Jun日記(さと さとみの世界)

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美湾

2018-01-04 10:18:31 | 日記

「どんな曲ですか?」

ガイドさんに重ねて質問されて、私はその曲は「パッフェルベンのカノン」だと答えるのでした。この曲は当時私の家族が好きな曲でしたから、私も自然と好きになっていました。ここでも自然に頭に浮かんで来たもののようでした。キンコンと2音か3音したところで、これはカノンの曲だと気付き、続きは意図的にスプーンで弾き出したものでした。…あくまで私の空想の世界での出来事です。

 「すみません。何だかぼーっとしてしまって。」

そうガイドさんと話しながら、あれこれと彼女に話す内に、デザートプレートの場所の青年の話やその事から連想した昔の話、掃除の男性の話、気分を引き立てようと海を見詰め始めた話まで、私が一通り手短に事情を話し終え、彼女にご心配かけてすみませんと謝ると、

「それはいいですけど、時間ですよ。」

と注意を促されるのでした。そうです、朝の出発集合時間まで後10分程だったでしょうか。私は時計を見て慌てました。ガイドさんはすぐに立ち去って行かれましたから、私も殆ど手付かずのメロンと紅茶を目の前にして、これから如何しようかと迷いました。

 食べずに残していこうか、食べるにしても1分程の時間しか割けないと思うのでした。決断も時間に押されています。私はフォークとナイフで生ハムをくるくるとメロンに巻き付けると、パクパクパクと一気に平らげて、残った紅茶を見て溜息を吐き、徐にカップの取っ手に手を伸ばすと、グイーッと一気飲みして、パッと両手に食器を持って立ち上がり、片付けコーナーに向かいました。セルフサービスだったのです。私は大急ぎでその食器を置くと、急いでエレベーターへと歩み出しました。


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