前回紹介した三翼祭壇画《キリストの奇跡》(ビクトリア国立美術館)の中央部分には、ちょうど真ん中あたりにパンを受け取っている貴婦人が描かれている。下記美術館サイトURLで拡大して観ることができるのでご参照あれ。
https://www.ngv.vic.gov.au/explore/collection/work/3736/
このご婦人は、多分、フィリップ・ル・ボンの奥方であるイザベル(イザボー)・ド・ポルテュガルと思われる。なにしろ、J.ポール・ゲッティ美術館で観た《Portrait of Isabella of Portugal》にそっくりなのだから。
ロヒール・ファン・デル・ウェイデン工房帰属《イザベル・ド・ポルテュガルの肖像》(1450年頃)J.ポール・ゲッティ美術館
ちなみに、下↓はヤン・ファン・エイクがフィリップ・ル・ボンに派遣され、ポルトガルで描いた《イザボー・ド・ポルテュガルの肖像》(婚約用顔見世絵画)を元にした模写作品だ。残念ながらヤンの原作は失われている。
https://en.wikipedia.org/wiki/Portrait_of_Isabella_of_Portugal_(van_Eyck)
一方、《カナの結婚》翼では夫君のフィリップ・ル・ボンと思われる人物も出席者の中に見えるし、続く男性陣はシャルル・ル・テメレールにマクシミリアン1世、フィリップ・ル・ボー...かしらね??
ロヒール・ファン・デル・ウェイデン帰属《フィリップ・ル・ボンの肖像》(1450年頃)アントワープ王立美術館
で、もしかして《カナの結婚》場面のシャルルと思われる人物の手の身振り(キリストに向かい自分を指さしている?)は自分が主役という表現なのだろうか?? ということは、やはり「マーガレット・ヨークの世紀の結婚」場面になるのだろうか???
いずれにせよ、この祭壇画はブルゴーニュ公家に関わりのある人物によって発注されたものだと思われ、私的にも実に興味深い。