Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

夏の怪(3)

2011-07-13 07:07:26 | アート・文化
今の今迄、叔父に起こされる事はあっても、伯父に起こされたというのはこの時が初めての事でした。
 
しかも、それ迄起こされ慣れてきた叔母達や叔父と違い、成り行き上も起き掛けの不平を言い慣れない伯父のことです。
 
私は相当眠く、視点も定まらない状態でしたが、文句一つ言う気も起こさず素直に布団から出る気になれました。
 
…おいで、おいで…、
 
呼ばれるままに黙ってふらふら声の方向、中庭に面した縁先に起き出してみると…
 
かなり朦朧としている私にも辺りがいやに暗いと感じられます。
 
…更に、寝ぼけ眼で見回して見ると、庭に面した雨戸は下りたまま、開いた戸口もまだカーテンが閉められたままになっていました。
 
半分深い眠りの中にいた私でも、かなりの未明と察しがつく薄暗さです。
 
…おいで、おいで…
 
伯父に促されるままに私がカーテンの陰にたどり着くと、
 
そのまま開いた戸口から庭へと促されました。
いわれるままに私が出ると、未明の庭はいつも見慣れた庭なのですが、白昼の緑濃い庭でも、いつも花火をするような漆黒の庭でもありません。
 
全ての木々や空間が薄墨を流したように覚束ないグレィの世界です。
 
それまでも実家で未明に起きた事はありましたが、これだけしんとして篭ったように静寂で、なおかつ捕え所の無いグレィの世界は初めてでした。
 
実際、私は今現在までも、あの朝の庭に出会った事がありません。