ドクター・マルは溜息を吐きながら、シルとの約束の時間、約束の場所へと向かっていました。
「お会いになってみるとよいですよ。」
シルはマルにそう勧めたのでした。相手は女の子といってもドクターの身内なのだし、ドクターとの共通点も多く見い出せるかもしれない。そう彼女は言うのでした。
「案外ドクターと姪御さんは仲良くなれるかもしれないですよ。」
とこう言うと、彼女はマルが彼の弟やその子供と共に面会する事を彼に推奨するのでした。
「これを機に、ドクターの女性嫌いが治るかもしれません。」
「そう考えるとこれはドクターにとってまたと無い好機です。」
「どうしても心配なら、私が付き添いましょうか?。」
とまで、こう迄彼女に言われては、到底マルも親戚との面会を断り切れなかったのでした。そして彼は、面目無くもシルに面会の同伴をお願いする事にしたのでした。
「やあ、お待たせ。」
マルはシルの姿を認めると、直ぐに彼女に声を掛けました。シルは何時もの様に約束地点には既に来ていたのです。
ここは、面会者などの一時居住区に通じるシャフトの前です。彼女は扉の前に佇んでいました。
「まぁ、ドクター、緊張気味ですね。」
ドクターの変わらぬ渋い顔を見て、シルは彼にこう返事をしました。
「ご親戚同士なんですから、ドクターの方もご気楽にどうぞ。」
弟さんなどは懐かしいでしょう?。もうどのくらいお会いになっておられないんですか。そうマルに笑顔で話し掛けながら、シルは彼と2人で扉の開いたシャフトに乗り込みました。
「弟さんとは兄弟仲がよろしかったんでしょう。」
シルはマルの胸の内から、彼等兄弟に付いて何の問題も読み取れなかった事からこう言ってみました。するとマルもそうだねと、やはり彼女の推測通り何思う所無く答えるのでした。
「故郷にいた頃は、2人でよく悪戯して歩いたものさ。」
当時を懐かしむように、遠い目をしたマルは穏やかな笑顔になりました。
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