2人の会話が弾む中、
「失礼します。」
医療室の介護スタッフ、若い男性がマルの個人ボックスへと入って来ました。
「エン・マン・ソウダネと仰る方がご面会です。」
えっ!とマルは驚いて椅子から飛び上がりました。そして今は困るよと、介護スタッフの男性に渋い顔をして見せるのでした。
「しゅ、手術中だ。」
そうとでも言っておいておくれ、と、マルは彼にそう指示すると急にそわそわし出したのです。
「困ったなぁ…。」介護の男性が彼のボックスから出て行くと、マルはミルの目の前で途方に暮れるのでした。
「如何したんですか?お邪魔なら私は出て行きますよ。」
ミルは気を利かせてドクターに笑顔で声を掛けました。
「いや、」
ドクターは、ミルに君のせいじゃないんだと言うと、実はね、今私を訪ねて来たのは弟でねと話し出しました。
マルのフルネームはマル・マン・ソウダネといいます。故郷の星はこの宇宙では可なりの辺境星団にあり。マルの故郷の星から宇宙艦隊に入った者は殆ど無く、ミルに限らずこの宇宙船の誰もがマルの同星人を見た事が無いのでした。ですから、皆マルの同郷の星人は、誰もがマルと似たり寄ったりの外見をしていると考えていました。
が、驚いた事に、実はマル自身の方が同星人からはずば抜けていて、外見もそうなら健康状態や精神状態、知能指数など、あらゆる面で比べようもない特異な体質なのでした。そんな彼は故郷で基礎教育を終えると、待ちかねた様に直ぐに宇宙へと飛び出し、自活しながら興味を持った医療への道に進み、ドクターとなってからは艦隊に入り、今やこの船のドクター主任に迄なっていたのでした。
「私の様なタイプは故郷の星では異質でね。」
自分の身の上話を終えたドクターは、溜息を吐きながらミルに告白しました。
「私は星にいるのが嫌で嫌で仕様が無かったものだ。」
向こうもそうなのだ。皆、何でもできる私と共にいるのが嫌だったらしいんだ。そう彼はミルに言うと、
「だから分からないでは無いのだがねぇ…。」
と、弟が自分を尋ねて来た核心について触れ出しました。
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