一韶の俳句ブログ

俳句を詠うのは自然・私・家族・夢や希望・社会など。読む時はどんな解釈が浮かぶか読み手の経験や生活によって様々

989  女房と同じ香水買い与え  遊石

2013年07月31日 | 

 不倫ドラマのような俳句である。浮気相手が女房と同じ香水を使っていれば、浮気がばれない、という訳だ。不謹慎極まりない俳句ではあるが、30年も俳句をやっていると、「まあよく作って、よく投句したものだ」と逆に感心してしまった。たまには、こういう句もいいのではあるまいか。

 常日頃私は、「俳句は何でもあり」と公言している。字余り、字足らず、無季、おふざけ、滑稽、色気、卑猥、空想、夢想、嘘・・・何でもありなのだ。

 上手に人を御騙し下さい。しかし、よっぽど上手に作らないと、嘘は見抜かれます。実際、同じ香水を与えたからって、浮気は他の要因によって必ずばれます。女房を侮ってはいけませんぜ。

ツユクサ(露草)ツユクサツユクサ属の一年生植物

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988  第203回 岩戸句会  7月

2013年07月30日 | 

蜩や薄墨色の刻流る         薪 

炎天は観音開き姉の忌くる

   

炎天下今をどこかに置き忘れ     章子

日盛りや地球を削る器械音

 

女房と同じ香水買い与え       遊石

夏の夜の一人寝も良し雨を聞く

   

どこまでも無言の二人夏の月     豊春

片蔭や四肢投げ眠る白き猫

 

声上がる闇掬い上ぐ大花火     洋子

鬼百合の雄蕊切られて尚香る

 

はたゝ神冷風吐きて豪雨とす     歩智    

飛び跳ねてとかげ逃げ出す炎天下

 

鬼やんまXL(エックスエル)の衣脱ぐ     炎火

蟻地獄十三面牌単騎待ち

 

ゲリラ雨傘も心もつぼめ行く     空白

稲妻と金属音の至近雷

        

鯖鮓や備前の壺に耳二つ       正太

多摩の堰風ふところに藍浴衣

 

合歓の花私を抱く母若し         雲水

炎天や死ぬには足らぬ睡眠薬

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 987  炎天下今をどこかに置き忘れ  章子

2013年07月29日 | 

  「今を忘れる」という状況は、誰にでもある。仕事や遊び、趣味など何かに集中、没頭、興じている時だ。しかし、「今を忘れている」ことを認識するのは今ではない。

 それはある程度時間が経ってから、「あの時は我を忘れていたなあ」と気付くことなのだ。つまり「今、私は今を忘れている」ということはあり得ないのである

さて、それが炎天下と結び付くと、時間の問題は一体どうなるのか・・・・・

ワレモコウ(吾亦紅) バラ科・ワレモコウ属

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986  蜩や薄墨色の刻流る  薪

2013年07月28日 | 

(ひぐらしや うすずみいろの ときながる)

 岩戸句会は、夕方5時から開催する。熱海、湯河原,真鶴、東京から参集する会員の中に、「今年初めてヒグラシを聞いた」という人が多かった。改めて、この場所が特殊なんだ、と再確認。

 それにしても、句会が始まってしばらくして、全くこの句の通りの状況になり、皆さんペンの手が止まり、感激の声が上がった。

チダケサシ(乳蕈刺) ユキノシタ科の多年草

 

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985  氷水さみしい顔に生れつき   英子

2013年07月27日 | 

 持って生まれた人間の顔。例えば女性であれば、美人も不美人もある。形にしても面長や丸顔など様々。色白、色黒もあって色々。男性にしても最近はイケメンなどという言葉がよく使われている。強面などと言われ、こわ~い御方もいる。この生まれつきの顔とその後の人生によって変化してゆく顔も確かにあるだろう。

 ところでこの句の、たぶん作者自身のことだと思われるが「さみしい顔」にも生まれつきがあるだろうか、と疑問に思う。

「男は、40になったら、自分の顔に責任を持て」という言葉があるが、これは当然女性にも言える。作者は、そういったことを踏まえて「私のさみしい顔は生まれつきで、私の責任ではないのよ」と言っているのは、弁解に聞こえなくもない。

「だって、私は本当に淋しくなんかなくて、毎日充実した暮らしをしているのに、『あなたはいつもさみしそうね』と言われてしまうから、悔しくて・・・・・」

ひまわり(向日葵)

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984  人妻が老鴬の真似していたり

2013年07月26日 | 

 老鶯は、夏に鳴く鶯のこと。熱海などの梅園に行くと、鶯笛を売っているが、これを鳴らすと、近くの鶯が寄って来る。勿論、口笛で真似ても寄って来る。

 これは、自分の縄張りによそ者の鶯がやって来たと思い、追い出そうとするからだ。ラジカセで録音した鶯を聞かせれば、ほんの目の前で直に見ることができる。

 さてこの句、鶯が鳴くのはオスだから、この御婦人は鶯のオスの真似をして、鶯のオスに喧嘩を売っていることになる。実に可笑しいと思いませんか。

タケニグサ(竹煮草)

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983  戻り梅雨健康診断省略す

2013年07月25日 | 

  愚図ついた天気が続いている。たぶん戻り梅雨だと思うが、早すぎる秋雨の可能性もないとは言えない。今年は、梅雨入りも梅雨明けも早く、芒が咲いていると聞くし、我が家でも萩や菊が咲き、桔梗、吾亦紅ももうじき咲きそうなのだ。但し、油蝉やみんみん、つくつく法師は、まだ鳴いていない。

 さて、私は未だかつて、一度も市の健康保険推奨の健康診断や人間ドッグに行ったことがない。そのうち、手遅れの成人病に罹り、あの世行きになるかもしれないと、一抹の不安がないとは言えないが、「ええい、その時はその時だ」と諦めるつもりだ。

 但し、その時に本当に平然としていられるか、と問われれば全く自信がない。私は、まあその程度の俗物ではある。

ラベンダー   シソ科の常緑樹

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982  倒されて大木となる夏木立

2013年07月24日 | 

 庭に様々な木を植えるのはいいが、ついつい密植してしまう。その木が将来どのくらい大きくなるか、を考えないから、10年ほど経って、植え過ぎたことに気付く。そしていくつかの木を切らねばならない羽目になる。

 例えば、太さ10センチ余、高さ5メートルほどの小さな木でも、実際地面に倒してみると、その大きさにびっくり仰天することになる。だから、台風などで街路樹が倒れたりすると大変なのだ。

リュウキュウアサガオ

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981  翡翠や水湧き出でて川となり

2013年07月23日 | 

 (かわせみや みずわきいでて かわとなり)

 日本有数の「柿田川湧水群」。富士山の伏流水が国道1号線脇から忽然と湧き出し、一挙に清流の川となっているのだ。湧水量は、1日100万トンもあるという。

 しかし、ついこの間までヘドロの川だったことは、余り知られていない。工場を立ち退きさせ、無報酬の清掃から始まった「柿田川みどりのトラスト」活動は、10年かけて周辺の土地取得を行い、環境調査をはじめ富士山麓の植樹活動まで行なっている。

 私たち熱海市民は、トラスト活動によって守られた水を飲料水として分けてもらっている。その恩恵を心から感謝している。

スイレン(睡蓮) スイレン科スイレン属

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980  どの顔もヴァカンス疲れ街晩夏  万里子

2013年07月22日 | 

 ヴァカンスとは、フランス語で5週間ほどの長期休暇のこと。19世紀の段階では、バカンスは貴族やブルジョアのものであり、金持ちが何もしないでいる時間のことを指していた。「vacances」とは、もとは「空」「中身がない」といった意味)。       

 20世紀になって、休暇は連続5週間まで取得可能となった。そのため、現代のほとんどのフランス人は、長期滞在型休暇を過ごす。

 フランスは日本と同じ温帯に属する。しかし緯度は北海道に相当し、冬期は昼の時間が短い。毎年ヴァカンスの時期には、太陽の光と暖かい風を求めて、パリなど北フランスの住民が一斉に地中海沿岸部へと移動を開始するため、冗談めかして『民族大移動』と呼ばれたりするそうである。

 長期間に渡るため、時として「ロマンス」が生まれるなど、時として人生を変えるほどのインパクトを持つ。そのため、「フランス人は一年の大半を次のバカンスをどのように過ごそうか考えながら暮らしている」「フランス人はバカンスのために生きている」とすら言われるそうである。

 さて、この句の「ヴァカンス」は、せいぜい5,6日の「日本型夏休み」であろう。移動や遊びに忙し過ぎて、バテてしまっているのだ。日本人の夏季休暇は、まだまだ貧しい。

アサガオ(朝顔)  ヒルガオ科サツマイモ属の一年生植物

 

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979  踊り子号夏を喫せし顔あふる  多留男

2013年07月21日 | 

 踊り子号は、①東京→熱海→下田、②東京→三島→修善寺、を走るJR東日本の特急列車。川端康成の小説「伊豆の踊子」より、命名されたそうである。

 「夏を喫せし」とは、うまい表現だ。踊り子号のドアが開いて、乗客の楽しそうで、日に焼けた黒い顔が、どっと下りて来る。東京駅が最も相応しいだろう。

 しかし、海水浴も、最近ではプールが主流になり、グアム・ハワイなど海外組も相当増えているそうである。

タイム (thyme)   シソ科イブキジャコウソウ属

 

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978  夜濯ぎのおはりを待てる大欠伸  佳津

2013年07月19日 | 

(よすすぎの おわりをまてる おおあくび)

  「夜濯ぎ」とは、夜の洗濯のことで夏の季語である。昔よく使われた、板に多くの溝を付けた「洗濯板」が思い出される。もう何十年も見ていないが、今でもプラスチックやガラス、木製の洗濯板が市販されているらしい。

  とはいっても、今時の夜濯ぎは、やはり電気洗濯機であろう。但し、この句の洗濯機は、洗濯・脱水までだから、待って干さなければならない。

 今では、1台で乾燥までやってしまう、究極の洗濯乾燥機が働く主婦たちに普及し始めているそうである。

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977 私だって付いて行きたい暑気払い  香杞

2013年07月18日 | 

 酒飲みは、事あるごとに口実を付けて飲む。当然暑ければ暑気払いだ。街中のビアーガーデンでもいいし、時間があれば車を飛ばして避暑地にだってあっという間に着いてしまう時代だ。

 さて、この句、作者は暑気払いに行ったのだろうか、それとも行かなかったのだろうか、それが曖昧である。つまり、

①  「あら、あなたも行くの?」「私だって行きたいわよ」

②  「あら、行かないの?」「仕事がなければ、私だって行きたいわよ」

私の推測では、たぶん②の行かなかったのであろう。残念でしたねえ。

ヤマユリ(山 百合)  ユリ科ユリ属の球根植物

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976  合歓の花私を抱く母若し

2013年07月17日 | 

(ねむのはな わたしをいだく ははわかし) 

 十数年前に、我が家の庭で見つけた合歓の木が、屋根を越すほどの高さになった。花もたっぷり咲くようになったが、見上げても葉に隠れていて花を見ることができない。

 花を見ることができるのは、残念ながら散って地面に落ちた時だけだ。散っても美しいピンクはそのままなので、それが唯一の救いだ。

オオバギボウシ

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975  だんまりの子と根比べ夕端居  順子

2013年07月16日 | 

 健常者なのに、全く話をしようとしない人がいる。特に若い女性に多い。私のように、色々つまらないことを考えているのだろうか。

 それとも、何も考えていないのだろうか。そうだとしたら、大変だ。お釈迦様のように、悟りの世界に近いのかもしれないし、それとも反対に、もうボケが始まっているのかもしれないからだ。

 この句の場合、作者のお相手は我が子であろう。親となんか全く話す気がなくて、携帯か何かをいじっているに違いない。パソコンが生まれて人間が大分変わったが、スマートフォンが生まれて若い人たちが更に変わった。

この句は将来、人間の声帯が退化消滅するかもしれない前兆現象かもしれない。

オオバギボウシ

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