今は昔、夏休みになると私は、母方の里で長期に滞在して過ごしたものです。
毎日のように昼はプール、夜は怖いテレビと、里での私の毎年の日課が定着した頃、当時の怪談放映は深夜に及ぶようになりました。
当然私はかなりの朝寝坊派になりました。元々朝は弱い方だったのですから、連日昼近くまで寝ているようになり、規則正しくあるべき夏休みの日課は怠惰な様相を呈していました。
そんな私はとうとうある朝の8時頃、寝床の片付けを急ぐ商家の叔母達に布団から追い出されるという、実力行使を受けて畳の上に転がされていました。
店の支度もあり、そろそろ客も来る、昔のように店から少し顔を覗かせれば屋内の様子が分かる商家の造りでは、畳の端に少しでも布団が見えただけでだらし無く思われたものです。親戚にも世間体がありました。
預かっている子への教育の義務や責任もあったのでしょう。
さて、布団を奪われた私はそれでも枕を抱えて畳の上、襲って来る眠気と格闘しつつ、遂には抵抗できない我が身の不甲斐なさに唸りだすという、今考えても相当恥ずかしい醜態をさらすのでした。
『起きなければ、でも、眠い。眠い、でも起きなければ…』
そんな私の内面の格闘はうんうんと言う唸り声になり表面に発露し、朝の気だるさは気温の上昇と共に増して行くのでした。
この日から二日過ぎ、そうして三日目になると、とうとう私は睡魔に負けはじめました。
こんなに苦しいのなら明日からは畳の上でもかまわず寝続けようと決心したのです。
そんな決意の翌日、事を察したのか、珍しく私は伯父に起こされました。