東京美術倶楽部創立100周年記念「大いなる遺産 美の伝統展」の前期と後期を観た。
http://www.toobi.co.jp/event/100th/index.html
滅多に観ることのできない個人所蔵の美術品が多く出品されていて、隠れた名品と言うのはこういうものを指すのだろうなぁと、しみじみと拝見させてもらった。なにしろオープニングから小林古径「山鳥」なのだ。淡く白い雪の散る灰色の空を山鳥が飛ぶ。尾を伸ばし羽を大きく羽ばたかせ…凛とした山鳥の姿の良さはさすが古径ならではだ。今回国内初の展覧会出品だとのこと。「山鳥」だけでなく他の名品の数々を観ていても画商たちの持つ底力が伝わってくる。美術館や学芸員の及ばない奥深い世界をふと覗いたような気がした。
この記念展には日本近代絵画や古美術作品が数多く展示されているのだが、最近はどうしても茶碗に目が行ってしまう花耀亭である(^^ゞ。特に国宝の茶碗2口は圧倒的に面白かった。前期は三井記念美術館でも観ている志野茶碗 銘「卯花墻」、後期は初お目見え相國寺の吉州窯「玳玻盞天目茶碗」だ。
実は美術ド素人の花耀亭は、恐れ多くも三井で「卯花墻」を観た時、「不ニ山」の時のような感動が湧かなかった(大汗)。ところが今回はしみじみ名品なのだと納得できた。理由は展示の位置にあると思う。三井の展示は高めの台付きガラスケースに収まり四方から観ることができる。しかし、残念にも設置台が高く、上背の無いと上から口縁や見込みを覗き込むことができない。しかるに今回は展示台が低めで、私もつま先立ちながら(目跡までは見られなかったものの)かなり内部まで見ることができた。斜め上から見ることにより「卯花墻」の手捏ねとヘラの削りによる造形の起伏(?)の面白さがしっかりとわかるのだ!殊に口縁の微妙なゆがみなど、なるほどと唸らせるものがある。志野の柔らかな乳白色を帯びた肌合いも錆色の卯花墻の景色と相俟って良い味を醸し出していた。国宝だから当たり前?(^^;;。でも、三井だけで見ていたらわからなかったと思う。
「玳玻盞天目茶碗」は南宋時代吉州窯の名品である。唐物らしく均整の取れた造形と、釉の二重掛けによる凝った模様が美しい。外側の斑模様は鼈甲のようで、茶碗の口縁の唐草模様と見込みの散花模様がなんだか愛らしくも感じられるお洒落な茶碗だった。当時の中国陶器の技術水準の高さと美意識の高さが窺われる。
ちょうどゲストのokiさんから紹介いただいた数江教一著「わび―侘茶の系譜」(塙新書)を読んで、侘び茶登場以前の茶陶は唐物全盛だった様子を知ったところだった。きっとこの「玳玻盞天目茶碗」も唐物名物だったのだろう。貴重なものとして大切に崇められてきた静嘉堂文庫の「曜変天目茶碗」と同じような名物オーラが感じられた(^^;;
唐物茶碗には時代を越えた洗練された優美さがある。もしかしてユニバーサルな正統派の美とも言えるかもしれない。しかし、侘びの美意識というものも伝統として受け継いでいる眼は、手捏ねによる歪みを帯びた茶碗にも時代を超えた美を見る。ふたつの国宝茶碗はそれぞれの美を放っていた。
http://www.toobi.co.jp/event/100th/index.html
滅多に観ることのできない個人所蔵の美術品が多く出品されていて、隠れた名品と言うのはこういうものを指すのだろうなぁと、しみじみと拝見させてもらった。なにしろオープニングから小林古径「山鳥」なのだ。淡く白い雪の散る灰色の空を山鳥が飛ぶ。尾を伸ばし羽を大きく羽ばたかせ…凛とした山鳥の姿の良さはさすが古径ならではだ。今回国内初の展覧会出品だとのこと。「山鳥」だけでなく他の名品の数々を観ていても画商たちの持つ底力が伝わってくる。美術館や学芸員の及ばない奥深い世界をふと覗いたような気がした。
この記念展には日本近代絵画や古美術作品が数多く展示されているのだが、最近はどうしても茶碗に目が行ってしまう花耀亭である(^^ゞ。特に国宝の茶碗2口は圧倒的に面白かった。前期は三井記念美術館でも観ている志野茶碗 銘「卯花墻」、後期は初お目見え相國寺の吉州窯「玳玻盞天目茶碗」だ。
実は美術ド素人の花耀亭は、恐れ多くも三井で「卯花墻」を観た時、「不ニ山」の時のような感動が湧かなかった(大汗)。ところが今回はしみじみ名品なのだと納得できた。理由は展示の位置にあると思う。三井の展示は高めの台付きガラスケースに収まり四方から観ることができる。しかし、残念にも設置台が高く、上背の無いと上から口縁や見込みを覗き込むことができない。しかるに今回は展示台が低めで、私もつま先立ちながら(目跡までは見られなかったものの)かなり内部まで見ることができた。斜め上から見ることにより「卯花墻」の手捏ねとヘラの削りによる造形の起伏(?)の面白さがしっかりとわかるのだ!殊に口縁の微妙なゆがみなど、なるほどと唸らせるものがある。志野の柔らかな乳白色を帯びた肌合いも錆色の卯花墻の景色と相俟って良い味を醸し出していた。国宝だから当たり前?(^^;;。でも、三井だけで見ていたらわからなかったと思う。
「玳玻盞天目茶碗」は南宋時代吉州窯の名品である。唐物らしく均整の取れた造形と、釉の二重掛けによる凝った模様が美しい。外側の斑模様は鼈甲のようで、茶碗の口縁の唐草模様と見込みの散花模様がなんだか愛らしくも感じられるお洒落な茶碗だった。当時の中国陶器の技術水準の高さと美意識の高さが窺われる。
ちょうどゲストのokiさんから紹介いただいた数江教一著「わび―侘茶の系譜」(塙新書)を読んで、侘び茶登場以前の茶陶は唐物全盛だった様子を知ったところだった。きっとこの「玳玻盞天目茶碗」も唐物名物だったのだろう。貴重なものとして大切に崇められてきた静嘉堂文庫の「曜変天目茶碗」と同じような名物オーラが感じられた(^^;;
唐物茶碗には時代を越えた洗練された優美さがある。もしかしてユニバーサルな正統派の美とも言えるかもしれない。しかし、侘びの美意識というものも伝統として受け継いでいる眼は、手捏ねによる歪みを帯びた茶碗にも時代を超えた美を見る。ふたつの国宝茶碗はそれぞれの美を放っていた。