「…ちゃんたら…。」
「ふざけて、まだそんな物いないでしょう。」ごく普通に軽くそう言うと、年下の子のお道化た態度に気持ちが落ち着いてきた年上の彼女は、自分の言った言葉に責任を感じて、念の為自分の足元を見下ろして辺りを見渡すとその付近の枯れ草などを足でいじくってみるのでした。
勿論、冬越しして既にこの時期いる数匹のダンゴムシが急いで逃げ出す姿が彼女の目に入りました。『もういるんだ。』と、彼女は自分が口から出した言葉の間違いに気付きました。当然内心焦りました。ご近所のおじさん、目の前の年下の女の子の父親から前以てなるべく間違いは教えてくれるなと言われていたのです。おじさんの信頼を得て年下の子の面倒を見ていた確り者の彼女は困りました。『何とか訂正しないと…。』
それにしても、と、彼女は思います。『今のあの子の態度や口調、おじさんそっくりだわ。親子は似るっていうけれど、本当のことね。』目の前の娘、その父を思い浮かべると、笑い方、物の言い方、自分が不機嫌な時のご機嫌の取り方など、全く同じ態度だとちょっと感動しました。『おじさんのお仕込みがいいんだわ。』そんな点、近所のおじさんには感心するのでした。そして、落ち着いて考えてみると、年下の子に先んじられた事、また、この場に長時間彼女が1人でいて平気な様子が癪に障って来ました。
年上の私の方から先に何か言葉を言うんだった。そう思うと、自然に「もう帰ろう。」と、正直に思っていた言葉がついぽろりと彼女の口から出てしまいました。こんな風に本音が出てしまうと、再び彼女は最初の感情に囚われるのでした。
くわばらくわばら、こんな所はもう沢山、一刻も早く家に帰りたい、こんな子を捜して迎えに来るんじゃ無かった。そう思うと、手の掛かる年下の彼女の子守が苦痛になって来ました。そうだ!ご近所の年下の子でこの子と同い年の子に、この子の事は押し付けて置こう。そうだ、そうだ、良い事を思いついた!。と、そう思うと彼女の方を見詰めてにんまりと笑いました。
『…ちゃん、ご機嫌が直ったんだわ。』
お姉さんのその笑顔を見て、私もしてやったりとにんまりと笑うのでした。
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