Bunkamuraザ・ミュージアム「ベルギー奇想の系譜」展を観た。感想をサクッと…(^^;
ヒエロニムス・ボス工房《トゥヌグダルスの幻視》から始まる「ベルギー奇想」の系譜はなかなか面白かったけれど、ボスの系譜としてルーベンス原画作品を持って来たのは少々苦しいような気がした。エングレーヴィング作品《反逆天使と戦う大天使ミカエル》などは、レオナルドの《アンギアーリの戦い》だったりミケランジェロ研究の成果だと思えるのだ。もちろんルーベンスはフランドルの巨匠ではあるが、イタリア修業時代に学んだものは大きいと思う。(展覧会的には、あのルーベンスにもフランドル的奇想作品があるんですよ、と言いたかったのはわかるのだけどね)
今回の展覧会では、特にボスの追随者たちによるボス・リバイバルの様相にスポットが充てられていた。その中でもやはりピーテル・ブリューゲル(父)版画作品を観ていると、奇想の造形性にしても、その才気と技術の卓越性が他を圧倒して際立っているが了解される。ブリューゲルって本当に上手いのだよねぇ。
で、その息子であるヤン・ブリューゲル《冥界のアエネアスとシビュラ》が、実は今回の展覧会で私的に一番面白く感じた作品だった。ヤンと言えば静物画や風景画を想起するのだが、この作品は地獄の炎を想わせる冥界の風景とともに、逃げ悶える群像表現が特に印象的で、人物画は得意でないとされるヤンの意外な一面を観たような気がしたのだ。裸体人物像がなんだかマニエリスムっぽい(^^;
ヤン・ブリューゲル(父)《冥界のアエネアスとシビュラ》(1600年頃)ブダペスト国立美術館
で、その後が一挙に19世紀末~20世紀初頭~現代へと続き、ネーデルラント→フランドル→ベルギーへと、歴史の中で翻弄されたフランドルの歴史を映しているようで、故に、この展覧会も「ベルギー奇想」と限定されているのは仕方がなのだろうなぁという諦めがつく(^^;
だってね、「奇想」と言ってもコルマールの巨匠マルティン・ションガウアーに何ら言及もされてないじゃない。
マルティン・ションガウアー《 聖アントニウスの誘惑 》(1471-1475年)
美術ド素人の素朴な疑問なのだが、ほぼ同年代生まれのボスとションガウアーの奇想って、接点は無かったのだろうか???
ヒエロニムス・ボス(Hieronymus Bosch ,1450年頃 - 1516年)
マルティン・ションガウアー(Martin Schongauer , 1448年頃 - 1491年)