あまり笑い過ぎた年上の彼女は、ふと頬に手をやり、溢れ出ている涙に気が付きました。そこで年下の私が見詰めているのも構わずに手の甲で涙を拭い始めました。
それをジロジロと目にしていた私は、気になって彼女に「汚い手で目を触っちゃいけないわ。お母さんが何時もそう言っている、目に悪いのよ。」と注意せずにはいられ無くなりました。「目にばい菌が入ったら大変よ、お医者さんに行かなくちゃ。嫌でしょ?」と。彼女は何だか神妙な顔つきになりました。
「何か嫌な事があったの?」
自分よりも幼い私にそう言われて、年上の彼女は何だかハッとしました。
一方私の方では、お姉さんは向こうで何か嫌な事に出会って泣いているのだと考えていました。
『もしかすると、彼女は向こうで何か嫌な事があり、それを年下の私に悟らせまい、心配させまいとして、その事を隠すためにさっき陽気に笑って見せていたのだろうか?』
彼女の笑い方があまりにも突飛で不自然だったので、私はこう考えてみたのでした。そう考えると、私にはそれが全くの真実の様に思えました。
『泣く程嫌な事がお姉さんにあったのなら、年下でも私に相談してくれればよいのに。相手が男の子だって誰だって、仲良しのお姉さんの為だ、私は一言文句を言って来てやるのだ。』
と思うと、かっかと怒りの感情が湧いてきます。
「向こうで何かあったの?」
「誰か嫌なことを言ったの?何かされたの?叩かれたの?」
「女の子に酷い事するなんて許せないわ!私が文句を言って来てあげる。」
頬を紅潮させて、思いついた儘に語気も荒く、また矢継ぎ早にこう言う私を目の前にして、彼女は吃驚して目を丸く見開来ました。そして、眉根に皺を寄せました。彼女は的外れなことを言う年下の私に困惑したのです。
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