Jun日記(さと さとみの世界)

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土筆(33)

2018-03-30 20:07:13 | 日記

 何かって、と言うと彼女はまた口ごもりました。

「何かよ。」と言う彼女の震え声や膠着した顔つきが、何だか緊張した雰囲気を感じさせました。私は彼女の言う「何か」を思い付く事が出来ませんでした。それで、「何かって、なあに?」と彼女に尋ねてみます。

 何時もなら親切にあれこれと教えてくれる彼女でしたが、その時、彼女は容易にその「何か」の正体を私に明かしてはくれませんでした。彼女は再三の私の問いかけに終始黙っていました。そして、遂に彼女は

「…ちゃん、知っていて、私にその名前を自分の口から言わせるの。」

と、震え声で憤ったような声を発しました。面食らった私には、彼女が何故怒るのかさっぱり事情が分かりませんでした。この日もうこれ以上の不思議を受け付けられなかった私は、この出来事に返って無感動でした。ぽかんと口を開けて彼女を見詰めると2人の間に無言の時が流れました。『怒った…ちゃんは初めてみた。』と彼女を見詰めながら思いました。

 私は一計を案じて「分かった!、何かってダンゴムシでしょ。」と、如何にも今思い付いた様に、先ず違うだろうという答えで2人の間の口を切りました。それでもまだ彼女は無言のままでした。それでまた私は「蟻かな?」と、ニヤニヤして彼女の顔を見詰めました。そうして、「蟻もダンゴムシも此処には出て来ないみたい。」と、地面を落ちていた小枝で掘り返しながらお道化たように言ってみせました。すると漸く彼女から何時もの笑みが零れました。


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