一韶の俳句ブログ

俳句を詠うのは自然・私・家族・夢や希望・社会など。読む時はどんな解釈が浮かぶか読み手の経験や生活によって様々

1263 折り返すバス耿々と蛍の夜   薪

2014年06月30日 | 

(おりかえす バスこうこうと ほたるのよ)

 湯河原町の千歳川に沿って奥湯河原に向かう途中、オレンジラインとの合流する所に、バスの折り返し点がある。そこは又、天然の蛍が飛び交う所でもある。付近に住宅はなく、通る車のヘッドライトがたまに光るだけで、蛍の鑑賞に適している。

 蛍のように、発光する動物や植物は、まれにある。その不思議さに私たち人間は驚く。しかし、人間は火を発見し、ロウソク、ガス灯、白熱灯、蛍光灯、LEDと光源を作り出してきた。しかし、この句のバスが、耿々と輝くのを、作者は決して喜んではいない、と私は思う。

アカメガシワ(雌花)

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1262   風鈴と洗い晒しの軍手かな   炎火

2014年06月29日 | 

 風鈴と軍手が軒先にぶら下がっている。ただそれだけのことだ。何が面白いのか、という御仁もおられるだろう。

 平和を象徴するような風鈴と、本来は戦争で使われる軍手との取り合わせ。しかしよく思い起してみると、確かニュースで「風鈴がうるさい」と隣から言われて喧嘩になった、というのを聞いたことがある。つまり今の日本では、風鈴をぶら下げる方が危険なのである。

ガクアジサイ(額紫陽花)

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1261   片白草茗荷を増やし薪を割る

2014年06月28日 | 

我が家の庭は、ほったらかしが基本である。だから、ひ弱な草木は、植えても消滅してしまう。そんな中、梅雨空の下で元気なのが、ハンゲショウ(半夏生・半化粧)とミョウガ(茗荷)である。

 百合なんかも丈夫だから植えたいが、すぐイノシシにやられてしまう。近頃は、イノシシが日参して土をほじくり返している。実に困ったものである。

ハンゲショウ(片白草とも)

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1260   ふたありで夏至の城址をめぐりけり   悠

2014年06月27日 | 

 漢字の「二人で」を、ひらがなで「ふたありで」と書いただけで、なんとなく意味ありげに思えるから不思議。取って付けただけの「夏至の城址」も「めぐりけり」も陳腐だが、「ふたありで」が実に面白い。

 「彼とお忍びの逢引をしたのよ。あなたにだけは教えてあげる。でもね、絶対内緒よ。」と,ひそひそ言われているような気がする。「勝手にしろ!」

エゴノキ

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1259   病葉や『アルゼンチンは泣かないで』    律子

2014年06月26日 | 

『アルゼンチンよ、泣かないで』(Don't Cry for Me Argentina) は、アンドルー・ロイド・ウェバー作曲、ティム・ライス作詞による1978年のミュージカル『エビータ』の中で最も有名な楽曲。

 イギリスで初演される前、ジュリー・コーヴィントンのシングルは、1977年に全英シングルチャートの1位となり、英国内だけでほぼ100万枚が販売された、という。

 さて、季語に、歌曲、小説などの名前を付けただけの俳句は時々見かける。安易さは免れないが、作者の人生にとって重要なものであったろう。但しこの句の場合、「なんで病葉を持ってきたの」と問うてみたい。

キンシバイ(金糸梅)

 

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1258   梅雨滂沱岬に千の父眠る 文則  

2014年06月25日 | 

(つゆぼうだ みさきにせんの ちちねむる)

6月23日は、沖縄県が制定している「慰霊の日」であった。糸満市の沖縄戦跡国定公園には、犠牲者24万人の名前が石碑に刻まれているという。

 この句の岬とは、日本全国にある太平洋戦争の犠牲者の慰霊塔の一つであろうか。海に面した小さな村でも、千人もの戦死者がいて、作者のお父さんもその一人なのかもしれない。

 さて、「集団的自衛権」なるものを、阿部政権が成立させようとしているようだが、「国民を守るための戦争」などあってはならない。

カシワバアジサイ

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1257   嘘っぽい誠ホテルの蛍かな  雄二

2014年06月24日 | 

  昔、あるホテルで、「蛍と料理の集い」なる催しがあっって参加したことがある。蛍は、業者が養殖した蛍とカワニナを、ホテルが購入して池に放流したものだ。この句の「嘘っぽい誠」とは、都会のホテルの循環式の池に、いるはずのない蛍が演出によって飛んでいる。そんなことを言っているのだろう。

 天然と養殖・・・・・蛍に限らずよく考えてみれば、農業も養殖だし、肉も養殖だ。魚も嘘っぽい養殖が増えている。

ビヨウヤナギ(未央柳)

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1256   ブラジルは昼夜真逆や明易し

2014年06月23日 | 

  前回の南アフリカ大会では、初戦1-0でカメルーンに勝ち、オランダに0-1で負けたものの、デンマークに3-1で勝って、2勝1敗でベスト16に。

今回は、1分け1敗でコロンビアに勝たねば、もう後がない・・・・、前回以上に期待が大きかっただけに・・・・・ショボン・・・・・

 コートジボワール戦

勝つはずの試合に負けて明易し

ギリシャ戦

勝てそうな試合を分けて明易し

コロンビア戦

勝つ予感全くなくて明易し

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1255   若竹のふれ合ふ音の空にあり   智恵子

2014年06月22日 | 

 筍(たけのこ)が成長して竹になるわけだが、どのようにして竹になってゆくのか。先端が尖った筍の状態から、どのように枝葉を伸ばすのか。

 調べてみると、筍が皮を全て脱ぎ捨てた瞬間から竹になるそうである。孟宗竹の場合、先端の高さは既に7~8メートルあって、なかなか観察が難しい。だから、基本的な疑問として

どこまでが筍かどこからが竹

筍がいつのまにやら若竹に

ということになる。

今年は熊笹と箱根竹を観察してみよう、と思ってよく見たら、早すべて竹になっていた。

ヒメシャラ(姫沙羅)

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1254   ためらはず毛虫を踏めり増女   順子

2014年06月21日 | 

「増女・ぞうおんな」とは、能に使われる面で、創作した増阿彌にちなんで名付けられた。気高く神聖なイメージの女性で、神や仏の相の面になっている。従って使用される曲目も『熊野』『江口』などで、その主人公が女神・天女・神仙女等に用いられるそうである。

 さてこの句では、毛虫を踏み殺したのは「増女」だという。そこで私が気になるのは、この「増女」は、作者自身かそれとも第三者か、ということである。

 いづれにしても、とんでもなく面白い解釈が成り立つはずだ。それは、あなたの想像にお任せしたい。

スイカズラ(忍冬)

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1253   夏の風邪若干太めの看護師さん   さくら

2014年06月20日 | 

 暑さのために食欲が落ちるのが「夏痩せ」。反対に、冷房などを使って快適に暮らすと「夏太り」になりやすい。近年は日本でも、「夏太り」が増えているようです。

 さて最近、看護する人を、男女の別なく「看護師」と呼ぶようですが、女を「看護婦」男を「看護師」と呼ぶべきではないでしょうか。「差別しない、平等に」と考えるのは結構なことですが、行き過ぎると実に不便です。

ムラサキシキブ

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1252   讃仏の諸堂のしんと青葉雨   貞次

2014年06月19日 | 

 「讃仏偈」とは、仏を讃嘆する偈(うた)の意味であるが、この「仏」は、「世自在王仏」である。かつて阿弥陀如来が法蔵菩薩であったとき、世自在王仏のもとに弟子入りしてその功徳を讃嘆し、このような優れた仏のもとで修行してならぶもののない浄土を作り上げようと誓われたもの、だそうである。浄土真宗でよく唱えられるお経で、「仏説無量寿経」の中の一部

 さて、この句に諸堂とあるが、どこの寺だろう。もしかすると、京都の龍谷山本願寺(西本願寺、浄土真宗本願寺派)や、真宗本廟(東本願寺、真宗大谷派)かもしれない。

ネジバナ(捩花)ラン科

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1251   サングラス深き樹海の色を買う   喜久

2014年06月18日 | 

「樹海」とは、海のように広大な森林のことであるが、富士の樹海である青木ヶ原樹海を指すことが多い。富士山頂から眺めると、木々が風になびく様子が海原でうねる波のように見えることから「樹海」と名付けられたという。青木ヶ原樹海は、自殺の名所でもある。

 さて、この句の作者は、樹海の色を選んだというが、樹海の色とは緑である。緑のサングラスなど見たことがないので調べてみると、確かにサンプルがあった。緑と一口に言っても、明るい黄緑から暗い緑まで幅が広すぎて捉えどころがない。

 作者は一体何故、例えに「樹海」を持って来たのか。それはやはり「自殺」であろう。縁起でもないから、これ以上書くことは止めておくが、推測はまだまだ続きそうである。

シロツメクサ(白詰草)

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1250   注いでよと言わんばかりにビール注ぐ

2014年06月17日 | 

 先日の窯出しパーティーで、私のグラスにやたらとワインを注ぐ女性がいた。 本当は、彼女は自分のグラスにワインを注ぎたいのだが、隣の私のグラスが減っているので、序でに注いでくれたのだと思う。

 注がれた私は、当然彼女のグラスが空なのに気付くから、私が返注することになる。有難迷惑に感じるのは、彼女の飲むピッチが私より速いからだ。

ユキノシタ(雪ノ下)

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1249   睦言を聞いてをるなり蚊遣豚   貴子

2014年06月16日 | 

「睦言(むつごと)」とは、男女が仲よく語り合うことではあるが、特に,寝室での語らいを言う。この句の作者は睦言を聞いていると言うが、当事者ではないような、他所事の表現になっている。

実際は、男の睦言を女がうさん臭く聞いているのだろうし、目は蚊遣豚に向いている。だから、男にとっての睦言が、女にとっては睦言ではないらしいのが可笑しいし、「蚊遣豚」が可笑しさを更に倍増している。

シラタマウツギ(白玉空木)

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