予想もしていなかった息子の謝辞を受けた父は、思わず「えっ」と、息を飲むような雰囲気で驚きの言葉を放ちました。
「お前、あの娘の事を気に入っているのかい?」
如何にも呆然とする父の顔とこの言葉に、息子は爽やかでにこやかな笑顔を向けると、「流石に俺の親だなと思ったんだよ。」と、「今迄、こうこれ!と思った相手に出会わなかった俺だよ、それが当の最初からすんなりと話しが出来て、何かと相性もよいと来たもんだ。何の気兼ねも無く気を張る事も無くだよ、この俺がだよ、ちゃんと仲良く話して付き合える相手だったんだよ。」と、年甲斐も無くピンクに頬を染めるのでした。
『信じられない!』
この時、両親共に思った事を息子は毛ほども気付か無いのでした。
彼は、それっきり目の前の両親が、神妙な顔で黙として無口な態度なのを、親の善行を謙遜している両親の徳のある態度だと受け止めるのでした。
「如何したの、父さん達。僕は本当に心底喜んでいるんだ。」
これ以上の謙遜は子である俺に対してでも慇懃無礼な態度というものだよ、な、一緒に明るく笑顔で夕食でも食おうじゃないか。彼は両親の着いているテーブルの椅子に腰掛けると、両親の態度に合わせたつもりで改まった丁寧な言葉で言いました。
「僕は本当に喜んでいるんだから。さて、僕は未だなんだよ。」
と、目の前に並んだの2つの丼を見比べながら、何を食べようかなと考えます。2つの丼の柄は違っていました。蓋も1個しかテーブルには載っていませんでした。
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