Jun日記(さと さとみの世界)

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ダリアの花、176

2017-05-15 22:08:36 | 日記

「大体、義姉さんの子でもないのに、如何してあなたが手を出したりするんです。親がちゃんといるのに。解せないなぁ。」

そう父が憤然として言うと、伯母は肩を落として力なく言うのでした。

「義姉さんがそう言っていたのよ。お義父さんがそう希望しているという話だったものだから。それに、澄さんの時の事を思い出してごらんって言われたものだから。」

「澄だって。」

「これは蛍の事なのに、如何して澄が出てくるんだ。」

と蛍さんの父は合点がいかないなぁと、口に出します。

「大体澄は怪我じゃなく病気で亡くなったんだよ。」

怪我をして危ない蛍とどう関係があるというんだ。そう父があなたの言う事は本当に解せないなぁと義姉に言うと、

伯母は答えました。

「澄さんが酷い病で、あれだけ苦しんで亡くなった事を、私や義姉さん、義兄さん、お義父さんやお義母さんだって、家の人だって、皆まだ確りと覚えているんです。」

あなたは家にいなかったから知らないんでしょうけど、それは酷い苦しみようで、傍で見ていた私達でさえ気の毒で、可哀そうで、

何もできないもどかしさを嫌という程味わったんですよ、またあの時のような苦しみや悲しみを繰り返したくないんですよ、

義姉さんも私も、そしてお義父さんもそうらしいと義姉さんが言うものだから、止む無く私が始末を引き受けたんです。

伯母がそう説明すると、蛍さんの父は眉間に皺をよせました。

 「澄がそんなに苦しんだなんて、私は初耳だなぁ。」

本当の話ですかと彼は言うと、あなたの言う事は如何も信用できない、こんな場面を目の当たりにした後なら尚更でしょう、

父に聞いて真実を問いただしてみないと、大体私がここへ来たのだって父に言われての事です。父があなた達と同じ意見だとは思えなぃなぁ。

そう蛍さんの父は自分の考えを示します。伯母は、ではお義父さんに確かめてみられたらいいでしょう。

そう言うと、つーっと廊下へ出て行こうとしました。

 「何処へ行くんです、逃げるんですか。」

蛍さんの父がきつい声で言うと伯母は沈んだ声で答えました。

「お医者様を呼びに行って来るんです。」

手当てしてもらうんでしょう、腫れが段々酷くなって来ましたからね。

そう伯母が言った通り、蛍さんの額には大きなたん瘤が出来て、瞼のあたりまで腫れが広がって来ていました。

「たん瘤が出来たのなら大丈夫なんじゃないですか。案外大した怪我じゃないのかもしれませんよ。」

腕白盛りの男の子を何人か持つ伯母は、安堵したように微笑むと、病室に父を1人残して廊下に出て行ってしまいました。


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