■ウンブリア国立美術館(Galleria Nazionale Umbria)
ヴァンヌッチ通りに面した「ウンブリア国立美術館」はプリオーリ宮の一角を占めている。
さて、ウンブリア国立美術館で一番楽しみにしていたのはピエロ・デッラ・フランチェスカ(Piero della Francesca, 1412 - 1492)の《サン・タントーニオ祭壇画》を観ることだった。この祭壇画はペルージャの「サン・タントーニオ・ダ・パドヴァ女子修道院」(フランチェスコ会)のために描かれたものだ。
ピエロ・デッラ・フランチェスカ《サン・タントーニオ祭壇画》(1468年頃)
「玉座の聖母子」から見て右側に「洗礼者聖ヨハネと聖アントーニオ・ダ・パドヴァ」、左側には「聖フランチェスコとハンガリーの聖女エリザベト」が描かれている。ちなみに、聖母や聖人たちのニンブスの円盤に頭頂部が映っているのが面白く、特に禿げた聖人の頭まで…ピエロのリアリズムなのだ(^^;;
「洗礼者聖ヨハネと聖アントーニオ・ダ・パドヴァ」ニンブスの映りに注目(^^;
プレデッラは二重で、円形の小聖人像、聖女アガタと聖女キアーラが上段に、下段には、聖アントーニオと聖女エリザベトの奇跡の話と、真ん中に「聖痕を受ける聖フランチェスコ」が描かれている。
プレデッラ「聖痕を受ける聖フランチェスコ」
ピエロの「聖痕を受ける聖フランチェスコ」はその素朴さ故に、もしかして弟子の筆によるものかもしれないが、しかし、光の放つ描写は素晴らしく、アレッツォの聖フランチェスコ教会フレスコ画《聖十字架の伝説》中の《「ンスタンティヌス帝の夢」を想起させる。そしてまた、光への感性はヤン・ファン・エイクの同主題《聖痕を受ける聖フランチェスコ》をも想起させるのだ。ピエロの北方絵画からの影響が見えるようで非常に興味深い。
ヤン・ファン・エイク《「聖痕を受ける聖フランチェスコ》(1438-40年頃)フィラデルフィア美術館
(一昨年のロヴェレート「アントネッロ・ダ・メーッシーナ展」にはトリノ作品が出展されていた)
さて、祭壇画の上部はギザギザ三角形のパネルで、ルネサンス的遠近法による列柱(コンポジット式のエンタシスみたい)の並ぶ白亜の建物を背景に「受胎告知」が描かれている。
「受胎告知」
マリアは聖書を右手に持ち、謙譲のポーズをしている。
石鍋真澄・著『ピエロ・デッラ・フランチェスカ』を読んだら、祭壇画全体の不統一性について言及されていたが、美術ド素人の私見でも確かに完成度にばらつきが見られる。それでも、やはりピエロらしさに溢れた作品だと思えるのだ。
ちなみに、ヴァザーリもこのままの構成状態で観たようで、ロベルト・ロンギが全体の視覚的統一性を指摘したのにかかわらず、現在でも別々の作品との説があるようだ。
【参考文献】
『ピエロ・デッラ・フランチェスカ』(石鍋真澄・著/平凡社)(2005)
『芸術家列伝1』(ジョルジョ・ヴァザーリ・著/白水Uブックス)(2011)
蛇足だが、中央公論美術出版の完全訳『美術家列伝』(全6巻)の第3巻が2月刊行予定だが、まだ出ないのだろうか?
http://www.chukobi.co.jp/user_data/%E6%96%B0%E5%88%8A%E9%80%9F%E5%A0%B1No63.pdf
ということで、「ウンブリア国立美術館」編もまだ続く予定だ(^^ゞ
ヴァンヌッチ通りに面した「ウンブリア国立美術館」はプリオーリ宮の一角を占めている。
さて、ウンブリア国立美術館で一番楽しみにしていたのはピエロ・デッラ・フランチェスカ(Piero della Francesca, 1412 - 1492)の《サン・タントーニオ祭壇画》を観ることだった。この祭壇画はペルージャの「サン・タントーニオ・ダ・パドヴァ女子修道院」(フランチェスコ会)のために描かれたものだ。
ピエロ・デッラ・フランチェスカ《サン・タントーニオ祭壇画》(1468年頃)
「玉座の聖母子」から見て右側に「洗礼者聖ヨハネと聖アントーニオ・ダ・パドヴァ」、左側には「聖フランチェスコとハンガリーの聖女エリザベト」が描かれている。ちなみに、聖母や聖人たちのニンブスの円盤に頭頂部が映っているのが面白く、特に禿げた聖人の頭まで…ピエロのリアリズムなのだ(^^;;
「洗礼者聖ヨハネと聖アントーニオ・ダ・パドヴァ」ニンブスの映りに注目(^^;
プレデッラは二重で、円形の小聖人像、聖女アガタと聖女キアーラが上段に、下段には、聖アントーニオと聖女エリザベトの奇跡の話と、真ん中に「聖痕を受ける聖フランチェスコ」が描かれている。
プレデッラ「聖痕を受ける聖フランチェスコ」
ピエロの「聖痕を受ける聖フランチェスコ」はその素朴さ故に、もしかして弟子の筆によるものかもしれないが、しかし、光の放つ描写は素晴らしく、アレッツォの聖フランチェスコ教会フレスコ画《聖十字架の伝説》中の《「ンスタンティヌス帝の夢」を想起させる。そしてまた、光への感性はヤン・ファン・エイクの同主題《聖痕を受ける聖フランチェスコ》をも想起させるのだ。ピエロの北方絵画からの影響が見えるようで非常に興味深い。
ヤン・ファン・エイク《「聖痕を受ける聖フランチェスコ》(1438-40年頃)フィラデルフィア美術館
(一昨年のロヴェレート「アントネッロ・ダ・メーッシーナ展」にはトリノ作品が出展されていた)
さて、祭壇画の上部はギザギザ三角形のパネルで、ルネサンス的遠近法による列柱(コンポジット式のエンタシスみたい)の並ぶ白亜の建物を背景に「受胎告知」が描かれている。
「受胎告知」
マリアは聖書を右手に持ち、謙譲のポーズをしている。
石鍋真澄・著『ピエロ・デッラ・フランチェスカ』を読んだら、祭壇画全体の不統一性について言及されていたが、美術ド素人の私見でも確かに完成度にばらつきが見られる。それでも、やはりピエロらしさに溢れた作品だと思えるのだ。
ちなみに、ヴァザーリもこのままの構成状態で観たようで、ロベルト・ロンギが全体の視覚的統一性を指摘したのにかかわらず、現在でも別々の作品との説があるようだ。
【参考文献】
『ピエロ・デッラ・フランチェスカ』(石鍋真澄・著/平凡社)(2005)
『芸術家列伝1』(ジョルジョ・ヴァザーリ・著/白水Uブックス)(2011)
蛇足だが、中央公論美術出版の完全訳『美術家列伝』(全6巻)の第3巻が2月刊行予定だが、まだ出ないのだろうか?
http://www.chukobi.co.jp/user_data/%E6%96%B0%E5%88%8A%E9%80%9F%E5%A0%B1No63.pdf
ということで、「ウンブリア国立美術館」編もまだ続く予定だ(^^ゞ