茜さんは蛍さんには気付かれないように、彼女の隙をついてぼそぼそと蜻蛉君の耳に何やら耳打ちしました。
「あの子、私があんたの事をあの子に紹介した事に気付いたわ。」
彼もこくりと頷くと、あいつ、お前に対して何か嫌な雰囲気だなと声を掛けました。元々は自分のせいなのですが、彼はいかにも茜さんの災難に同情しているという思わせぶりな態度を示しました。
「あの子、何でも根に持つタイプなのか?」
もしかするとそうなのかと、今まで全然そんな事のない、ぽっかりとしてあっけらかんとした明るい子だと思っていたと彼が言うと、茜さんはとんでもない、根に持つというどころじゃ無いのだと彼の言葉を否定しました。
そして彼女は年下の従妹のそういった短所について、詳しい説明を彼に始めました。もうこうなると茜さんも蛍さんの陰険な視線になど構っていられません。蜻蛉君と並んで立つとぼそぼそと早口で端的に喋り始めました。
「あの子を怒らせると怖い!」
「睨まれるだけじゃ済まない。何か嫌な事が起きる。こう気も重くなるし。ズンと来る」そう彼女が言うと、彼は気のせいだろうとそっけなく言うのでした。そこで彼女の方は、いえいえという風に首を振ると、「気のせいばかりじゃ無くて、実際何か怪我をしたり、嫌な事が起こったりしてね。」と、説明を続けました。そこで蜻蛉君も再び彼女の言葉に取り合わず、偶然だろうというのですが、その彼の声は段々沈んで来るのでした。加えて彼の動作も屈み込んで仕舞い、段々と物静かになって行くのでした。 茜さんの説明は続きました。
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