「義姉(ねえ)さん、お義父(とう)さんが呼んでいたって本当?」
「本当よ。なぁぜ?」
義姉さんの事だから、人払いしたのかと思って、2人で何か話があるのかと思ったんですよと、
次兄の伯母は微笑みながら兄嫁に、寝ている蛍さんの方を目で差すのでした。
「明日の朝までは持たないそうですよ。」
ああ、そうだってねと、長兄の伯母も蛍さんの方を見遣るのでした。
「こうなってみると可哀そうな子やわね。」
長兄の伯母はそう言うと、しんみりと目頭を押さえます。
「あら義姉さん、泣いているんですか?私はてっきり…」
そう次兄の伯母が言うと、しぃっと、長兄の伯母は彼女の言葉を打ち消して、
「壁に耳あり障子に目ありですよ。」
と言うのでした。
「頂く物は釜戸の元の灰のまでも、というのはあなたも私も同じ事。」
変わりありませんよと、長兄の嫁は次兄の嫁ににんまり微笑んで見せました。
そして、寝込んでいる蛍さんに晴れやかで明るい一瞥をくれるのでした。
流石はお義姉さん、次兄の嫁もそんな義姉ににんまりと明るく微笑むと、2人で幸せそうに肩を寄せ合うのでした。
『同じ穴の狢ね。』そんな声が聞こえて来たような気がして、蛍さんは目を開けました。
目の前で伯母さん達が仲良く、睦まじく話し合っています。蛍さんは物珍しい光景を見るような気がしました。
蛍さんは、この2人がこのように笑顔で仲睦まじく本当の姉妹のように睦合っている姿を、終ぞ今迄見た事が無かったのでした。
「伯母さん達、仲がいいんだねぇ。」
「仲良しは良い事だって言うから、伯母さん達の仲が良くてホーちゃんも嬉しいな。」
そう蛍さんはにこやかに伯母さん達に声を掛けました。
途端に、長兄の伯母がきっと目を吊り上げたと思うと、蛍さんにはその身が怒りの炎に揺らめいた気がしました。
彼女は傍らの次兄の伯母からさっとばかりに身を離し、彼女との間にやや間をおくと、
「私はあなたとなんか仲良くないですからね。」
そう言って、今度は蛍さんに優しく微笑みかけました。
「ホーちゃん、いい子ね、ゆっくり休んで元気になってね、伯母さんはこれで御暇しますよ。」
にこやかにそう言うと、いい子いい子を繰り返し、病室から出て行ってしまいました。
「まぁ。」
と、この意表を突いた兄嫁の行動に、一瞬次兄の伯母はたじたじとなり、バツの悪いような顔をして蛍さんから視線を逸らしていましたが、
蛍さんには一言も何も告げず、義姉の後を追うようにして廊下へと姿を消してしまいました。
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