今回の目玉はアルチンボルドの『四季』『四大元素』が全点集結!にあり、画家の綺想に満ちた作品の数々を堪能できるとともに、当時の世界観とオーストリア・ハプスブルグ家称揚が合体された寓意と創造の成り立ちへの理解も深めることができる。
「アルチンボルド展」チラシ(移動でヨレたのでケースに入れて撮影(^^;)
アルチンボルドの綺想作品は、近くに寄って見れば野菜や果物などが写実的に組み合わせ描かれているのがわかるが、しかし、同時に後方に移動して見直せば人の顔(ハプスブルグ家の皇帝たちの肖像だったりする)が浮かび上がってくる。
これらは単なるお遊び的な寄り絵ではないのは、皇帝たちも喜んで受け入れ、ロマッツォやコマニーニ、フォンテオなどの同時代人たちも評価する、入念な構想力とその構成物である静物の写実力の賜物である。
例えば今回のハイライト、四季「冬・春・夏・秋」と四大元素の「水・大気・火・大地」は対応し、それも対応作品が向かい合う横顔として描かれている。これらの宇宙世界を統べるのがハプスブルグの皇帝たちという、なんとも壮大な寓意が込められているのだから。
でもね、アルチンボルド作品の真の凄みは、この写実的構成物の「個々を観る」と構成物による全体像である「人物像を観る」という、二重の「観る」意味(或いは関係)を私たちに問いかける仕掛けが組み込まれているところにあるのだと思う。
さて、ウィーンやマドリード作品は今までに目にしたこともあるが、リヒテンシュタインやデンバー作品は私的に多分初見だと思うし、とても興味深く観ることができた。でも、やはりウィーン作品はいずれも質の高さが伝わってきて、特に《冬》は存在感のある佇まいだ。
ジュゼッペ・アルチンボルド《冬》(1563年)ウィーン美術史美術館
木の枝の冠や麦藁編みのマキシミリアンのMや火打石模様(金羊毛の鎖よね!)編み込みだったり、老木の土臭さとレモンの組み合わせなども美しくて好きだ。
で、思ったのだが、髪の毛として描かれている蔦葉なのだが、以前に「カラヴァッジョ展」感想(10)で紹介したモレット《ノアの泥酔(Ebbrezza di Noè)》に通じていたりしないだろうか??
http://blog.goo.ne.jp/kal1123/e/6bc5feec7786cb4ad7437764f77a7f81
確かベルガモのアカデミア・カッラーラかブレシャのトジオ・マルティネンゴのどちらかで、アルチンボルド《春》《フローラ》風の花々の寄せ絵的な女性像が多数展示されているのを観たことがある。「アルチンボルド風」がロンバルディアで流行していたことが良くわかったのだった。