確かに蛍さんのこの時の表情は誰にも見る事が出来ませんでしたが、
その蛍さんの後ろ姿を眺めている2つの円らな瞳がありました。
肩を落とした蛍さんの後ろ姿と、呟く声を聞き逃さなかった人物が1人いたのです。それは光君でした。
『親も子供も相変わらずだな。』
と、光君は思います。最初に会った時から、蛍さんは何時も謝る側になるのでした。
それは今回とは違い、相手が悪い時でもそうなのでした。
今回にしても、蛍さんがそう悪いという訳ではないと思います。
さて、光君は続けて思います。
『如何してあそこの親は自分の子供を庇ってやら無いんだろう?』
光君はその事を不思議に思った初めての時から、自然、お盆などの墓参りに来る時には蛍さん一家が目に着き、
何時も気が付くと、その様子を注意深く観察していたのでした。
そして、何時も可哀そうにと思って、じっくり目を止めて蛍さんの顔を傍から眺めてみると、
何だか蛍さんの顔が、健気でいじらしくて可愛らしく思えてくるのでした。
『別に謝ってもらう程の事じゃない。』
今回の出来事をそう思うと、光君は急いで本堂の裏に取って返しました。
「私が悪いのか?」
父の声がしたと思ったら、本堂の奥から、蛍さんのお父さんとお祖父さんが現れました。
私が話している時に横から口を挟むから、そういって祖父は父に怒っている様子です。
父は、でもあれでよかったじゃないかと祖父に抗議をして、その後2言3言2人は本気で言い争いをしていましたが、
祖父は蛍さんが見ている事に気付くと、父の腕を突き、目で蛍さんを差しました。
何だい?父は黙ると蛍さんに向き直り、おおと何だか嬉しそうな顔で目を輝かせ、蛍さんに近付いて来ました。
蛍さんは近付いて来た来たお父さんの顔をしげしげと観察します。
父の顔は嬉しそうに輝いていました。頬も紅潮してほんのり赤く染まっています。
『如何したんだろう?』
蛍さんは不思議に思います。父の様子は、どうやら謝らなければいけないという雰囲気ではなさそうです。
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