しみじみとした気分で、とっぷりと日の暮れた頃に首を長くして彼を待つ祖父の元へと帰宅したミルは、玄関で彼を出迎える祖父ににっこりと笑って見せるのでした。懐かしくてつい時間の経つのを忘れてしまったと笑うのでした。
2日程してミルはまた山へ向かいました。カウの実とは違う別の木の実を取りに出かけたのです。季節は丁度この地域の実りの時期を迎えていました。彼が家から持って出た袋はすぐに目当ての木の実で一杯になりそうでした。早朝に家を出た彼は、この分なら昼迄にはこの実を家に持って帰り、早速調理して昼食に食べられそうだと考えると愉快になって来ました。興に乗った彼は山道を歩きながら、これでどの様な料理を作ろうかとあれこれと思案を巡らせ始めました。
ざざざざざ、砂の崩れる音と共に目の前に3日前に分れたきりの彼女が滑り降りて来ました。彼女は1人で山の斜面を滑り降りて来たのです。「しくじったわ。」彼女は渋い顔をして腰をさすりながら呟きました。
「やぁ、」
「あら、」
よく会うわねと驚いた様に彼女は微笑みました。彼が見ると、彼女も手持ちの袋に沢山の木の実を詰め込んでいるようでした。おまけに彼女は、薬草らしい草の一杯詰め込まれた袋を余分に幾つも腰にぶら下げていました。
彼は山の斜面を見上げました。高い所に彼もよく知っている薬草が生えているのが見えました。『あれが欲しかったのか。』彼は彼女にその薬草を指さしてそうかと尋ねました。果たして彼女はそうだと答えると悔しそうに薬草を見上げました。もう少しだったのに、足を踏み外してしまったのだと無念そうに薬草を見上げる彼女に、ミルは僕が取って来てあげるよと気さくに言うと、自分の荷物をその場に置いて彼女の返事も待たずにさっさと斜面を登りだしました。
彼はすぐに薬草のある場所迄上って来ました。喜々として彼が手を伸ばしたところで、ずっ、ざざざざざーと、彼は元の山道に滑り降りて来て尻もちをついてしまいました。下では彼女が待ち構えていました。彼女は思いっきりハハハと笑うと、
「私より酷いわね。」
私は荷物を持っていたけど、あなたは手ぶらでしょう。私よりずーっと条件が良いはずなのに失敗するなんて…。宇宙艦隊の士官さんも大したことが無いのねぇと如何にも面白そうに笑うのでした。
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