『外の世界って、驚く事ばかりね。』彼女は社会に出て一番最初に目にした同僚の男性の喧嘩に驚き、その意外な事の成り行きに呆気にとられたのでした。父の言う通りだわ。彼女は思いました。
かつて野原さんの父は、今迄、幼少から大学卒業までを自宅通学のみで過ごした自分の娘に対して、
「学校を卒業し、社会に出て外に出たら、お前は驚く事ばかり目にする事だろう。心して置きなさい。」
と、前もって忠告して置いたのでした。
この時、彼女はその父の言葉を思い起こしました。そしてこう言った事なのだわと父の言葉に合点したのでした。
公衆の面前で大の大人が派手に喧嘩する、野原さんにとって生まれて初めての、目前にする光景でした。彼女は驚きながらも、その喧嘩の場所が自分の場所から離れた所であり、自分には影響を及ぼさないと感じていたので、彼等の姿を冷静に眺め始めました。