「それに、あの子の怖い所はそれだけじゃ無くて、怒らせた本人じゃ無い、その本人の別の家族や親戚にまで害が及ぶというか、相当痛い目にあうところよ。」と彼女は言うと、思わず自分の頬に手をやり摩ってみるのでした。
「害が及ぶって?」
蜻蛉君はハッとしたように顔を上げると、茜さんの話に何か合点したような何かが符合したような雰囲気になるのでした。
「どんな事が起こるんだい?詳しく俺に話してみろよ。」
親友だろう、なっ、と、蜻蛉君は今迄の茶化すような態度から極めて真剣な様子に態度を一変すると、如何にも思いやり深そうに、さも彼女の手を取りそうな雰囲気で茜さんに詰め寄ると、懇切丁寧に問い掛けるのでした。
「先ずは私の頬の傷よ。」 茜さんは彼の態度にしんみりとしながら説明しました。
昔、兄の曙さんがあの子の頬を抓ったら、如何いう訳か私の頬にこの傷が出来たのよ、しかもあの子は片方だけだったのに私の場合は両頬なのよ、茜さんはさも恐ろしいという風に打ち明け話を話し出しました。
「家の皆が言うには倍返しされたんだって、」
痛い目も倍返しだったのよ、その時両頬がすんごく痛かったんだから。しかも当の原因の兄では無くて、妹の私の方にお鉢が回って来たんだって。家の皆そう言って酷く怖がって震え上がっていたんだから。
言い終えると彼女はその時の頬の痛みを思い出したようにまた自分の頬を撫でるのでした。
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