最近思う事。それは悩み事と言ってよく、困った事でもあります。こんな時は、私の祖父の事を思い出します。祖母との事もその先にあったのですが、これは祖母との事を踏まえつつ、祖父との関わり合いの話です。
それは何時の事か、定かには思い出せないのですが、祖母が亡くなり、1年か2年過ぎた頃、梅雨直前か、秋が深まり行く頃か、概ね曇りの日の事でした。その日は、日差しが差すと暑く感じるくらいなのに、曇ると肌寒く感じたのを覚えています。
私達、祖父と両親、妹と私の5人家族は、先祖の誰かの法要で、我が家の菩提寺の墓所に来ていました。大人は簡単な墓参りだけで供養を済ませる事にしたようでした。墓に線香とロウソクを灯し、父がしゃがんでお教の本を取り出したのを見ると、私はここでまた長くなるのだと悟り、辟易してしまいました。父はお盆は勿論、墓参りに来ると必ずのように自ら経本を読み、それが長々と続くのでした。
しかし、子供とはいえ、私はもうある程度年齢が進んで来ていたので、最初幼い頃にはしゃがんで聞いていた父のお経も、その後数年の内には立ち上がって聞くようになり、それさえも耐え難く長引くようになる父の様子に抗い、今回はもうエスケープするという事を学んでいました。
つまり、自分はあちらに行って良いかと親に尋ね、幸いな事に父の許可を得て、私は間髪を容れずに、すたこらさとその場を逃げ出していました。一応父に敬意は払ったつもりでした。
さて、我が家の墓前を逃げたした私は、皆から10メートル程離れた鐘つき堂の側に有る、風通しの良い開けた場所まで来ると一息付き、その場にある植木や周りの風景を眺めていました。ホッとしたものです。
すると、暫くして祖父が墓に皆を残し、時折墓の方を気にしては振り返りながら、1人で静々と私に近付いて来ました。私に話しかけてきた祖父は、何時も私が皆から離れて行くのが気に掛かるとの事でした。また、私の両親がそんな私を気にしないのが心配だ、親として自分にはそれが不思議だ、と話してくれました。
私は常日頃、そんな気配りをしてくれる祖父が好きでした。その時には、そんな祖父の事を有り難いとも思いました。
それから、祖父はもう夕刻近くになる空模様を眺め、私に話し出しました。