程無くして、彼女は如何ということの無い、平生と同じ顔付で、ごく普通の歩みをして戻ってきました。が、内心は喜びに満ち満ちていました。側まで来て私の顔を見ると、つい頬がぴくぴくとして、抑えようとしている内心の歓喜が溢れ出てしまいそうでした。
「ああ、…ちゃん」
と言った切、彼女は内なる笑みと笑い声が外に漏れ出てしまいそうで言葉を続けることが出来ません。しかし、『まぁ、いいか。』と彼女は思いました。『ここでもし私が大笑いしたとしても、何故笑ったのか、万が一にでも分かるようなこの子じゃない。だって、この子は鈍だもの。』と思うともういけません。ぷっと口元から息が漏れ出て吹き出すと、後はもう、あはははは…と、彼女はお腹を抱えて大笑いしてしまいました。必死に笑いを堪えますが、それでも、くくく…と、なお口元から声が漏れ、目も細いままで弓形になったっきり、普通に見開くという事が出来ません。
「どうしたの?向こうで何か面白い事でもあったの?」
そんな彼女の姿に、私が不思議そうに尋ねると、彼女は「向こうじゃ無くてこっち…」と言うとまた可笑しそうにはははと笑い、「…ちゃん、なんで私が笑ってるか分からないでしょう?」と意味ありげに言い出しました。
勿論私の「さっぱり分からない。」と言う答えを聞いて、彼女はそうでしょう、そうでしょうと、尚もふふふと含み笑いを続けて、漸く「兎に角厄介ごとはこれで片付いたのよ。」と言うのでした。
「…ちゃんの厄介ごとか、嫌なことが解決してよかったね。私も嬉しいわと。」と私もにこやかに言うのでした。
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