花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

WHITESNAKE来日公演

2006-05-23 00:00:44 | 音楽
実は先週の土曜日、「美の美」上映会があった後、パシフィコ横浜でWHITESNAKE公演を観た。ところが、何と!開演時間を1時間見間違えて大遅刻してしまったのだ(>_<)。会場に辿り着いた時は既に“Ready An’ Willing”を演っていた…(うう…)。しかし、カヴァ(David Coverdale)の声も出ていたし、素晴らしいライヴだったのだ!

後半だけだったという不完全燃焼を挽回!と意気込んで向かったのが昨日(日曜日)の東京フォーラム公演だった。席は購入の出足が遅れてしまったので2階席(横浜は良い席だったのに)。でも、満席状態で若い子たちも意外に多く、WSのライヴは初めて…などという話声なんかも聞こえる。もちろん私と同世代ぐらいと思しきおじさんやおばさんもいるし、フォーラムの椅子も座り心地がよく、開演前はすっかりくつろぎ状態(笑)。そう言えば前回の白蛇もフォーラムだったなぁ…。

さて、オープニングはDVDと同じく“Burn”から始まった。おお、歓声とともに2階の床が揺れているよぉ~ヽ(^。^)ノ。DEEP PURPLE の名曲!カヴァの持ち歌だ。隣席の青年が大きな声で歌っているのだが、とっても良い声でお上手。負けるなカヴァ(笑)。DVDではベースのユーライアがグレン・フューズみたいにカヴァとデュエットしていたのに、フォーラムではカヴァのソロ風だった。“ Stormbriger”も織り込み、ああ、満足(笑)
ちなみに、ダグ(Doug)はやはりレスポールで、今回はゴールド(?)と黒(ブラック・ビューティ→サイクスっぽい)。レブ・ビーチは遠目でよくわからない(って、ダグしか観てなかったBRファン(^^ゞ)。

で、次もDVD通りかと思ったら、“Duty Of Love”で、なんだか意外。続く“Walking In The Shadow Of The Blues ”で、うむ、バック・ドロップはサーペンスの紋章にサン・バースト時代の蛇だからこうなるのかも、となんだか合点。でも、バックのメンバーはダグを始めアメリカ勢だから音が煌びやかで、最初は何の曲?と一瞬あせってしまった私であった。まぁ、今回は新旧織り交ぜたセット・リストだったことがよくわかる。
しかし、だ!更に「新曲」までご披露するとは本当にサプライズだった!(@_@)。ノリの良い曲で、ダグがソロを取っているし、サイトのサーバー主さんが複雑な心境になるのもわかる…。

カヴァはマイクを振りまわすステージ・アクションで元気な現役ぶりを見せてくれた。高音が苦しそうだけど、相変わらずシャウトで吼えまくる(^^;;。横浜の方がまだ声が出ていたような気がする。まぁ、約2週間にわたるツァーだから疲れが出て当然なのかも。高音はエフェクトでエコーかけたりだが、マイクを振り回せるパワーがあるだけでも素晴らしい(笑)。WHITESNAKEを何度でも復活して欲しいものだ。

ギターソロは前半がダグ、後半はレブが目立った。特にダグのソロ・タイムはスリリングで、ギターを振り回したり、えーっ、こんなに派手なアクションしちゃって~、と驚いた(・・;)。アンプのところに駆け寄るところなんて、ちょっとリッチーを意識したのかなぁ?う~ん、私的にはなんだか我が子をはらはら眺める気分だったような気がする(爆笑)

ということで、なんだかんだで、最後の“Still Of The Night”まで、たっぷりと新旧の楽曲を織り交ぜ楽しませてくれた♪ 名曲の数々はWHITESNAKE(カヴァ)の長いヒストリー世界を見せつけてくれたし、メンバーもプロの音を聴かせてくれた。ヴィジュアル的にもさすがのカッコ良さ♪きっとまた日本に戻ってきてくれることだろう。待っているからね(^^)/~~~

ところで、音が大き過ぎるし割れていたのは….仕方がなかったのかなぁ?>PAさん

REMBRANDT/CARAVAGGIO展(2)

2006-05-22 01:49:01 | 展覧会
                 


いづつやさんのブログ「いづつやの文化記号」で拙ブログをご紹介いただきました(感謝でございます!)。
http://izucul.cocolog-nifty.com/

いづつやさんがブログで触れてくださった「REMBRANDT/CARAVAGGIO展」作品リストを拙サイト掲示板から再録いたします。

今年はレンブラント生誕400周年記念ということでご当地オランダの美術館も関連企画で盛り上がっていました。
なかでも、やはり最注目企画は「REMBRANDT/CARAVAGGIO展」です!!!





<展示作品> 
地階フロア
◇ プレ・レンブラントとしてのユトレヒト派カラヴァッジェスキ作品
・ヘンドリック・テル・ブリュッヘン「聖トマスの懐疑」(国立ミュージアム・アムステルダム)
・ヘリット・ファン・ホントホルスト「キリストへの嘲笑」(国立ミュージアム・アムステルダム)
・CARAVAGGIO「聖アンデレの磔刑」(クリーヴランド美術館・クリーヴランド)
・ディレク・ファン・バビューレン「ウルカヌスによって鎖に繋がれるプロメテウス」(国立ミュージアム・アムステルダム)
◇ 若き日のレンブラント作品
・ レンブラント「議論している二人の老人」(国立ヴィクトリア美術館・メルボルン)
・ レンブラント「自画像(1628年)」(国立ミュージアム・アムステルダム)
・ レンブラント「書斎の聖パウロ」(ゲルマン国立博物館・ニュールンベルク)
・ レンブラント「喉当てと羽毛で飾られたボンネットの軍人」(個人蔵・英国)
◇ 暴力的神話シーンでのレンブラントとCARAVAGGIO作品の対比
・ レンブラント「目を潰されるサムソン」(シュテーデル研究所美術館.フランクフルト)
・ CARAVAGGIO「ホロフェルヌスの首を斬るユディット」(バルベリーニ絵画館・ローマ)
◇ 聖家族を描くレンブラントとCARAVAGGIO作品の対比
・ レンブラント「大工工房の聖家族」(アルテピナコテーク・ミュンヘン)
・ CARAVAGGIO「聖家族」(個人蔵/MET・ニューヨーク)
◇ 聖女と女神対決(?!)
・ CARAVAGGIO「アレキサンドリアの聖女カテリナ」(ティッセン・ボルネミッサ美術館・マドリード)
・ レンブラント「フローラ」(エルミタージュ美術館・サンクトペテルブルグ)
・ CARAVAGGIO「悔悛のマグダラのマリア」(ドーリア・パンフィーリ美術館・ローマ)
◇ 上半身肖像画対決!
・ レンブラント「Jons de Caulley の肖像」(サン・フランシスコ美術館・サン・フランシスコ)
・ CARAVAGGIO「アントニオ・マルテッリ(マルタ騎士)の肖像」(ピッティ・パラティーナ絵画館・フィレンツェ)
・ レンブラント「Johannes Wtenbogaert の肖像」(国立ミュージアム・アムステルダム)
◇ 新約聖書キリストへの裏切り心理劇対決(!!)
・ レンブラント「聖パウロの否認」(国立ミュージアム・アムステルダム)
・ CARAVAGGIO「キリストの捕縛」(アイルランド国立美術館・ダブリン)

凄過ぎて、ちょっと一息。ふーっ...
展示は階段を上って1階へと続きます。いやいや、驚きはまだまだ続いたのです(・・;)

管理人は「対決!」だなんて書いていますが、この展覧会ではCARAVAGGIOの明暗法がどのようにレンブラントに影響を与えたのか、またCARAVAGGIOとレンブラントというバロック絵画の二大巨匠の共通するもの、あるいは違いを、作品を並列しながら自分の目で確かめ、感じることができる構成になっていました。
画集ではなく、実物を並べ比較できる幸せを噛みしめてしまいました(果報です!)。
管理人の感想はリスト作成の後でまた書きたいと思っております。

上階フロア

◇ 旧約聖書における劇的シーン比較
・レンブラント「ヤコブと天使」(ベルリン国立絵画館・ベルリン)
・レンブラント「イサクの犠牲」(エルミタージュ美術館・サンクトペテルスブルグ)
・ CARAVAGGIO「イサクの犠牲」(ウフィッツィ美術館・フィレンツェ)
◇ 少年を描く
・レンブラント「机上のティトス」(ボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館・ロッテルダム)
・CARAVAGGIO「蜥蜴に噛まれた少年」(ロベルト・ロンギ財団・フィレンツェ)
・レンブラント「僧服姿のティトス」(国立ミュージアム・アムステルダム)
◇ 人間のふれあいと情感そして身振り
・CARAVAGGIO「マグダラのマリアの回心」(デトロイト美術館・デトロイト)
・レンブラント「ユダヤの花嫁」(国立ミュージアム・アムステルダム)
・CARAVAGGIO「聖女ウルスラの殉教」(貯蓄銀行・ナポリ)
◇ 女王様の貫禄!
・レンブラント「アルテミシア(orソフォニスバ)」(プラド美術館・マドリード)
◇ お騒がせの美少年対決(?!)
・CARAVAGGIO「勝誇るアモル」(ベルリン国立絵画館・ベルリン)
・レンブラント「ガニュメデス」(ドレスデン国立美術館・ドレスデン)
◇ 人物の内面を描く
・CARAVAGGIO「書き物をする聖ヒエロニムス」(ボルゲーゼ美術館・ローマ)
・レンブラント「手紙を読むバテシバ」(ルーヴル美術館・パリ)
◇ 自然(静物)描写力!
・レンブラント「フローラに扮するサスキア」(ナショナル・ギャラリー・ロンドン)
・CARAVAGGIO「果物籠を持つ少年」(ボルゲーゼ美術館・ローマ)
◇ 晩餐での驚愕!!
・レンブラント「ペシャワール王の饗宴」(ナショナル・ギャラリー・ロンドン)
・CARAVAGGIO「エマオの晩餐」(ナショナル・ギャラリー・ロンドン)

表記等の誤りがありましたら、ぜひお知らせくださいませ。m(__)m
  
管理人が◇印でくくっているのは、会場で展示されていた順番をメモしたものを、図録を参考にしながらまとめたものです。正式な「章」構成とは若干違いがあることをお断りしておきます。

春・旅行記(2)デン・ハーグ

2006-05-17 02:48:59 | 美術館
デン・ハーグのマウリッツハイス美術館を訪れるのは2度目になる。
http://www.mauritshuis.nl/index.aspx?siteid=54

前回(2002年)は中央駅から地図を見ながら10分ほどで美術館に着くことができた。今回は2度目だから大丈夫と高をくくっていたら、なんと方向を間違えて迷い子になってしまった(^_^;)。ちょうど通りかかったご夫婦に道を聞くと「散歩がてらに案内してあげる」と、連れていってもらうことに。
奥様はデン・ハーグ出身でご主人はフィリピン出身。現在アメリカ在住で、ちょうど奥様の実家に帰省中とのことだった。「あれがアメリカ大使館よ」と指差し教えてくれた様子をみるとアメリカ国民であることにとても誇りを持っているように感じた。多様な人種や移民によって構成されていても、アメリカ合衆国という移民大国の求心力はやはり強いのだと思う。

◆ マウリッツハイス美術館(Mauritshuis Museum)



ギャラリーへの階段を上ると「イタリアを夢見る/Dreaming of Italy」(11.03.06 - 25.06.06 )と題する企画展が開かれていた。昔から北方の芸術家たちが陽光あふれるイタリアを夢見ていたことはゲーテの「君知るや南の国を」でも知ることができるし、今回の展示作品からも見えてくる。ホルツィウスの銅版画《アポロン》など、アポロン彫像をスケッチしているのは画家自身のようにさえ見え、地中海古代への憧れが画面から溢れ出している。

古代ローマを憧れたのは16世紀の画家だけではない。19世紀英国タデマの作品は古代ローマへの憧れと夢とを繊細な女性像で色彩美しく蘇らせた作品だった。イタリアの陽光と言えば、やはりクロード・ロランもあり、ロランをリスペクトするターナーのベネツィアの陽光を描いた作品もあるし、時代を下ればコローもある。クロ-ド・ロランの《海港》を描いた作品など大作ではないが、主役の陽光 の美しさには魅了されてしまう。

しかし、この企画展で一際目を惹かれたのはベックリンの海に面したヴィラを描いた作品だった。画題はメモしなかったのだが、糸杉に覆われ静けさに満ちたヴィラはまるで《死の島》を髣髴させるかのようでもある。イタリアの強い陽光のなかでヴィラそのものの静寂さが異界への入り口へのようにさえ感じさせるのだ。



さて、今回の常設展示はレンブラント生誕400周年を意識しているようにも思えた。3階大ギャラリーには名作《テュンペル博士の解剖学講義》を始め、レンブラント作品、弟子たちの作品なども並ぶ。しかし、私的にどうしても目が惹かれるのはやはりユトレヒト派カラヴァッジェスキ作品で、今回「ん?ホントホルスト?」と思った《蝋燭を持った老女と少年》は何とルーベンス作品だった!
http://www.mauritshuis.nl/index.aspx?Chapterid=2374&Contentid=17643

ルーベンスがイタリア滞在中にCARAVAGGIOの《キリストの埋葬》を模写したことは知っているが、この明暗技法を見るとどれだけ大きな影響を受けたのかが推察できるようだ。老女の短くなった蝋燭の火から少年がもらい火をする。長く新しい蝋燭の火に少年の未来を象徴させたのだろう。蝋燭の灯りによる明暗、老女の炎の上にかざした手の短縮法と逆光の効果など若いルーベンスの研究心が描かせた1枚なのではないかとも思う。この作品をずっと手元に置いていたというのも面白く、もしかして、CARAVAGGIOの明暗技法をもらい火したルーベンス自身を描いた作品なのではないか..などと思ってしまう花耀亭である(^^;;;。ちなみに、この作品はマウリッツハイスの新規購入作品だという。

新規購入作品のもうひとつはJ・V・ライスダールの《ベントハイム城》を描いた作品だ。
http://www.mauritshuis.nl/index.aspx?Chapterid=2375&Contentid=17644
ダブリンのアイルランド国立美術館で観た《ベントハイム城》の素晴らしさには及ばないが(なんちゃって、ド素人が(^^;;;)、なかなかに心惹かれる作品だった。ベントハイム城の風格を持った佇まいを画家は視点や構図を変えながら描こうとしている。城を取り巻く風景の中で醸し出される存在感が画面から伝わってくるのだ。数多いライスダール作品の中でもこのベントハイム城シリーズは私的に好きな作品だ。

「美の美」 画家カラヴァッジオの犯罪

2006-05-15 01:18:40 | 映画
拙サイトの掲示板に書いた内容をそのままブログに再録します。(手抜きかも(^^;;;)

以前、めるがっぱさんや桂田さんにご紹介いただいた吉田喜重監督「美の美」カラヴァッジオ篇2本を「ポレポレ東中野」で観てきました。
・画家 カラヴァッジオの犯罪Ⅰ ―殺人の果ての写実性―(24分)
・画家 カラヴァッジオの犯罪Ⅱ ―シチリア・マルタ島への逃避行―(24分)
http://www.mmjp.or.jp/pole2/binobi.html

解説は四方田犬彦氏で、何と!吉田監督・岡田茉莉子ご夫妻ご臨席でした(・・;)
四方田氏の解説にもありましたが、1970年代にCARAVAGGIOを日本のテレビ番組で扱ったこと自体の先見性には驚いてしまいます。仙台の田舎育ちの管理人は見る統べもありませんでしたが…(涙)

さすがに映像は重厚で、吉田監督自身のナレーションがCARAVAGGIOという画家に光を当てながらズームアップにより浮き彫りにしていきます。ローマからシチリア、マルタへ、カメラは逃亡する画家を追って行きますが、管理人も追っかけた道程でしたので感慨深く見てしまいました。
映像で紹介されたのはフランチェージ教会の「聖マタイと天使」「聖マタイの召命」「聖マタイの殉教」、ポポロ教会「聖ペテロの磔刑」「聖ペテロの回心」&カラッチ作「聖母被昇天」、ボルゲーゼ美術館「病めるバッカス」「蛇の聖母」「ゴリアテの首を持つダヴィデ」「果物籠を持つ少年」、シチリアはメッシーナ美術館「ラザロの蘇生」「羊飼いの礼拝」、マルタは聖ヨハネ聖堂「書物をする聖ヒエロニムス」「洗礼者聖ヨハネの斬首」…だったと記憶しております(多分)。

管理人がなるほどと思ったのは、監督が、CARAVAGGIOは召命や回心を人間の内面に一瞬起こった出来事として写実的に描くことにより、反宗教改革の枠中に居ながら、宗教とは個人の内面的なものであると考え、カトリックの枠を超えた普遍的宗教感を持っていた(管理人の意訳)との指摘でした。画家の「写実性」が反宗教改革のカトリック側体制に取り込まれて行くことにより、画家自体の「実」体が暴力や犯罪として闇の中に失われて行く…(これも管理人の意訳かも)

上映の後に四方田犬彦氏の解説トークがあったのですが、これもまた実に濃い内容で面白く、明日また掲示板でレポートします。

出光美術館名品選Ⅰ「日月四季花鳥図屏風」

2006-05-14 05:20:52 | 展覧会
開館40周年記念「出光美術館名品選Ⅰ」を観て来た。
http://www.idemitsu.co.jp/museum/2006new_tenjimain01.html

東京に出てきて憧れの日本美術を観ることができるようになった花耀亭は出光にもお世話になっている。特に最近茶碗が面白く感じ始めたものだから、陶磁器の歴史など勉強になることが多い。もちろん陶磁器だけでなくたくさんの名品を所蔵しているのだが、今回は初めて観る「日月四季花鳥図屏風」に目が釘付けになってしまった!

この室町時代の屏風は長い時を経て褪色しているものの、右隻を眺めれば将に柳暗花明。金色の日輪の輝きは金銀箔片を燦然と撒き散らし、満開の桜花は淡紅纏う胡粉花片を繚乱と舞い散らす。柳糸の下には雌雄の雉と幼い雛たち。色彩鮮やかな雄雉と地味色ながら愛情に満ちた眼差しで雛を見守る雌雉。ふと石川県立美術館で観た仁清作「色絵雌雄雉香炉」を思い出す。あ、ポーズまで似ているのでは?!
http://www.ishibi.pref.ishikawa.jp/syozou/election/index.php?PHPSESSID=ba7ac56116ab805157594990766e678b
雉親子の足元には笹、そして左には紅白の花。ちなみに花耀亭はこの草花の種類がよくわからない。松葉牡丹??きっと夏に咲く草花だと思うのだけど…。

さて、左隻を眺めれば将に和歌世界。画面中央は緑色鮮やかな松樹、左右に彩るは紅葉。されば流れる川は竜田川であり鹿も鳴く。銀色の三日月が秋の寂寥感を深め、鳴く鹿の声ぞかなしき、である。岩走る垂水のほとりに咲く白菊も冬の訪れを暗示しているようだ。

幸いに双隻の野辺や松葉の緑色だけは昔日の鮮やかな色彩の残香を留めている。褪色してしまった桜花や金銀を散らしたなびく古風な雲からは、それでもまざまざと綺羅眩い世界が彷彿され、そのめくるめく幻影にしばし陶然としてしまうほどだ。できるものならCGで当時の煌く色彩を再現して欲しいのだが…>出光美術館さま 

ところで、この15世紀の大和絵(土佐派?)を観ながら、美術ド素人は俵屋宗達が出現する先駆的作品のように思えてしまったのだが、結局みな先人をリスペクトしながら貪欲に技術を吸収し、独自の様式を打ちたてていくものだのだろう。先日静嘉堂文庫で観た宗達「関屋・澪標図屏風」もしかりだった...。
http://www.seikado.or.jp/sub0201.htm

春・旅行記(1) ロッテルダム・マラソン

2006-05-10 02:29:27 | 海外旅行
ロッテルダムはボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館のブリューゲル「バベルの塔」がお目立てだったが、まずはデン・ハーグのマウリッツ・ハイス美術館に行ってからロッテルダムに戻る予定にしていた。

朝、ホテル(ヒルトン)で食事をしていると、隣りのテーブルには日本人ご夫妻が…。奥様から突然「あなたもマラソン関係者ですか?」と声をかけられ、「え?」と驚いてしまった(・・;)。なんと、その日はロッテルダム・マラソンがあり、ご主人がマラソン参加をされると言う。そう言えば前日散歩した時、ホテル近くの市庁舎前に観戦用のベンチ階段が設置されているのを見て、何かパレードがあるのだろうと思っていたのだったが、まさかマラソンだったとは!ちなみにスポーツ音痴の花耀亭はロッテルダムマラソンがそんな有名な大会だとは知らなかった(^^;;

◆ロッテルダム・マラソンのニュース。
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060409-00000085-kyodo-spo
◆ロッテルダム・マラソン公式HP
 http://www.fortismarathonrotterdam.nl/

街が混むようなイベントに巻き込まれないように、早めにデン・ハーグに行ってしまおうとロッテルダム中央駅に向かう。危惧した通り、やはり駅方向からどんどん人波が押し寄せて来る。デン・ハーグから戻る頃にはレースも終了しているだろう…と、ちょっと祈るような気持ちで列車に乗った。

三の丸尚蔵館「花鳥展」(2)

2006-05-05 05:31:38 | 展覧会
伊藤若冲「動植綵絵」第2期(4月29日~5月28日)の展示を三の丸尚蔵館で観てきた。
http://www.kunaicho.go.jp/11/d11-05-06.html
今回の展示は、「雪中鴛鴦図」「梅花皓月図」「梅花群鶴図」「棕櫚雄鶏図」「桃花小禽図」「菊花流水図」の6点だ。

(1)でも触れたが、特に期待していたのはバーク・コレクションと同構図の「梅花皓月図」だった。屈曲する梅の枝振りと白梅の咲き誇るさまは素晴らしいとしか言えない。しかし、何故だろう、私にはバーク作品の方が心に泡立つものを多く感じた。仔細に観れば、バーク作品は白梅の小さな蕾が紅を帯びざわめいていた。ところが、「動植綵絵」では蕾がかなり減少し、開いた梅花の方が目立っているような気がする。ある意味で過剰さが抑制され、より構図として練られたものと考えられる。月を背に枝の重なりが奥行きを暗示し、幹に置いた青描の鮮やかさが画面を引き締める。しかし…だ、完成度は高くとも自己模倣はエネルギーを拡散する。先行作の燃え上がるようなエネルギーの迸りが何故か懐かしく思えたのだった。

さて、どうやら過剰さに反応してしまう花耀亭であるが、今回一番魅了されたのも雪の降りしきる水辺の鴛鴦を描いた「雪中鴛鴦図」だった。雪の散るさま胡粉の飛沫で描く描法はいつ頃に始まったかは知らないが、若冲の細かく振るいをかけたような胡粉の雪はまさに粉雪のしきりに降るさまを視覚から体験させてくれる。対角線を描くかのような枝と鴛鴦の構図、寒さと雪の重みに垂れるかのような小枝の垂直構図。胡粉の雪がまるで白梅の蕾のように下垂れる枝に咲いては降りしきる。鳥たちは雪中で語らっているかのような睦ましい姿だ。鴛鴦の起こ池の波紋の描写の面白さ、水辺に咲く紅白斑の鮮やかな山茶花の美しさ!展示や図録の修復記録を見ると絹裏面にも着色してあり、なんと裏面にも粉雪が舞っているのだ!

構図の面白さなら「菊花流水図」が一番かもしれない。大小絢爛たる菊花と光琳風流水が画面に流麗な弧を描きながら交差する。モダンな着物模様として現代にも通じる意匠センスに満ちている。大輪の白菊の花弁の描写はまさに若冲ならではの繊細で過剰。白黄赤青緑…色彩の散る花弁としなやかな茎葉を絡めながらの流水の面白さには唸ってしまう。琳派の作風さえも我が物にしてしまう若冲の傑物ぶりが窺える作品だ。本当に若冲という画家は凄いとしか言いようがない。若冲の描く世界に陶然としながらも、また、次回第3期の展示も期待が膨らんだ展覧会だった。

(画像貼付けができなくなったので画像は無し。やはり寂しい(>_<))