その後彼は祖父に抱えられて自室に戻ると、再び前後不覚に陥りばったりと寝床に倒れ込み、そのままの姿勢でグァー、グァーと、寝息も荒く眠り込んでしまいました。彼がこんなにも深くぐっすりとした安眠を取る事が出来たのは、この星の二日酔いの特効薬、祖父が前以てこっそり用意しておいてくれた、新鮮な木の実のジュースが効果を奏していた事は言うまでも無いのでした。
「あの2人、結婚したの⁉」
翌日、朝食の時になって、やっと普段の状態に戻ったミルが祖父と同じテーブルに着いた時のことです。祖父の話してくれたこの星の近況や四方山話に、彼は突然、突拍子もない大声を上げました。
『信じられない。』
ミルは思いました。「驚いただろう。この星の皆もそうだったんだよ。」祖父はミルが驚いたので、如何にもしてやったりという顔つきになると極めて上機嫌になりました。
2人が仲良く連立って歩くようになった初めは、ほれ、あの何時ものこの区域の収穫祭の時だよ。その日2人は仲良く笑って手を繋いでいたよ。最初から2人で皆の前に現れたんだよ。2人は地域のバザールの通りをその儘臆面もなく歩いて行ったよ。そんな2人を、地域の皆は開いた口が塞がらないという顔をしてずっと眺めていたよ。私も最初そうだったんだが、何時の間にかそんな皆の顔を見ているのが面白くなってね、皆の顔ばかり眺めていたよ。私は2人共ほんの小さな頃から知っていたからね、何となく、やっぱり!という気もしたものさ。
祖父は目を細めて遠い所を見る様な顔付になりました。それから彼が回想した記憶をミルに話してくれました。祖父の話によると、ミルの幼馴染であり結婚した2人は、ミルがこの星に現れる前からかなり親しかったのだという事でした。
「初等教育以前の2人は、よくこの裏山で転げ回って遊んでいたものさ。」
そんな仲良しの2人を見て、よく祖母ちゃんも笑って「あの2人は将来結婚するね。」と言っていたよ。祖母ちゃんの言う通りになった。祖父は満足げな微笑みを満面に浮かべるのでした。裏山での2人は幼い頃の私と祖母ちゃんの様だったなぁ。祖父はほうっと溜息を吐くとやや顔が曇りましたが、すぐに穏やかな微笑みをその顔に浮かべました。ただ『過ぎた物は帰らない…、さ。』そう祖父は内心諦めの溜息を吐いていました。
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