すでに紹介済みですが、
(https://blog.goo.ne.jp/kaeru-23/e/3a2d0c761230be9181d5241ceca33b5d)
がんの要因としては全体では一番多いのが「感染性要因」です。
図2-8をみると、感染性要因が喫煙やさまざまな生活習慣と並んで、日本人のがんの要因となっていることがわかります。感染でがんを引き起こすものとしては、ラウス肉腫のところで説明したウイルスがありますが、ほかに、細菌や寄生虫の感染もがんの原因となります(図2-10)。(太字部分は本からの引用部分)
ヒトの場合、ウイルスが原因であることがはっきりしているのは、子宮頸がんのパピローマウイルス、肝細胞がんの 型肝炎ウイルス、咽頭部のがんや胃がんの一部にみられるEBウイルス、成人胞白血病のHTLV-1です。これらのウイルスがヒトのがんのDNAに入り込んでいることは、ゲノムの解析からわかっています。
ウイルスが原因であるとわかれば、ワクチンなどで感染を防げばがんが予防できるので、それだけでも大きな意味があります。しかし、入り込んだことで何が起こってがんになるのかは、ウイルスによって異なり、まだよくわかっていない部分もあります。
B型肝炎ウイルスは、ゲノムのいろいろな場所に入り込み、その場所がたまたまがん遺伝子の近くだったときに、がん遺伝子を活性化すると考えられています。一般的に、宿主のゲノムに入り込んだウイルスには周囲の遺伝子の働きを活発にする作用があるからです。一方、パビローマウイルスには、ウイルスのタンパク質が宿主細胞の別のタンパク質を抑制するという機能があり、それによってがん抑制遺伝子が不活化されるのではないかと考えられていま
す。
いずれにしても、ウイルス感染ががん遺伝子の活性化またはがん抑制遺伝子の不活化を引き起こし、それががん化への最初のステップになるというのが、発がんのメカニズムです。
ピロリ菌は胃がんの原因として有名ですが、ウイルスのようにゲノムに入り込むことはないので、どういう形でがん化に寄与しているかという全体像はまだ明らかになっていません。ピロリ菌に感染すると、慢性胃炎が起こるのでその炎症がエピゲノムなどに影響するのだろうと考えられています。炎症が続くと、細胞分裂が続くので、突然変異が起こる確率が高くなるという側面もあります。
住血吸虫は、おもに熱帯、亜熱帯地域の淡水にすむ貝が媒介し、宿主の静脈内に寄生します。卵が組織に入り込み、周囲の組織がそれに反応することでがんが起こるようですが、はっきりしたことはわかっていません。フィビゲルのノーベル賞に象徴されるように、寄生虫の感染でがんが起こることを証明するのは難しいようです。なお、日本では、媒介する貝の撲滅計画が進んだため、近年、住血吸虫の感染例はほとんど報告されていません。