この歳になると、孫も何人か目になると、祖母はおずおずという様な感じで語り出した。
「何でも考えてみるようになるんだよ。」
この身代もあるしね。どの子とか、その孫のどの子に如何とか…。
そう言いながら、俯いた祖母の私を見る目がしばしばと、瞬きを重ねる様な上目遣いとなった。私は未だ坐した儘だった。その為、私はこの祖母の下からという様な目線を奇異に感じた。私の方が偉い立場にある感じがして妙に思えたのだ。私もまた祖母の真似をするように目を瞬いた。
一旦途切らせた話を、祖母は続け始めた。
「お父さんと私には、」
このお父さんはお前のお祖父ちゃんだが、お祖父さんとこの私の事だよ、私達には大した蓄えが有ってね、それは相当に大きいんだよ。膨大というんだが。それを…、祖母は口ごもった。狙うとか、取られるとか、…そういった事だよ、私やあの人が恐れている事は。
「子どもはいいんだよ。私達2人の血筋なんだからね。如何使おうが、その結果如何なろうが。」
「問題はその連れ合いやその先の何某かだよ。その血を分けた細かいのとか…。ね。」
そこ迄言った祖母は妙に目を見開いて私を見詰めて来た。そうしてねめねめとした目付きになり、ふんと、何だか意地の悪そうな表情で私を見詰めると、そこで彼女はプイっと横を向き、再び私の方へ顔を戻そうとして戻し切らずにいた。
見詰めている私に、彼女は顔だけやや斜に構えた様な格好で正面を見せると、手を先程からと同じ様に前掛けの前に組んだ儘で立っていたが、その顔だけをしげしげと私が見詰めてみると、申し訳の様にちらりとだけ私に視線を投げ掛けてよこした。が、その後もやはり祖母は私から顔だけ背けていた。
「騙されたくは無いんだよ。私もお父さんも。」
このお父さんは祖父の事だな。咄嗟にだが私は思った。
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