼岸花

   

邯鄲をはらからとして余りあり   雲水

落蝉の細かな波紋止みにけり

コバギボウシ(小葉擬宝珠)

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